バイオテクノロジー

プロテオーム解析とは?

プロテオーム解析とは

「プロテオーム(proteome)」とはprotein(タンパク質)とgenome(ゲノム)を組み合わせた造語であり、ゲノムが一個の生物の持つ全ての遺伝情報を指すのに対し、プロテオームは、細胞内で発現している(発現する可能性をもつ)全タンパク質のことを指します。

生体内では、多数の遺伝子から作られる多様な種類のタンパク質が働いて生命活動を支えていますが、それらのタンパク質の構造や機能は、これまでは膨大な時間と労力を費やして個別に単離して解析するしかありませんでした。しかし近年になって、微量のタンパク質断片の質量を正確に測定することができるようになりましたので、種々の電気泳動やクロマトグラフィーを組み合わせて分離された少量のタンパク質を断片化してその質量を測定し、得られたデータをゲノム解析から推定されるタンパク質のアミノ酸配列データと比較して同定することが可能になりました。このようにして、生物のもつタンパク質の構造や機能を網羅的に解析することをプロテオーム解析といいます。

ゲノム解析で得られる情報は、特定のタンパク質を作る可能性をもった遺伝子があるという情報ですから、プロテオーム解析によって実際に細胞内で働いているタンパク質についての情報を付加することにより、生物のゲノム情報は産業に利用しやすくなります。

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プロテオーム解析の流れ(ペプチドマスフィンガープリント法)

NITEが塩基配列決定を実施した微生物(Aeropyrum pernix K1T (= NBRC 100138T)など)について、プロテオーム解析を行っています。プロテオーム解析は、
(1)タンパク質の発現、(2)タンパク質の分離、(3)タンパク質の同定、(4)ゲノムデータベースへの反映、という手順を経て行われます。

(1)タンパク質の発現

生物からのタンパク質の抽出

目的とする微生物を特定の条件下で培養し、タンパク質を発現させます。その後、培養した微生物から発現したタンパク質を抽出します。

(2)タンパク質の分離


二次元電気泳動像

抽出したタンパク質(混合物)を二次元電気泳動を用いて個々のタンパク質に分離します(左図)。

(3)タンパク質の同定

タンパク質の消化

分離した各タンパク質のスポットを切り出し、消化酵素を用いてタンパク質を切断します(左図)。タンパク質を切断すると、数~数十アミノ酸からなる断片になります。この断片をペプチド断片といいます。


MSスペクトルデータ

質量分析計を用いて、ペプチド断片の質量(分子量)を測定します。質量分析の結果は、左図のようなMSスペクトルデータとして得られます。

MALDI-TOFMS
質量分析計の例(MALDI- TOFMS:マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計)

質量分析から得られたペプチド断片の質量とゲノムデータから予測されるタンパク質のペプチド情報(質量等)を比較し、目的とするタンパク質を同定します。

目的タンパク質の同定

(4)ゲノムデータベースへの反映

NITEでは、解析データの信頼性を高めるために、ペプチドマスフィンガープリント法の他、ショットガンプロテオーム法、多次元クロマトグラフシーケンスタグ法、N-末端アミノ酸シーケンス法を用いて解析を実施しています。

得られたタンパク質情報は、NITEのゲノムデータベースに反映させ、ゲノム情報の高付加価値化を図るとともに、「生物資源データプラットフォーム(DBRP)」で公開されています。

生物資源データプラットフォーム(DBRP)

プロテオーム解析プロジェクト
 酵素等の産業利用可能なタンパク質の検出や解析を目的として、微生物の網羅的プロテオーム解析を行い、データを公開しています。

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