バイオエタノール生産
お酒作りはバイオエタノール生産?
私達の食生活を彩るお酒。例えば日本酒はお米から作られます。お米は私達が消化し易いデンプンを多く含むように改良が重ねられてきた農作物です。そのデンプンを、糸状菌の一種である麹菌が分泌する酵素(アミラーゼなど)で糖(グルコース)に分解し、その糖を酵母で発酵させて得られるのがお酒です。つまり馴染み深いお酒作りは、バイオエタノール生産そのものとも言えます。
第一世代バイオエタノール生産
エタノールは燃料ともなります(アルコールランプを思いだしてください)。化石燃料であるガソリンで車を走らせれば、二酸化炭素を排出する一方です。二酸化炭素は温室効果ガスの代表とされ、その排出抑制への取り組みは今や義務とも言えます。一方で、植物が太陽光エネルギーと空気中の二酸化炭素を利用して、光合成した作物のデンプンを原料に生産したバイオエタノールで車を走らせれば、植物が光合成で固定した分に相当する二酸化炭素は± Zeroとなります。これがカーボンニュートラルと呼ばれる考え方で、それに適合するとして、食べられる農作物からのバイオエタノール生産がいくつかの国で進められてきました。このように食べられる可食部バイオマスから生産したものを第一世代バイオエタノールと呼びます。
第一世代バイオエタノール生産の影
ブラジルや米国、そして近年では中国が主要なバイオエタノール生産国となっています。日本の石油会社は二酸化炭素排出抑制の取り組みとしてブラジルからバイオエタノールを輸入しています。それらの国ではサトウキビやとうもろこしを原料とした第一世代バイオエタノールを生産しています。企業活動あるいは国家政策としてその生産規模は拡大の一途をたどっていますが、その一方で第一世代バイオエタノール生産に都合の良い農作物の耕作地を求めて、地球上の二酸化炭素固定で大きな役割を担っているアマゾンの森林が伐採され、また穀物市場が高騰して、食料難な発展途上国に多大な影響を及ぼしていることはニュースなどでお聞きの通りです。これが第一世代バイオエタノール生産の影と言えます。
第二世代バイオエタノール生産へ
このような背景から現在研究開発が進められているのが、食べられない、非可食部バイオマスからのバイオエタノール生産で、これを第二世代バイオエタノールとも呼びます。非可食部バイオマスとはいわゆる木や草のリグノセルロースを中心とするバイオマスです。私たちが、庭に生えている木にかぶりついて飲み込めたとしても、そのほとんどを占めるリグノセルロースはまったく消化できません(シロアリは木を消化できますが、それは消化管内に保持している微生物の力を借りているのです)。この非可食部を積極的に利用しようというわけです。我が国でも食料と直接競合しない第二世代バイオエタノールの技術開発が進められています。
我が国のバイオエネルギー研究開発への取り組み
技術 | 現状 | 実用化の見通し |
---|---|---|
メタン発酵 | 実用化(一部実証) | |
水素発酵 | 研究・実証 | 20年後以後の実用化を目指す |
糖質・澱粉系糖質発酵(第一世代) | 実用化 | |
セルロース系発酵(第二世代 | 研究・実証 | 5・10年後の実用化を目指す |
バイオマテリアル | 研究・実証~実用化 | 10年後の実用化を目指す |
バイオリファイナリー | 研究・実証 | 10年後の実用化を目指す |
ブタノール発酵 | 研究・実証 | 10年後の実用化を目指す |
藻類由来液体燃料 | 研究 | 20年後以後の実用化を目指す |
2012 バイオマス事業化戦略(バイオマス活用推進会議)による
バイオマス糖化で得られたグルコースをエタノール発酵するのではなく、化成品の合成出発材料へと変換するバイオリファイナリーも、今後の発展が期待される技術開発課題です。また藻類燃料はバイオエタノールの次を睨んだ期待のバイオエネルギーです。海に囲まれた我が国にとっては特に重要なチャレンジなのです。
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