Vol.481 7月22日号「リチウムイオン電池搭載製品の事故」
Vol.481 7月22日号 「リチウムイオン電池搭載製品の事故」 【PDF:1,538KB】
夏は気温が高くなることで、身近な製品がいつもより熱を持ちやすくなります。モバイルバッテリーやスマートフォン、電動アシスト自転車など、繰り返し充電して使える「リチウムイオン電池搭載製品」では、夏場に事故が増加する傾向が見られます。
リチウムイオン電池には可燃性の電解液が含まれているため、大きな火災事故につながるおそれもあります。今回は、「リチウムイオン電池搭載製品」による火災事故を防ぐ3つのポイントを、事故事例と併せてご紹介します。夏バテ(夏のバッテリー)には十分注意してお過ごしください。
項目一覧
1. リチウムイオン電池搭載製品の事故
2. 製品事故収集情報(6月15日~ 6月28日 受付57件)
3. リコール情報 2件
4. その他の製品安全情報
・製品安全4法一部改正に関する解説動画作成及び英語版サイトの更新
・「NITE SAFE-Lite」のご案内
・消費生活用製品の重大製品事故に係る公表について
・NITE公式X アカウントのご案内
1.リチウムイオン電池搭載製品の事故
◆事故の実情
NITE には、2020 年から 2024 年までの 5 年間に報告された「リチウムイオン電池搭載製品」の事故(※1)が1860件ありました。事故の約85%(1860件中1587件)が火災事故につながっています。また事故発生件数は春から夏にかけて気温の上昇とともに増加する傾向にあり、6月~8月にかけての事故発生件数が最も多くなっています。
製品別では「モバイルバッテリー」の事故が最も多く、その他、電動アシスト自転車、充電式掃除機、充電式電動工具、ポータブル電源などの事故が多く報告されています。
※1 事故件数の中には、調査中の事故や原因は特定されていないがリチウムイオン電池に起因した可能性があると推定される事故も含んでいます。
◆事故事例
【事故事例.1】
電動アシスト自転車用バッテリー及び周辺を焼損する火災が発生しました。(2022年6月 愛知県 40歳代・男性 拡大被害)
→バッテリー内部の湿気が、内蔵されたリチウムイオン電池セルのつなぎ目から浸入し、劣化等により内部ショートが生じて異常発熱し、発火したものと考えられます。本件は、リコール対象製品による事故でした。購入後にリコール情報を確認しなかったことによる事故です。
【事故事例.2】
自動車内でモバイルバッテリーを焼損する火災が発生しました。(2023年8月 熊本県 40歳代・男性 拡大被害)
→モバイルバッテリーに内蔵されているリチウムイオン電池セルが異常発熱し発火したものと考えられます。夏場に高温下の自動車内に放置したことによる事故です。
【事故事例.3】
モバイルバッテリー及び周辺を焼損する火災が発生しました。(2021年9月 沖縄県 30歳代・男性 拡大被害)
→使用者が膨張したモバイルバッテリーを押し込んで元に戻そうとした際に、外力が加わり、内部のリチウムイオン電池セルが内部ショートし、異常発熱して発火したものと考えられます。膨張したバッテリーに衝撃を与えたことによる事故です。
◆気を付けるポイント
「リチウムイオン電池搭載製品」の火災事故を防ぐ3つのポイント
(1)正しく購入する
〇連絡先が確かなメーカーや販売店から購入しましょう。
不具合や事故発生後に事業者からの補償を受けられない、事業者と連絡が取れないなどの事態が発生しています。販売元の情報を確認し、サポートが日本語に対応しているかどうか、連絡先(電話番号や住所)が実在するか確認しましょう。
〇リコール対象ではないことを確認して購入し、購入後も常に最新の情報をチェックしましょう。
リコール対象の「リチウムイオン電池搭載製品」による事故が2020年から2024年までの5年間で360件以上発生しています。お持ちの製品がリコール対象になっていないか今一度ご確認ください。毎号でご案内している 「NITE SAFE-Lite」 で、リコール情報を検索できます。ぜひご活用ください。
https://safe-lite.nite.go.jp/
消費者庁のリコール情報検索サイトでも確認できます。
https://www.recall.caa.go.jp/
もしリコールの対象となっている製品をお持ちの場合は、不具合が生じていなくても直ちに使用を中止し、お買い求めの販売店や製造・輸入事業者に相談をしてください。
〇安価な「非純正バッテリー(※2)」に潜むリスクについて理解しましょう。
安価で入手しやすい「非純正バッテリー」で火災を伴う事故が多く発生しています。
・設計に問題があり、異常発生時に安全保護装置が作動しない場合がある。
・品質管理が不十分で、通常の使用であっても事故に至る場合がある。
