CMC letter No.4(第4号) - [特集・1]化学物質管理センターは今
リスク評価課 ~適切な化学物質のリスク評価手法の確立~
本号では、リスク評価課の業務について、ご紹介いたします。
リスク評価課は、我が国の化学物質管理におけるリスク評価の中枢として、他機関と共同し、さまざまなデータを活用しながら、具体的に化学物質のリスク評価を行っています。
その成果は、初期リスク評価書としてホームページなどで広く公開していますので、ぜひ、ご利用いただきたいと思います。
1.科学的方法論による暴露評価に基づくリスク評価・管理の試み
(1)化学物質のリスク評価及びリスク評価手法の開発
リスク評価課では、平成13年度から(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構からの受託事業として「化学物質のリスク評価及びリスク評価手法の開発」に取り組んでいます。この事業は、(独)産業技術総合研究所及び(財)化学物質評価研究機構と共同で実施しています。リスク評価課では、暴露情報の収集、整理、暴露評価手法の開発(暴露評価を含む)、初期リスク評価の実施、化学物質のリスク評価管理ガイドの策定を担当しているほか、プロジェクトの運営・管理も行っており、本事業は平成18年度に最終年度を迎えます。リスク評価課ではこれまでに、化管法PRTR対象物質354物質のうち、農薬、オゾン層破壊物質を除き、ヒトや環境中の生物へのリスクが高いと考えられる150物質についての初期リスク評価を行ってきました。現在、このうち55物質の初期リスク評価書をホームページ上で公開しています。
http://www.safe.nite.go.jp/risk/syoki_risk.html
これまでの本事業の中で得られた成果の利用、普及のため、本事業の共同実施機関とともに、平成19年1月22日(月)、23日(火)に東京ビッグサイトにおいて成果報告会を共催し、リスク評価課では、「初期リスク評価の概要とその意義」、「初期リスク評価結果の総括とその解析」についての講演及び「初期リスク評価~PRTRデータを活用した暴露評価~」についてのワークショップを行いました。
また、リスクコミュニケーションなどへの利用のため、大気中の化学物質濃度の推定結果を日本地図上に表示した大気中の濃度マップを作成し、公開しています。
http://www.taikimap.nite.go.jp/prtr/top.do
(2)リスク評価管理研究会
リスク評価管理研究会では、平成13~17年度にかけて、ノニルフェノール及びノニルフェノールエトキシレート、フタル酸エステル類、ビスフェノールAのそれぞれについてリスク評価結果に基づく適切なリスク管理のあり方を検討してきました。
特に、既存の公開情報では把握しにくい化学物質に関する実態(生産・使用・排出の実態、事業者による自主的取り組みの実態など)についての情報を収集し、(1)において検討された(独)産業技術総合研究所による詳細リスク評価結果とともに整理し、これらを踏まえたリスク管理のあり方について提言を行っています。また、その内容は「リスク管理の現状と今後のあり方」として公開しています。
http://www.safe.nite.go.jp/risk/kenkyukai.html
(3)監視化学物質のリスク評価スキームに関する調査
化審法では、環境中で残留しやすく、人の健康や環境中の生物に有害な影響を及ぼすおそれがある化学物質を監視化学物質として指定し、その使用実態などを監視しています。この監視化学物質はいずれも難分解性であり、生物蓄積性や毒性に応じて第一種から第三種までに分類されています。平成18年12月現在、第一種監視化学物質は25物質、第二種は859物質、第三種は51物質が指定されています。
http://www.safe.nite.go.jp/japan/sougou/ListSelect.do
これら監視化学物質については、化審法に基づく事業者からの製造・輸入、用途などの情報はありますが、リスク評価に必要な情報や評価方法が十分に体系化されているわけではありません。リスク評価課では経済産業省からの受託事業として、国内外で蓄積されている暴露評価・リスク評価の手法を適切に導入して、監視化学物質のリスクをより科学的かつ客観的に評価する手法の体系化を計画的に進めています。この事業により、効率的なスクリーニング評価を含むリスク評価スキームの構築を目指しています。
900物質を超える監視化学物質のリスク評価を迅速かつ定期的に実施できるようになれば、これら化学物質の適切な取り扱いに関する指導・助言や有害性調査の指示が、より一層効果的に行われることが期待されます。
2.リスク評価を支援する業務
(1)化学物質のリスク管理のための基盤情報の整備・評価
平成16年度から、経済産業省より「化学物質のリスク管理のための基盤情報の整備・評価」事業を受託しています。化審法既存化学物質は約2万物質あり、これらの安全性の点検を実施するには多くの費用と時間を必要としますが、これを効率的に進めるための手法に関する調査などを行っています。これまでの主な調査内容は、平成16年度は海外の安全性点検の優先順位付け手法の調査、平成17年度はデータの信頼性とカテゴリーアプローチ、平成18年度はカテゴリーアプローチの詳細調査です。これらの調査結果により、既存化学物質の安全性の点検が効率的に行われることが期待されます。
(2)化学物質の排出量推計手法の検討
化学物質の暴露やリスクを評価するためには、化学物質の排出に関する情報が必要不可欠です。リスク評価課では、これまでPRTR排出量データを活用した初期リスク評価手法を開発してきました。今年度から、暴露評価の対象とする化学物質の範囲をさらに広げ、化審法の監視化学物質(PRTR制度対象物質を除く)のような、排出に関する情報の少ない化学物質についても排出量を推計できる手法や、手法に必要な情報の整備に取り組んでいます。
(3)消費者製品直接暴露評価手法の開発
化学物質のリスク評価においては暴露評価が重要であり、リスク評価課ではこれまで暴露評価手法の開発に努めてきました。その中で、ヒトに対する暴露評価は環境経由の暴露、即ち、大気からの吸入暴露及び飲料水や食品からの経口暴露などが主となっていました。しかし、消費者が最終製品を使用することによる直接暴露についての評価も重要であり、その手法を確立しておく必要があります。そこで、今年度はこのための基礎的な手法の開発に取り組んでおり、来年度以降はこれを基にして具体的な適用場面に展開していく予定です。
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