CMC letter No.8(第8号)- [化学物質管理センターからのお知らせ]
日本リスク研究学会での発表内容
NITE化学物質管理センターは、2007年度第20回日本リスク研究学会研究発表会<平成19年11 月17~ 18 日、於徳島大学>において、3件の口頭発表を行いました。その概要についてお知らせします。
環境報告書を用いた化学物質の
リスクコミュニケーション国内事例調査結果について
情報業務課 藤原亜矢子
600事業者の1,809冊の環境報告書(2002年度~2006年度発行)を調査対象として、リスクコミュニケーションの事例について調査しました。
その結果、リスクコミュニケーションの実施事業者の割合は、全体の3割程度であることがわかりました。しかし、ほとんどの事業者が、周辺地域の清掃・美化活動や、工場見学、交流会など、リスクコミュニケーションの基盤となる地域住民等の関係者との交流や対話を行なっており、それらに、環境情報の開示や意見交換の要素を加えることにより、リスクコミュニケーションへの展開は可能であることが明らかとなりました。
また、PRTR届出排出量とリスクコミュニケーションの事例数との相関を調べました。その結果、各都道府県のリスクコミュニケーションの事例数は、PRTR届出排出量と相関があり、届出排出量の公開がリスクコミュニケーション実施の一つのきっかけとなっている可能性を指摘し、事例数は化学物質の自主管理の推進におけるひとつの指標として考えることが可能であることを示すことができました。
化学物質のリスクコミュニケーションに対する事業者の認識について
情報業務課 竹田宜人
事業者向けに自治体が開催したリスクコミュニケーションに関する発表会において実施したアンケート調査結果に基づき、事業者のリスクコミュニケーション実施経験の有無に基づく、社員等の意識の比較を行いました。
調査結果から、リスクコミニュケーション未経験者において、「何をして良いかわからない」、「過剰反応が不安」、「コストがかかる」、「同業者が実施していない」などがリスクコミニュケーションに踏み切れない要因であることがわかりましたが、リスクコミュニケーション実施のメリットについては認識していることが伺われました。また、「他社の事例紹介」に対するニーズは、回答者すべてを通じて高く、他社がどのようなリスクコミュニケーションを行っているか、を知ることによって、「何をして良いかわからない」、「コストがかかる」などの不安を解消することができるものと考えられます。さらに、多変量解析を行ったところ、リスクコミュニケーションの実施経験と、「化学物質は管理すべき」とする化学物質管理に対する積極的な姿勢とは相関があり、リスクコミュニケーションを実施することにより、社員の意識も高まり、自主的な化学物質管理に繋がっていくものと思われます。
化学物質の初期リスク評価手法の開発 -環境省の環境リスク初期評価との比較-
リスク評価課 平井祐介
NITEが実施した初期リスク評価と環境省の環境リスク初期評価について、共通する評価対象化学物質(生態117物質、ヒト健康83物質)の暴露評価、リスク評価結果について比較を行いました。
比較の結果、評価対象化学物質の約7割を両評価書でリスク判定しており、残りの約3割はリスク判定が片方で行われていました。約7割のうち、2割にあたる物質についてリスク評価結果が異なりました。これには、評価手法の違いよりも採用したハザードデータの違いが大きく影響していました。
一部の化学物質について、NITEの評価書のみがリスク判定できた要因は、環境省がモニタリングデータのみを使用したことに対して、PRTRデータを活用したためであり、PRTRデータから環境濃度を推定するNITEの評価手法により、環境モニタリングデータがなくてもリスク評価できることを示唆しています。
化学物質管理センターと展示会の活用
当センターは、平成19年11月6日~9日にINCHEM2007、12月13日~15日にエコプロダクツ2007に出展しました。お寄りいただいた皆様には、心より感謝申し上げます。
本号では、エコプロダクツ2007の経験に基づき、展示会の活用と効果について、ご報告いたします。
【展示会出展の目的】
行政機関の場合、企業とは異なり、自らの事業やその根拠となる制度の周知が目的となります。当センターの場合、それに加えて、CHRIPなどによる情報提供をウェブ上で行っているため、それを商品と考えれば、多くのお客様にその商品の存在と価値を理解してもらい、利用していただくことも目的の一つです。
また、アンケートにより、NITEの認知度、パネルなどの展示物の評価、お客様が必要とする情報の調査を行うことや、お客様と情報交換を行うのも大きな目的です。
【アンケート結果について】
今回のアンケート結果は、昨年に比較して、パネル自身のデザインは変えていないのに、「パネルの字が小さい」、「表現がわかりにくい」との評価が増加しました。その原因として、今年度の展示会では、これまでと比較して、比較的じっくりとご説明ができたお客様に、アンケートをお願いすることにしたため、展示物を見る時間が昨年より長かったためではないかと考えています。
また、複数のお客様から、「ブースの入り口に立ったとき、パネルの字が小さく、この組織は何を訴えたいのかわからない」とのご指摘もいただきました。お客様がブースの前に立ち止まり、展示に関心を持ち、職員に話を聞いてみようかと思うためには、パネルの視覚的な効果が大きいようです。当センターのような業務の場合、法制度や科学的事実の説明が目的ですので、どうしても誤解の回避や当方が伝えたい情報を余さず掲載することが目的となりがちで、お客様が欲しい情報は何か、どのように表現すれば関心を持っていただけるか、などはなかなか意識されません。その点をご指摘いただいたものと理解し、今後の展示に繋げたいと考えています。
【アンケート結果の解析】
アンケートでは、化学物質へのイメージや、必要とする情報、展示物の評価などについてお尋ねしました。
市民の皆様が化学物質に対してネガティブイメージを持っている、との一般論に対して検証を行い、今後の化学物質管理に関する情報提供方法の検討の基礎データとするのが目的です。結果の解析には、多くのデータが関与するため、多変量解析(主成分分析)を用いています。右下の図はその結果です。X軸は展示物のわかりやすさと化学物質へのイメージを示しています。右に行くほどわかりにくく、化学物質に悪いイメージを持っていることを表しています。
化学物質を利用している関係者は、化学物質を「役立つ、便利だ、管理すべき、安全だ」と考え、「海外動向、国内法制度」などの情報を必要とする傾向があり、展示物を「わかりやすい」と評価しています。図では、左側の囲みが相当します。
しかし、化学物質を利用している関係者とは離れて、右側には「危険だ、汚染する、毒だ」などとイメージし、展示物を「字が小さい、図が見にくい、表現が難しい」、展示の説明では「化学物質管理制度を理解できない」と評価する傾向が認められました。面白いことに、「化学物質の有害性」や「環境濃度」、「リスコミ」などへの情報ニーズは、それらの中間に分布しました。「危険だ、汚染する、毒だ」などとイメージする人たちを市民と考えれば、化学物質を利用する関係者と市民を繋ぐのはリスコミとも言えるのかも知れません。
以上の結果から、当センターの展示は主に化学物質管理に関係した事業者向けのものであるため、市民の皆さんにとってわかりにくいものであることがわかりました。化学物質管理制度に関しては、国民への情報提供の重要性も指摘されていますので、対象とするお客様によって展示内容を変えるなど、今後の工夫が必要になると思います。
当センターの直接的な市民向け情報提供手段として、展示会の役割というものはなかなか大きなものと改めて感じられた結果でした。
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