化学物質管理

CMC letter No.14(第14号)- [あいさつ]NITE化学物質管理センター所長の就任に当たって

化学物質管理センター所長

平成23年7月1日付けで、化学物質管理センターの所長に就任いたしました。

CMCレターをご愛読いただいている皆様におかれましては、どうぞよろしくお願いいたします。

暫く振りで化学物質の管理に関わる仕事に着任し、まず感じましたことは、化学物質を使用する現場において、化学物質のリスク評価とそれに基づく管理が思いのほか普及していないことでした。

化学物質排出把握管理法の施行にかかわっていた当時は、化学物質を使用する企業と国民とのリスクコミュニケーションにおいて、PRTR制度で得られたデータ等を用いたリスク評価が活用され、リスク評価を行わずには製造現場等での化学物質の使用がままならない状況が訪れるのではないかと想像していましたが、リスク評価が国民の生活に受け入れられるためには、更なる努力が必要であることを認識したところです。

その矢先、経済産業省で開催されました化学物質審議会において、複数の委員の方から化学物質のリスク評価を行うことのできる人材が不足しており、その育成が重要であるとのご意見をお聞きし、人材育成が大きな課題となっていることを再認識した次第です。

しかしながら一方で、昨年4月には、改正化学物質審査規制法が施行され、これまでのハザードベースでの化学物質の管理からリスクベースでの管理へと規制体系が変更されたことにより、化学物質のリスク評価は国民の生活において不可欠なものとなっています。

また、国際的に見てもWSSDの2020年目標達成に向けて、化学物質のリスク評価は各国の重要な施策となっています。

このため、企業においても化学物質のリスク評価を担う人材の育成は喫緊の課題となることが想定されるため、これから益々人材難が深刻になってくることが想像されます。

化学物質のリスク評価が体系的に実施されはじめたのは、第2期科学技術基本計画の重要政策の一つとして、化学物質のリスク評価技術が位置づけられたことがきっかけであったと思います。

具体的には、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構から化学物質のリスク評価研究開発を受託した独立行政法人産業技術総合研究所が中心となって、財団法人化学物質評価研究機構及びNITEが参画し平成13年度から6年間かけて、「化学物質のリスク評価及びリスク評価手法の開発」プロジェクトが実施されました。

この成果として、150物質の初期リスク評価(簡易評価)と27物質の詳細リスク評価が行われ報告書として公表されました。

当時の研究開発成果としては、革新的な材料の試作品や高効率な省エネパイロットプラントの開発など、成果は物として確認できることが一般的であったため、リスク評価書という報告書が成果物であることに関係者の一部には当初戸惑いがあったと記憶しています。

このように、同プロジェクトは新しい研究開発のスタイルを開拓するとともに、研究開発を通して人材を育成し、また、報告書として次世代人材の育成に貢献するなど、人材育成の面で多くの成果がありました。

NITEにおいては、当時の研究開発に携わった職員が中心となってリスク評価方法の検討や人材育成を牽引しつつ、専門性を身につけた職員が内部の人材育成を実践し、確実にレベルアップが図られています。

また、企業の第一線を退かれ再就職された職員のノウハウがプロパー職員に伝えられていることも、人材育成の観点から大きな成果であったと思っています。

この結果、改正化学物質審査規制法の施行に必要なリスク評価手法の検討に参画するとともに、リスク評価を実施する専門組織へと成長しました。

しかしながら、我が国における化学物質のリスク評価の取組は緒についたばかりです。

今後、無機化合物や金属化合物などに対応するため、これまでに整備されたリスク評価手法に加えて、新たな評価手法を追加する必要があると考えています。

このため、これまで以上に関係者の皆様との連携を密接にしていくための方策について検討して参りたいと考えています。

これからも化学物質管理センターは、化学物質審査規制法等法律の施行支援については盤石な体制をもって対応するとともに、化学物質のリスクを評価し管理された環境で化学物質を使用する社会を目指し、国民の生活の質の向上に努力して参りたいと考えています。

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