化学物質管理

CMC letter No.8(第8号) - [特集・2]化学物質管理への取り組みとリスクコミュニケーション~日本石鹸洗剤工業会の事例紹介~

これまでの事例とは視点を変え、業界団体の取り組みをご紹介いたします。

日本石鹸洗剤工業会は、情報誌「クリーンエイジ」の発行や、定期的な催しとして「JSDAクリーンセミナー」を開催するなど、化学物質に関する情報提供やリスクコミュニケーションを積極的に推進しています。今回は、界面活性剤のリスク評価結果とリスクコミュニケーション活動について紹介していただきました。

なお、クリーンエイジでは、リスコミに関する情報も掲載されていますので、一度ご覧になってはいかがでしょうか。http://jsda.org

日本石鹸洗剤工業会

石鹸や洗剤は、日常生活に欠かすことのできないものだけに、生活者の方々に安心して使っていただく必要があります。このため、正しい知識の普及と啓発は欠かせません。日本石鹸洗剤工業会では、多くの製品に用いられる配合原料について、安全性や環境適応性の調査・研究を自ら行うとともに、リスクコミュニケーションを含め社会との交流を行っています。

界面活性剤の環境モニタリングと生態系リスク評価

当工業会では、洗剤に含まれる代表的な4種の界面活性剤について、関東及び関西の河川(多摩川、荒川、江戸川、淀川の4河川7カ所)で年4回の濃度測定による環境モニタリングを行っています。2006年度の環境中の界面活性剤濃度は1998年度~2005年度までと同様の結果を示しました。

項目 LAS AE DADMAC AO
2006年度モニタリング結果
(最小値~最大値)
4~79 0.02~31 <0.1 0.01~1.9
調査最大値(98年度~06年度) 81 31 3.8 1.9
予測無影響濃度 250 110 94 18
単位
:μg/L *:検出限界値
LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)
:陰イオン系
AE(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)
:非イオン系
DADMAC(ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド)
:陽イオン系
AO(アルキルジメチルアミンオキシド)
:両性イオン系

各界面活性剤の予測無影響濃度(水生生物への影響が現れないと予測される濃度)と比較すると、過去9年間の環境濃度は、いずれも予測無影響濃度を下回っていることから、調査対象物質の水環境へのリスクは小さいと考えます。

2種類の蛍光増白剤のヒト健康影響と生態系影響リスク評価

蛍光増白剤は、繊維や紙などの白さを増すために用いられる染料の一種で、白物衣料の製造には必ずといえるほど使われています。しかしこの染料は水落ちしやすいため、洗たく時に脱落した分を補って元の白さを保つ目的で、一部の洗剤に配合されています。当工業会では、これらの物質の安全性情報と日本における洗剤への配合量や洗剤の使用方法、国内河川における蛍光増白剤濃度の調査結果などを用いてリスク評価を行いました。

洗剤が皮膚に触れる可能性のある洗たく時と衣類着用時を想定して暴露量を見積もったところ、それぞれの耐容一日摂取量(生涯にわたり毎日摂取しても影響を生じないと推定される摂取量)よりも少なく、ヒト健康影響リスクは小さいと考えられます。さらに、河川水中の環境濃度も予測無影響濃度より低く、水生生物へのリスクも小さいと考えられます。

リスクコミュニケーション活動

リスク評価の推進と最新情報の提供は両輪の輪です。当工業会では化学物質の安全性を正しく理解していただくために、上記の結果など新しい情報を、環境年報やホームページで公表するほかに、「化学物質と安全」をテーマとしたセミナーの主催や、自治体や生協の環境学習会での情報交換など、積極的な広報活動に努めています。天然、合成に関わらず、世の中に100%安全(=リスクゼロ)な物質はないという事実と、正しく使えば実際上問題がない(=リスクは少ない)ことを、多くの方々にいかにご理解いただけるかが、今後もリスクコミュニケーションを行う上でのポイントであると考えています。

お問い合わせ

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