Vol.485 9月22日号「カセットボンベ使用機器、携帯発電機の事故」
Vol.485 9月22日号 「カセットボンベ使用機器、携帯発電機の事故」 【PDF:1,731KB】
今年の夏も各地で豪雨などの自然災害が各地で発生しました。万一の災害に備え、食品のほか、ガスや電気といったライフラインが寸断したときに困らないようにカセットボンベやカセットこんろ、携帯発電機、ポータブル電源などを用意している人も多いかと思います。しかしながら、これらの製品では製品事故が発生し、死亡者も出ています。
今回は、災害時これらを使おうとした際に事故に遭わないように、気を付けるポイントを事故事例と併せてご紹介します。
項目一覧
1. カセットボンベ使用機器、携帯発電機の事故
2. 製品事故収集情報(8月17日~ 8月30日 受付81件)
3. リコール情報 2件
4. その他の製品安全情報
・製品安全4法一部改正に関する解説動画作成及び英語版サイトの更新
・2025年度JACセミナー参加者募集のお知らせ
・経済産業省より「誤使用・不注意による製品事故リスクを低減した製品に対する表彰」(+あんしん表彰)説明会開催のご案内
・明治大学リバティアカデミー2025年秋期オンライン安全学各論寄付講座のご案内
・「NITE SAFE-Lite」のご案内
・消費生活用製品の重大製品事故に係る公表について
・NITE公式X アカウントのご案内
1.カセットボンベ使用機器、携帯発電機の事故
◆事故について
災害時に活躍する製品としては例えば、“ガス”供給が停止した際に代用となるカセットボンベ等(※1)、“電気”供給が停止した際に代用となる携帯発電機やポータブル電源などがあります。
【参考】
NITEに通知があった製品事故情報では、2020年から2024年までの5年間にカセットボンベ等の事故は主に火災などで204件(※2)、携帯発電機の事故は主に一酸化炭素(CO)中毒事故などで21件ありました。
これらは、経年劣化や誤った使い方が原因で発生しているケースが多いのが特徴です。
※1 今回の説明では、カセットボンベ及びアウトドアボンベを総称して「カセットボンベ等」と呼びます。
※2 カセットボンベ等を使用する製品で発生した事故も含みます。
◆事故事例
【事故事例.1】
カセットボンベをガスストーブ(カセットボンベ式)に接続して使用中、周辺を焼損する火災が発生し、1名が火傷を負いました。(2021年1月 京都府 80歳代 男性 軽傷)
→カセットボンベの長期保管(製造から26年)により内部のパッキンが劣化し、亀裂が生じていたために、カセットボンベをガスストーブに装着した際にガスが漏れ、ガスストーブの炎が引火したものと推定されます。
【事故事例.2】
窓及び玄関が施錠された一般住宅で携帯発電機を使用中、3名が一酸化炭素中毒で倒れ、うち1名が死亡しました。(2020年9月 鹿児島県 年齢性別不明 死亡)
→換気が十分に行えない屋内で使用したため、排気ガスにより屋内の一酸化炭素濃度が上昇し、一酸化炭素中毒になったものと推定されます。
◆気を付けるポイント
〇カセットボンベ等で気を付けるポイント
(1)経年劣化に注意する
カセットボンベ等は、気密性を保つためO(オー)リングやパッキンと呼ばれる部品が使われていますが、時間の経過とともに劣化(硬化してひび割れ)して、使用時にガス漏れなどが生じるおそれがあります。特に、製造から長期間経過したカセットボンベ等は、ガス漏れやさびなどが生じていないことを確認した上で、早めに使い切るようにしましょう。
食品に消費期限があるのと同様に、カセットボンベ等についても使用期限(※3)があります。使用期限が過ぎないように古いものから使い切り、新しいものを補充することを心がけて備蓄(ローリングストック)をしましょう。
※3 カセットボンベの使用期限は、ガスボンベの缶の裏面に印字されています。
出典・引用:一般社団法人 日本ガス石油機器工業会「カセットこんろとカセットボンベは経年劣化します」から https://www.jgka.or.jp/gasusekiyu_riyou/anzen/gasu_cart_keinen/index.html
【経年劣化によりガス漏れするようになったカセットボンベの事例】
(2)カセットボンベ等を機器に正しく装着し、ガス漏れがないか確認する
カセットボンベ等を機器に装着する場合は、取扱説明書の指示に従って確実に装着しましょう。カセットボンベ等の装着を誤った状態で使用すると、ガス漏れが生じて火災に至るおそれがあります。
