DHA、EPA等の高度不飽和脂肪酸を産生するラビリンチュラ類の増殖試験
ラビリンチュラ類には、生育が早いものと遅いものがあります。各系統群を代表する 91 株について、増殖能を調査しましたので、ここに紹介致します。ラビリンチュラ類のご利用やNBRC 株、RD 株の選抜時の参考としてお使いください。
実験方法
供試菌株
ラビリンチュラ類 91 株を実験に供しました(下記実験結果の表 1 を参照ください)。
増殖能試験
二種類の液体培地(2×GPYT 培地*1と GTY 培地*2)を用いて、本培養 7 日間の後に、湿重量を測定しました。詳細は下記に示します。
- 1. 25 mL 容細胞培養フラスコを用いて、2×GPYT 液体培地(10 mL)に、3~10 日間、25℃、静置にて対数増殖期まで前培養を行いました(※ 菌株によって対数増殖期に到達するまでの日数が異なっています)。
- 2. 本培養実験では、同じく 25 mL 容細胞培養フラスコを用いて、前培養液 40 μL を液体培地(10 mL)に接種し、25℃で 7 日間、暗所にて静置培養を行いました。
- 3. 7 日間の培養後、菌体を遠心分離(20,400 ×g、15 分)にて集菌し、上清(培養液)を除去し、菌体ペレットの湿重量を計測しました。
- *1 2×GPYT 培地
- 2 g トリプトン、2 g ポリペプトン、2 g 酵母エキス、4 g グルコース、
- 19.2 g マリンアートSF-1(富田製薬)、1000 mL 蒸留水
- コメント:基本的にラビリンチュラ類が旺盛な増殖をします。
- *2 GTY 培地(Nakazawa et al. 2014)
- 10 g トリプトン、5 g 酵母エキス、20 g グルコース、19.2 g マリンアートSF-1、1000 mL 蒸留水
- コメント:比較的高いグルコース濃度を好むラビリンチュラ類用の培地です。
実験結果
増殖能を調べた結果を表 1 に示しました。ほとんどのラビリンチュラ菌株は、2×GPYT 培地(0.4%グルコース)で良好な生育を示しました。一方、グルコース濃度が高い GTY 培地では、良好な生育を示す菌株が複数存在しました。一部の菌株では、培養フラスコの壁面に細胞が固着するなどして菌体の回収が困難な場合がありました(表 1 の備考欄に示しています)。
表はExcel 形式でダウンロードできます
表1:NITE 保有ラビリンチュラ類 91 株の液体培地(10 mL)での 7 日間培養後の菌体量
(Excelダウンロード【36.5KB】)
菌体の湿重量が、40 mg 以上をオレンジ色、20 mg 以上を黄色、15 mg 未満を灰色で示す。
*菌体増殖量が少なく、遠心分離によるペレット回収ができなかったため「計測不可」とした。
参考文献
- ・Nakazawa, A., Kokubun, Y., Matsuura, H., Yonezawa, N., Kose, R., Yoshida, M., Tanabe, Y., Kusuda, E., Thang, D. V., Ueda, M., Honda, D., Mahakhant, A., Kaya, K., Watanabe, M. M. (2014) TLC screening of thraustochytrid strains for squalene production. Journal of Applied Phycology 26: 29-41.
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