・事故が発生した際に、事業者の対応や保証が受けられない場合がある。
安価である分、安全のためのコストが削られている場合がありますので、安価な非純正バッテリーには“高リスク“のものが潜んでいることを理解しましょう。
※2 機器本体のメーカーとは無関係の事業者から販売されているバッテリーで、機器本体の メーカーが、そのバッテリーの設計や品質管理に一切関与していないもの。
(2)正しく使用する
〇高温下に放置するなどして熱を与えないようにしましょう。
リチウムイオン電池は、高温環境下では熱の影響で異常な反応が起きて発熱・破裂・発火するおそれがあります。直射日光の当たる場所や暑い日の車内などの高温下には放置しないでください。
〇強い衝撃を与えないようにしましょう。
リチウムイオン電池は外部からの衝撃が加わると内部に傷が付くことで内部ショートが生じ、発煙や発火につながります。また、膨張を元に戻そうとして強い力が加わったことで異常発熱して出火した事故も発生しています。地面に落としたり無理な力を加えたりしないようにしてください。
(3)正しく対処する
〇充電・使用時は時々様子を見て、異常を感じたらすぐに充電・使用を中止しましょう。
充電・使用時は時々様子を見て、以下のような異常を発見した場合は、すぐに充電・使用を中止して、お買い求めの販売店や製造・輸入事業者に相談してください。
☑ 充電できない。
☑ 充電中に以前よりも熱くなる。
☑ 膨らんで変形している。
☑ 落とす、ぶつけるなどで強い衝撃を与え、一部が変形している。
☑ 不意に電源が切れる。
【事故事例.3】のように、膨らんだリチウムイオン電池の内部には可燃性ガスがたまっています。このような状態の電池に強い外力を加えると、可燃性ガスが噴き出し、発火するおそれがあり、特に注意が必要です。
〇万が一発火した場合は大量の水で消火し、可能な限り水没させた状態で、119番通報しましょう。
万が一発火した場合、煙や炎が噴き出している時は絶対に近寄らないでください。モバイルバッテリーのようにポケットに入る小型サイズのものであれば、火花が収まったら、大量の水を掛けることで消火することができます。消火後は、可能な限り水没させた状態で、消防機関へ通報してください。リチウムイオン電池は消火後も熱をもっているため、火が消えた後に冷却しないまま可燃物に接触させると新たな火災につながるおそれがあります。
上記の対処が困難と判断した場合は、身の安全の確保を第一に119番通報してください。
【参考】
(1) リチウムイオン電池の種類
リチウムイオン電池は、用途に応じて円筒形・ラミネート形・角形の3種類の形状があります。
(2) リチウムイオン電池の構造
リチウムイオン電池の内部は、正極板と負極板をセパレーターで隔離している構造となっており、正極板と負極板の間でリチウムイオンと電子をやりとりすることで電気エネルギーを生み出しています。正極板と負極板が何らかの理由で電気的につながることを内部ショートと呼び、異常発熱・発火につながります。
■NITE では、6月26日に注意喚起として、“『夏バテ(夏のバッテリー)』にご用心
~「リチウムイオン電池搭載製品」の火災事故を防ぐ3つのポイント~ “ をプレスリリースしています。今回ご紹介した事故の詳しい分析結果のほかにも、モバイルバッテリーのヒヤリハット・事故の経験の有無と内容に関するアンケート調査結果などの結果情報を掲載しています。ぜひご覧ください。
https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/press/2025fy/prs250626.html
新作動画 モバイルバッテリー「8.異常・発火時はどうする?」
https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/poster/kaden/20240626.html
2.製品事故収集情報
(6月15日~ 6月28日 受付57件)
NITEに通知のあった事故情報から、件数の多い製品を掲載します。
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1. モバイルバッテリー ( 火災等 5件 )
2. 電子レンジ ( 火災等 4件 )
2. 洗面化粧台 ( 破損等 4件 )
3. IH調理器 ( 火災等 3件 )
3. 太陽光発電システム ( 火災等 3件 )
3. はしご ( 破損等 3件 )
3. 照明器具(LEDランプなど) ( 火災等 3件 )
https://www.nite.go.jp/jiko/jikojohou/information/index.html
■事故情報の提供をお願いいたします。
事故の再発防止のため、有効に活用させていただきます。