もし、装着後に異音(シューというガスが漏れる音)や異臭などが生じた場合は、ガス漏れのおそれがありますので、点火動作を絶対に行わず、直ちにカセットボンベ等を取り外して使用を中止してください。また、火気を近付けないようにするとともに、換気をしてください。
(3)カセットボンベ等が異常に熱くなるような誤った使い方はしない
カセットボンベ等の中には液化石油ガスが液体と気体に分かれて入っています。カセットボンベ等が過熱されてしまうと液化石油ガスが液体から気体になろうと膨張し、内圧が上昇して限界を超えると破裂します。使用する際は、取扱説明書の注意事項を守って使いましょう。
また、避難先としてのテント内や車内など、狭い場所でカセットこんろを使用しないようにしましょう。周囲の可燃物に着火して火災になるおそれがあります。狭い場所で使用すると、不完全燃焼して一酸化炭素(CO)中毒に至るおそれがあり大変危険です。
(4)カセットボンベ等は使用機器から取り外し、室内の40℃未満の場所に保管する
カセットボンベ等を保管する際は、40℃以上の高温下や熱源のそばには放置しないよう気を付けましょう。こんろなどの熱源のそばや直射日光が当たるような場所に放置すると破裂のおそれがあり、大変危険です。
カセットボンベ等のガスの出が悪くなったからといって、意図的に温めることも絶対にやめましょう。使用後は、カセットボンベ等を取り外し、室内の40℃未満の涼しい場所に保管するようにしましょう。また、保管時はカセットボンベ等のキャップを忘れずに付けてください。キャップをせずに保管していると、劣化を早めてしまうおそれがあります。
〇携帯発電機で気を付けるポイント
携帯発電機は屋内では絶対に使用せず、屋外の風通しの良い場所で使用する
携帯発電機は、排ガスに一酸化炭素(CO)などの有害物質が含まれています。使用時に換気が不十分な場合、一酸化炭素中毒になるおそれがあります。
四畳半相当の締め切った部屋で小型汎用エンジンの携帯発電機を使用した場合、8分後には、室内の一酸化炭素濃度は2000ppmを超えました。(上の写真:検証例)
携帯発電機は、屋内や換気が悪く排ガスがこもる場所(物置、倉庫、自動車内、テント内など)では、絶対に使用しないでください。
なお、屋外で使用する場合でも、排ガスが屋内に入らないように風向きなど空気の流れに注意し、風通しが良い場所で使用しましょう。また、漏電や感電のおそれがあるため、雨天時に濡らさないよう注意しましょう。
○過去に発生した事故情報、リコール情報を確認する。
事故の中には、リコールが開始された後に発生したものもあります。お持ちの製品がリコール対象になっていないか今一度ご確認ください。毎号でご案内している 「NITE SAFE-Lite」 で、リコール情報を検索できます。ぜひご活用ください。
https://safe-lite.nite.go.jp/
消費者庁のリコール情報検索サイトでも確認できます。
https://www.recall.caa.go.jp/
もしリコールの対象となっている製品をお持ちの場合は、不具合が生じていなくても直ちに使用を中止し、お買い求めの販売店や製造・輸入事業者に相談をしてください。そのまま使い続けないようにしてください。
■NITE では、8月28日に注意喚起として『備えただけでは、憂いあり~ライフライン停止時に活躍する製品で気を付けるポイント~』をプレスリリースしています。今回ご紹介した事故の詳しい分析結果のほかにも、カセットボンベの所有状況に関する一般消費者へのアンケート調査などについてもご紹介しています。併せてぜひご覧ください。
https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/press/2025fy/prs250828.html
■新作映像資料
カセットボンベ「3.経年劣化によるガス漏れ」
https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/poster/sonota/20250828.html
2.製品事故収集情報
(8月17日~ 8月30日 受付81件)
NITEに通知のあった事故情報から、件数の多い製品を掲載します。
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1. モバイルバッテリー ( 火災等 8件 )
