市販のビア樽(ケグ)などの耐圧力容器を用いた大量培養
酸素が存在する環境下では生育できない絶対嫌気性細菌は、土壌などの自然環境や人の腸管に幅広く棲息していることが知られており、環境浄化やエネルギー生産、ヘルスケア分野において、その利用が期待されています。一方、絶対嫌気性細菌は20mlなどの小スケールでは安定的に培養が行えるものの、20Lなどの大きいスケールでの培養は困難であり、嫌気状態の保持、培養設備にかかるコスト面、培養物の運搬が課題となっていました。
NITEでは、生物遺伝資源保存機関として培ってきた多様な微生物の培養技術と知見を活かし、市販のビア樽(ケグ)を改良し培養容器として用いることで、絶対嫌気性細菌を安価で安定的に大量培養する技術を開発しました。具体的には、市販のビア樽(ケグ)の蓋に穴を開け、サンプリング口やセンサー口とする改良を行い、培養する微生物種や培養物の用途に応じて計器やバルブを取り付ける方法です(図1)。
詳細については情報提供が可能ですので、お問い合わせください。
図1.ビア樽(ケグ)改良の一例
市販ビア樽を用いた培養方法
ビア樽を用いた培地の準備と培養は図2に示した手順で行います。本方法は、バイアルなどの小スケールの培地作製手順に、オートクレーブ後のガス置換及び氷水による冷却のステップを新たに追加することにより、高い嫌気状態を作り出し、またその状態を長期間保持することができます。
この方法は、同程度のスケールで嫌気状態を保持できる嫌気培養装置(ジャーファメンターなど)と比べて、1/10程度の初期コストで導入可能であること、培養物を生きたまま容器ごと運搬することが容易であること、さらに容器はオートクレーブ滅菌が可能で再利用できるなどのメリットがあります。
図2.ビア樽を用いた培地の準備と培養手順
本培養方法を用いた絶対嫌気性細菌の培養例
絶対嫌気性細菌である硫酸還元菌(Desulfovibrio vulgaris NBRC 104121)を用いて、本培養方法(ビア樽を用いた20L培養)と、ブチルゴム付きの20mlバイアル瓶を用いた培養方法を比較しました。7日間、37℃で培養したところ、本培養方法の細胞数は109/mlとなり、バイアル瓶の細胞数(108/ml)と比較して遜色なく安定的に培養できることを確認しました。
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