https://www.nite.go.jp/jiko/jikojohou/shushu/index.html
3.リコール情報
◆Bigblue Tech 株式会社(法人番号:4140001118229)
「リチウム電池内蔵充電器」2025年7月1日(HP)
【詳細】https://www.ibigblue.co.jp/pages/
◆株式会社FOOLS(法人番号:5011201021242)
「靴(スニーカー)」2025年6月12日(HP)
【詳細】https://grounds-fw.jp/blogs/news/importantrecallnotice-for-skyscraper-skyscraper-wire
オンライン受付フォーム(24時間)https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdlkOZjMB-yYNRafsZwGO2fv6TN2Jvl6uXKJKEstqG0bd1F7A/viewform
4.その他の製品安全情報
経済産業省では、令和7年12月に施行される「消費生活用製品安全法等の一部を改正する法律」の概要や、主な改正内容についての解説動画や、英語サイト(海外事業者向け)をこの度、整備いたしました。海外からオンラインモール等を通じて日本国内の消費者に製品を販売する事業者や、子供向け製品の製造・輸入・販売事業者におかれては、ぜひご覧ください。
以下リンク先に日本語版と英語版の紹介サイトを掲載しております。
【日本語版】
・(ベース)製安4法の解説動画(3分半)
https://www.youtube.com/watch?v=GuLbROueXFk
・改正法の概要動画(4分)
https://www.youtube.com/watch?v=6RRda5ZYpUI
【英語版】
1.解説動画
・(ベース)製安4法の解説(3分44秒)
https://www.youtube.com/watch?v=ltcJWVvVays
・改正法の概要動画(3分半)
https://www.youtube.com/watch?v=HatWmLQ2X7Y&t=209s
2.製品安全4法に関する解説ページ(更新版:各法の事業者向けガイド等)
https://www.meti.go.jp/english/policy/economy/consumer/product_safety/index.html
ぜひご覧ください。
◆◆◇ 「NITE SAFE-Lite」のご案内 ◇◆◆
「NITE SAFE-Lite」は、サービス開始以来、多くの方にご活用いただいています。スマートフォンの小さな画面とタッチ操作に配慮したシンプルな操作性で、6 万件にも及ぶ製品事故情報を専門用語(例えば「異音」)でなく普段お使いの言葉(例えば「ガラガラ」)で検索できます。
「NITE SAFE-Lite」で製品事故を検索すると、同じ現象の事故だけではなく、よく似た事故情報も表示されます。これにより、様々な視点から事故となる危険性やその場合の被害状況などが「見える化」され、事故の未然防止につながります。
【NITE SAFE-Lite】
https://safe-lite.nite.go.jp/
◆◆◇ 消費生活用製品の重大製品事故に係る公表について ◇◆◆
消費者庁
07/15 13件
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms202_250715_1.pdf
07/11 24件
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms202_250711_01.pdf
07/08 09件
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms202_250708_01.pdf
◆◆◇ NITE公式Xアカウントのご案内 ◇◆◆
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編集後記
携帯用扇風機が普及してから、街中で「うちわ」を持つ人をあまり見かけなくなりましたね。駅前で販促用に配られていたことも今では懐かしい光景です。
しかし、(編)は携帯用扇風機をもっておらず、頑なに「うちわ」派です。「うちわ」の場合は、風が広範囲に広がるので、あおいで涼むだけでなく、蚊などの虫払いができるのでいいですよ。むしろそれが持ち歩く主目的になっています。落としても、踏んでも出火する心配のない、リチウムイオン電池レスの「うちわ」も悪くはないですよ。
お問い合わせ
- 独立行政法人製品評価技術基盤機構 製品安全センター 製品安全広報課
-
TEL:06-6612-2066
FAX:06-6612-1617
住所:〒559-0034 大阪市住之江区南港北1-22-16 地図