2. 照明器具 ( 火災等 6件 )
3. エアコン ( 火災等 5件 )
4. 扇風機、サーキュレーター ( 火災等 4件 )
4. 電気やかん、電気ケトル ( 火災等 4件 )
https://www.nite.go.jp/jiko/jikojohou/information/index.html
■事故情報の提供をお願いいたします。
事故の再発防止のため、有効に活用させていただきます。
https://www.nite.go.jp/jiko/jikojohou/shushu/index.html
3.リコール情報
◆株式会社グループセブジャパン(法人番号:7010701002766)
「電気ケトル」2025年9月16日
【詳細】https://www.t-fal.co.jp/news/250916-1/
オンライン受付フォーム(24時間):https://www.t-fal.co.jp/news/250916-2/
◆株式会社タカラトミー(法人番号:8011801003488)
「玩具」2025年9月8日
【詳細】https://www.takaratomy.co.jp/support/pdf/grand20250908.pdf
4.その他の製品安全情報
経済産業省では、令和7年12月に施行される「消費生活用製品安全法等の一部を改正する法律」の概要や、主な改正内容についての解説動画や、英語サイト(海外事業者向け)をこの度、整備いたしました。海外からオンラインモール等を通じて日本国内の消費者に製品を販売する事業者や、子供向け製品の製造・輸入・販売事業者におかれては、ぜひご覧ください。
以下リンク先に日本語版と英語版の紹介サイトを掲載しております。
【日本語版】
・(ベース)製安4法の解説動画(3分半)
https://www.youtube.com/watch?v=GuLbROueXFk
・改正法の概要動画(4分)
https://www.youtube.com/watch?v=6RRda5ZYpUI
【英語版】
1.解説動画
・(ベース)製安4法の解説(3分44秒)
https://www.youtube.com/watch?v=ltcJWVvVays
・改正法の概要動画(3分半)
https://www.youtube.com/watch?v=HatWmLQ2X7Y&t=209s
2.製品安全4法に関する解説ページ(更新版:各法の事業者向けガイド等)
https://www.meti.go.jp/english/policy/economy/consumer/product_safety/index.html
ぜひご覧ください。
◆◆◇ 2025年度JACセミナー参加者募集のお知らせ ◇◆◆
特に、「生成AI」「SAF原料リサイクル」「大阪・関西万博」「JCSS質量分野」にご興味のある方、 ぜひご参加ください。
詳細はこちらをご覧ください。
https://www.nite.go.jp/iajapan/jac/information/2025_jacseminar.html
・日時:2025年10月3日(金)12:50~16:30
・実施形態:ハイブリッド(会場+オンライン)
・定員:会場参加80名(※オンライン参加には定員は設けておりません)
・参加費:無料
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説明会開催のご案内◇◆
経済産業省は令和7年度より「誤使用・不注意による製品事故リスクを低減した製品の表彰・表示制度(+あんしん表彰)」を開始しました。
2年度目となる令和8年度の募集開始に向け、本制度の概要についてご説明するとともに、本制度の応募にあたって必要となるリスクアセスメントについて学んでいただける説明会を開催します。
なお、本説明会は今年度に「次年度の応募に向けた自社内での予算確保等の検討のため早期開催を望む」といったご要望を受け、開催するものです。ぜひご興味のある企業におかれましてはご参加ください。
本制度の詳細は下記のホームページもご参照ください。
https://www.meti.go.jp/product_safety/ps-award/risksystem/
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開催日時 :2025年 10月15日(水) 13:30~15:00 オンライン開催!
