CMC letter No.10(第10号) - [特集・2]企業や自治体などの取り組み
この連載では、事業者や自治体等のリスクコミュニケーションなど、化学物質管理に関するさまざまな取り組みを紹介しています。今回は、計画的に情報提供と実践に取り組んでいる岩手県の「環境コミュニケーション推進事業」を紹介します。なお、本事業には当センターも講師派遣等の協力をしています。本稿は、環境コミュニケーションセミナーにおいて、関係者からお聞きした話をもとに構成したものです。
岩手県
岩手県は、地域の方と広く環境に関するコミュニケーションをさまざまな業種の方に取り組んでいただくことを目的に、「環境コミュニケーション推進事業」として、事業者向けのさまざまな取り組みを行っています。その一環として、平成20年9月5日に岩手県民情報交流センター(盛岡市)で、「岩手県環境コミュニケーションセミナー」が岩手県環境保全課と岩手県環境保全連絡協議会の共催で開催されました。このような取り組みは各自治体で行われていますが、岩手県では、実践として「地域と始める環境報告会」、事業者への情報提供として「事業者向け研修会」、中小企業向けには「環境報告書(簡易な環境報告書)作成研修」などを計画的に実施しています。この事業は、環境コミュニケーションが事業者により、自主的に、かつ継続して行われる姿を目標に、平成22年度には延べ100事業者の実施を計画しています。ここでは、環境コミュニケーションを化学物質管理だけではなく、企業の環境への取り組み全般に拡大し、PRTR届出事業者以外の、例えばデパートなどの小売業も対象にしていることが特徴です。
取り組みの成果
化学物質のリスクコミュニケーションの課題として、リスコミの実施現場では、他の環境問題である騒音、振動、悪臭などの典型公害や地球温暖化対策、あるいは地域の課題としての工場の地震防災などに関心が集まることがあります。それは、PRTRデータや化学物質管理への住民の方の関心が低く、その理由として、化学物質管理における住民の方の役割が今ひとつ具体的でなく、リスクの認知やそれに対する行動のイメージをつくり難いことが考えられます。そのため、化学物質のリスクコミュニケーションだけでは、さまざまな環境問題や地域の課題など多様な住民の方の関心に応えられないことが、本事業実施の背景にあるものと考えることができます。
本セミナーを通じて、参加した事業者の皆さんがリスコミの必要性や重要性を十分理解されていると感じました。さらに、事業者としてどのように自らの環境への取り組みを発信していくか、いかに分かりやすく伝えていくかに関心が移りつつあり、継続して取り組まれている効果であることが分かります。また、過去には、地元テレビ局のニュースでも事業の様子を取り上げていただくなど、本事業における情報発信も効果的に行われています。
NITE化学物質管理センターからは、「環境コミュニケーションの現状と課題」として、当センターの事例調査の結果を中心に情報提供を行いましたが、継続的に実施している事業者の皆さんにとっては、物足りなかったかもしれません。今後は、事例紹介だけではなく、PRTRデータの活用や市民に対する分かりやすい情報提供方法について具体的に提案するなどの支援を行っていきたいと考えています。
詳しくは、ホームページもご参照下さい。
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