イルマトバクター属細菌(Ilumatobacter coccineus YM16-304 (=NBRC 103263))
独立行政法人製品評価技術基盤機構(以下NITEという)バイオテクノロジーセンター(旧バイオテクノロジー本部)では、イルマトバクター属細菌 YM16-304(Ilumatobacter coccineus YM16-304 (=NBRC 103263))のゲノム解析を実施するにあたり、研究機関等と塩基配列決定、遺伝子機能解析等について共同研究を開始することとし、共同研究者の公募を平成20年3月17日から平成20年4月18日まで行いました。
応募された共同研究者については、提案の内容、実績、能力等について検討を行い、学校法人北里研究所を代表共同研究先として共同研究グループと共同研究を実施することになりました。
その概要につきましては以下の通りです。
1.研究テーマ
イルマトバクター属細菌(Ilumatobacter coccineus YM16-304(Marine actinobacterium YM16-304 (=NBRC 103263))のゲノム解析に係る共同研究
2.研究目標
イルマトバクター属細菌 YM16-304の全ゲノム解析を行い、代謝経路の再構築、至適培養条件の確立、二次代謝関連遺伝子の転写発現解析などを行って、新しい分類群の特徴を明らかにし、培養技術の向上、二次代謝産物を特定するための基盤情報の整備を進める。
微生物の概要
イルマトバクター属細菌 YM16-304 (=NBRC 103263)は、2005年に株式会社海洋バイオテクノロジー研究所の松尾らによって、日本海の海底泥から分離された新規性の高い海洋性のアクチノバクテリア群に属する細菌です。
本菌は、16S rRNA遺伝子系統解析から、培養株の中ではAcidimicrobidae亜綱の菌株に最も近縁となりますが、2009年に新しく提唱されたイルマトバクター属に属する新種であることが明らかとなりました。
そのため、本菌のゲノム解析によって、新しい分類群の特徴、知見が得られ、学術的な進展が期待されます。
一方、本菌はカイメンに由来する未培養のアクチノバクテリア群(共生微生物)と高い相同性を示しています。
カイメンは、二次代謝産物の宝庫と言われ、米国ではすでに医薬品としての研究開発が行われています。
その二次代謝産物の生産には、カイメンに共生しているアクチノバクテリア群が関与していると言われていますが、その分離培養に成功した例は未だにありません。
本菌は海底泥由来ですが、そのカイメン由来の未培養細菌群に近縁であることから、ゲノム解析を行うことで、カイメン共生微生物の分離培養に大きな手がかりを与えるものと考えます。
ひいてはカイメン由来の二次代謝産物の産業への利用促進が期待されます。
さらに、本菌の培養物からは、その活性物質の特定には至っていませんが、ヒト肺がん細胞の生育阻害活性が検出されています。
そのことからも、本菌のゲノム解析によって、新規性の高い有用酵素遺伝子や、新たな生理活性物質の生産能を見いだすことができるものと期待されるところです。
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