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【プログラム】
1.表彰制度の概要説明
2.リスクアセスメント講座
※当日は質疑応答の時間を設けます。
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【開催方法】Zoomウェビナー(完全オンライン)
【定 員】300名
【参 加 費】無料
【申 込】以下のURLからお申し込みください。
https://forms.office.com/r/FzKh2DH3hn
【申込期限】2025年10月10日(金)12時まで
【お問合せ】以下の事務局までご連絡ください。
MS&ADインターリスク総研株式会社・岡田
(psa@ms-ad-hd.com)
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オンライン安全学各論寄付講座のご案内
■講座概要 ■
【開催日】 2025年10月11日(土) ~ 2025年12月20日(土)
隔週土曜日 13:30~15:00、15:30~17:00(90分×2) 全12回(6日間)
【会 場】 オンライン ハイブリッド
(駿河台キャンパス or Zoomによるリアルタイム配信型(見逃し配信サービス付き))
【参加費】 10,000 円(税込)
【詳 細】https://academy.meiji.jp/course/detail/7645
■講座趣旨 ■
製品安全、機械安全、労働安全、およびそれらの共通するヒューマンファクター等を話題にして、主にリスク(危険性の度合い)を事前に評価するリスクアセスメント、そしてリスクを低減するリスク低減方策などについて講義を行います。
製品やシステムを安全に設計する基本概念と労働安全衛生を含めた最近の世界的な動向を紹介します。それに引き続いて、技術的側面,人間的側面,制度・組織的側面を含んだ総合的な視点から、具体的な事例に基づいて、機械安全、システム安全、作業を中心とした労働安全、そしてヒューマンファクター等について各専門家がそれぞれ詳しく紹介します。
■特記事項■
※見逃し配信(収録動画ストリーミング配信)もございます。詳細からご確認ください。
※お申込み前に必ずオンライン講座ご受講にあたってをご確認ください。
※初めてZoomをご利用になる方は、Zoomご利用ガイドをご覧ください。
※Zoomを最新版にアップデートしてご参加ください。
◆◆◇ 「NITE SAFE-Lite」のご案内 ◇◆◆
「NITE SAFE-Lite」は、サービス開始以来、多くの方にご活用いただいています。スマートフォンの小さな画面とタッチ操作に配慮したシンプルな操作性で、6 万件にも及ぶ製品事故情報を専門用語(例えば「異音」)でなく普段お使いの言葉(例えば「ガラガラ」)で検索できます。
「NITE SAFE-Lite」で製品事故を検索すると、同じ現象の事故だけではなく、よく似た事故情報も表示されます。これにより、様々な視点から事故となる危険性やその場合の被害状況などが「見える化」され、事故の未然防止につながります。
【NITE SAFE-Lite】
https://safe-lite.nite.go.jp/
◆◆◇ 消費生活用製品の重大製品事故に係る公表について ◇◆◆
消費者庁
09/17 10件
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms202_250917_01.pdf
09/12 21件
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms202_250912_01.pdf
09/09 21件
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms202_250909_01.pdf
◆◆◇ NITE公式Xアカウントのご案内 ◇◆◆
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編集後記
携帯発電機に給油するガソリンのお話です。ガソリンが悪用された事件などを契機に、自動車への給油以外で、容器での販売に関する規則が改正されています(※4)。具体的には、販売店には購入者の本人確認と使途の確認、販売記録の作成が義務付けられます。携行缶への給油は店の従業員でないと対応は出来ません。セルフ式スタンドでの購入者自身の作業は禁止ですからね。
忘れがちですが、携帯発電機は電気用品安全法に基づく特定電気用品です。(型式区分名:携帯発電機)お持ちの携帯発電機には◇PSEマークはついていますか。一度確認してみましょう。
※4 「危険物の規制に関する規則の一部を改正する省令」令和2年2月1日施行
お問い合わせ
- 独立行政法人製品評価技術基盤機構 製品安全センター 製品安全広報課
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TEL:06-6612-2066
FAX:06-6612-1617
住所:〒559-0034 大阪市住之江区南港北1-22-16 地図