プロローグ
現在の人類が直面する大きな課題として、エネルギーや資源の確保と、その利用にあたっての安全と環境の保全があります。この中で、石油の輸送・保管などの過程における安全の確保、及びその過程で起こった事故や環境汚染への対処力の向上は、わが国における環境問題にとって重要であるとともに、それらの技術の関連諸国への移転は、地球的環境保護への国際的貢献として意義のあるものと考えられます。
不幸にして石油流出事故が起こってしまった場合は、すみやかに汚染を除去し、環境を回復させることが望ましいでしょう。環境中に流出した石油が環境中の微生物によって分解されることは従来から知られており、現在、その微生物の能力を活用した環境浄化(バイオレメディエーション)が注目されています。
我々は、石油の国際輸送過程で生起する環境汚染を修復する技術として、バイオレメディエーション技術を活用できる可能性について調査を実施してきました。本Web サイトが、石油資源の輸送・保管にかかる問題解決に取り組む方々に広く活用され、エネルギーや資源の確保と、その利用にあたっての安全と環境の保全に役立ち、地球環境問題への貢献や関連諸国に対する国際的な貢献として意義のあるものとなることを期待しています。
石油は絶えず海へ流出しています
1997年1月に起こったナホトカ号重油流出事故では、日本海側のかなり広い地域(島根県から石川県)に重油が流れ着き、海辺の自然環境・生態系は大きな打撃を受けました。この事故により、日本でも石油流出事故の脅威が認識されるようになりました。
石油による海の汚染の原因と言うと、石油タンカーの事故などを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。実際は、それ以外にも大小様々な大きさの船・飛行機などの事故による石油の流出、沈没した船・車・飛行機等からの石油の流出、海底から天然オイルが湧き出ることによる流出など、様々な要因によって海は絶えず石油汚染の被害にあっています。
石油流出の主な理由
- 船の事故による流出
- 飛行機の事故による流出
- 海底に沈んだ船・車・飛行機からの流出
- 海底からの天然オイルの流出
バイオレメディエーションで石油汚染の浄化をするため
バイオレメディエーション技術は、1989年3月にアラスカで起きたエクソンバルディーズ号原油流出事故の際はじめて本格的に試験され、海岸に漂着した石油の除去に有効であったとされています。しかし、日本においてはバイオレメディエーションを受け入れる素地ができていなかったため、ナホトカ号重油流出事故の際には本格的なバイオレメディエーションの適用は行なわれませんでした。今後、石油流出事故が起きた際の海岸への漂着油の除去にバイオレメディエーションを適用するには、その有効性や安全性の評価方法を含めたバイオレメディエーション適用手順を作っておくことが望ましいと考えられます。
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