新門カルディセリカ門細菌
(Caldisericum exile AZM16c01T(= NBRC 104410T))
Caldisericum exile AZM16c01Tは日本の温泉から分離された菌で、未培養細菌群OP5に属する菌の中での初の分離培養株です。今までこの未培養細菌群OP5に属する菌は、DNA配列によってその存在が温泉や汚染源等の様々な環境中において示されており、この未培養細菌群OP5に対して新しくCaldiserica 門が提唱されました。
C. exile AZM16c01T は菌糸状の形状であるグラム陰性の好熱菌(至適生育温度は65度)で、硫黄化合物(チオ硫酸、亜硫酸、硫黄原子)を還元して硫化水素を産生する嫌気性細菌です。生育には酵母エキスを必要としますが、電子供与体は不明です。
ゲノム解析の結果、C. exile AZM16c01Tのゲノムは1本の環状染色体(1,558,103 bp; G+C含量 35.4%)を持ち、その染色体上には1582個の遺伝子が予測されました。
予測された遺伝子の約60%は好熱性の嫌気性従属栄養細菌であるFirmicutes, Dictyoglomi, Thermotogae と最も良く似ていました。さらに面白いことに、C. exile AZM16c01T のゲノムサイズは小さいにも拘わらず、予測された遺伝子の約9%はArchaea に最も良く似ていました。また、予測された遺伝子を基に代謝系の再構築を行った結果、アミノ酸、補因子、ヌクレオチドの生合成経路がほとんど揃っていなにことが明らかとなり、本菌の環境中でのスカベンジャーとしての役割が示唆されました。
一方で、硫黄還元に関与している可能性のある様々なferredoxin oxidoreductase, heterodimeric sulfide dehydrogenase (Sud), mbx operonの存在が明らかとなり、これらはArchaea のPyrococcus で提唱されているsingle-enzyme respiratory systemを構成している要素と似ていることが明らかになりました。
新門菌に属するC. exile AZM16c01T のゲノム配列が、高温環境下での生物学や進化学に貢献する事が期待されます。
Caldisericum exile AZM16c01T 電子顕微鏡写真
森(NITE NBRC) 撮影
ゲノムサイズ(bps) | 1,558,103 |
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ORF | 1,582 |
GC含量(%) | 35.37 |
データベース | DOGAN |
NBRC番号 | 104410 |
References:
- [1] Caldisericum exile gen. nov., sp. nov., an anaerobic, thermophilic, filamentous bacterium of a novel bacterial phylum, Caldiserica phyl. nov., originally called the candidate phylum OP5, and description of Caldisericaceae fam. nov., Caldisericales ord. nov. and Caldisericia classis nov.
- Mori K.,Yamaguchi K.,Sakiyama Y.,Urabe T.,Suzuki K.
- Int. J. Syst. Evol. Microbiol. 59 (2009) 2894-8 [PMID:19628600]
- [2] First cultivation and ecological investigation of a bacterium affiliated with the candidate phylum OP5 from hot springs.
- Mori K.,Sunamura M.,Yanagawa K.,Ishibashi J.,Miyoshi Y.,Iino T.,Suzuki K.,Urabe T.
- Appl. Environ. Microbiol. 74 (2008) 6223-9 [PMID:18776034]
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