CMC letter No.10(第10号)- [NITE化学物質管理センター所長の交代にあたって]
化学物質に対する安全、安心の確保を目指して
NITE化学物質管理センター 所長
辻 信一
「化学物質」と聞くと、「何やら、危なっかしいもの」と感じる方も多いのではないでしょうか。触ると火傷をしたり、吸い込むと健康を害したり……。いかにも危険なものいうイメージがつきまとうのは、残念なことです。化学物質の中には、たしかに、直接触れると火傷をするものや、吸い込むと健康を害するものもありますが、きちんと使われることによって、私たちの生活を豊かにしています。化学物質は毎日の生活の役に立つさまざまなものをつくる原料となっていたり、身の回りのさまざまなものに姿を変えて、私たちの毎日の生活を支えています。便利で豊かな暮らしは化学物質を活用して営まれています。
身の回りの化学物質に目を向けましょう。朝起きて、顔を洗うときに使う石鹸、これなども私たちの最も身近にある化学物質(化学製品)です。あまり見慣れすぎていてカガクブッシツだなんて感じたことなかったかも知れませんね。人間がいつ頃から石鹸を使い始めたかは定かではありませんが、紀元前3000年頃に古代メソポタミアに暮らしていたシュメール人は、植物を焼いた灰を油で煮て、現在の石鹸の原型になるものをつくっていたと言われています。それが、ヨーロッパで次第に改良されて、12世紀頃には、今の石鹸に近いものができあがったそうです。わが国にもたらされたのは、安土桃山時代です。ポルトガル船がわが国に石鹸を伝えました。最近では、洗うという効用以外の効果を発揮する化学物質を加えた石鹸も登場しています。例えば、殺菌作用のある化学物質を配合した石鹸は、もうお馴染みのことと思います。
それから、化粧品。これなども化学物質です。「え!そんなー」と引きつった顔をしているあなた。心配いりません。市販される前にきちんと安全性に関するテストがされています。でも、化学物質を毎日、素肌につけているのかと思うと、想像しただけで怖くなる、という方もおられるのではないでしょうか。
化粧品は、美容に効果のある化学物質を選んで、それを配合してつくられています。皮膚に潤いを与えるための保湿成分、皮膚の色素の沈着を抑制し美白に保つ美白剤、活性酸素の働きを抑制し皮膚を守る抗酸化剤など、さまざまな効用を持つ化学物質が配合されています。このような有用な化学物質の働きで、いろいろなトラブルから皮膚が守られているのです。化学物質はその働きや性質をきちんと理解して活用すると、私たちの生活を豊かにしてくれるものです。
このような化学物質の性質や効能を知ることが大切です。単に、嫌いだといって目を背けるのではなく、どういう特徴があって、どういった場合には慎重に取り扱わなければならないのか。どのような点で私たちの生活に役立っているのか。そういったことに少しでも興味を持ってもらえればと思うのです。
石鹸や化粧品などでは、それをつくっている会社のホームページを見ると、どのような化学物質が使われているか。その役割はどのようなものか、といったことを知ることができます。
また、NITE化学物質管理センターでも、化学物質に関する皆様の疑問に応えて、そのために少しでもお役に立とうと、ホームページや広報用の冊子をつくっています。何か「?」と思うことがあったら、ホームページをご覧になってみませんか。きっと何か「!」と思うことがあるに違いありません。
化学物質管理は皆様方お一人お一人の安全、安心を確保することを課題として、関係する省庁、独立行政法人、自治体などがそれぞれの持つ特長を生かして、力を合わせて取り組んでいます。また、多くの化学製品が輸出されたり、輸入される中で、国際機関、各国政府とも力を合わせて対処すべき課題です。これらに対応するため、NITE化学物質管理センターでは、国際会議に職員を派遣して、海外の情報収集を積極的に行うとともに、英文のホームページを作成し、国際機関のホームページとリンクしています。
このような活動を通して、NITE化学物質管理センターでは化学物質に関する安全、安心を維持することに努めています。さまざまな情報が、いろいろなところから提供されていますが、その情報の受け手である皆様も化学物質に関心を持っていただけるといいなと思っています。化学物質(化学製品)を使う人が気持ちよく使えることで、化学物質に対する安心が現実のものになると思うのです。あなたも私たちのホームページにアクセスしてみませんか。
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