Vol.440 11月14日号 「石油ストーブ等の事故」
Vol.440 11月14日号 「石油ストーブ等の事故」【PDF:0.39MB】
部屋を暖かく快適にしてくれる石油ストーブ及び石油ファンヒーター(以下、石油ストーブ等)ですが、事故が毎年11月頃から多く発生しています。今回は本格稼働目前となるこのタイミングに、石油ストーブ等の事故をご紹介します。
項目一覧
- 1.石油ストーブ等の事故
- 2.製品事故収集情報(10月15日~11月4日 受付 86件)
3. リコール情報 1件
4. その他の製品安全情報
・ 日本版「製品安全誓約について考える」シンポジウムのご案内
・「SAFE-Lite」のご案内
・消費生活用製品の重大製品事故に係る公表について
・Instagram アカウント開設のお知らせ
1.石油ストーブ等の事故
【事例1】手入れ不足による異常燃焼や堆積物への引火
石油ストーブを使用中、石油ストーブから出火して周辺を焼損し、1人が重傷を負いました。
⇒石油ストーブの空気取入口の下に炭化物の堆積があったほか、置台の表面に焦げつきや変色が確認されたことから、置台に堆積したほこり等によって空気の流入が阻害され、吹き返し現象※1が発生し、ほこり等に引火し燃え広がったと考えられます。
(※1)吸気不足などで炎が空気取入口から逆流して出てくる現象
【石油ストーブ等のチェックポイント1】
○ほこりがたまっていたら掃除する。
石油ストーブにほこりなどが堆積すると、燃焼状態が悪くなったり、炎が逆流して石油ストーブの下からあふれる吹き返し現象が生じてほこりに引火したりするおそれがあります。
また石油ファンヒーターも空気取込口にほこりが閉塞することで異常燃焼が生じる事故が発生しています。
使用を始める前に掃除を行い、シーズン中も定期的に掃除をしてください。特に石油ストーブの置台や、燃焼部位の近くなどにほこりがたまらないようにしてください。
【事例2】ずれた燃焼筒による異常燃焼】
石油ストーブを使用中、石油ストーブを焼損し、周辺を汚損する火災が発生しました。
⇒燃焼筒がずれて置かれていたことにより異常燃焼が発生し、炎が高く上がったことで事故に至ったと考えられます。
【石油ストーブ等のチェックポイント2】
○対震自動消火装置の状態を確認する。
対震自動消火装置が正しく動作することを確認してください。石油ストーブでは、芯の動きが悪くなると、対震自動消火装置が作動しても芯が下がりきらず、消火不良となるおそれがあります。
確認方法は、機器本体を前後に揺らしたときに、石油ストーブの場合、芯を上げた状態から芯が下がりきること、石油ファンヒーターでは使用状態から停止することを確認します。確認方法の詳細は取扱説明書を確認してください。
○燃焼筒の取り付け状態を確認する。(石油ストーブの場合)
燃焼筒をセットした時や、点火操作後には、燃焼筒のつまみを2~3回ほど左右に回転させて燃焼筒が正しくセットされているか確認してください。燃焼筒が正しくセットされていないと異常燃焼によって炎があふれて火災が発生するおそれや、一酸化炭素が多く排出されてしまうおそれがあります。
燃焼筒のずれによる異常燃焼
燃焼筒のつまみを回してすわりを確認
【事例3】ガソリンの誤給油
石油ストーブを使用中、建物2棟を全焼する火災が発生しました。
⇒カートリッジタンク及びストーブ内部からガソリン成分が検出されたことから、カートリッジタンクにガソリンが混入したため事故に至ったと考えられます。ガソリンが混入した経緯は不明でしたが、灯油の入った容器はガソリン携行缶と同じ建物で保管され、事故発生現場からは給油口ふたが外れている膨張したガソリン携行缶が発見されました。
【石油ストーブ等のチェックポイント3】
○燃料は新しい灯油を入れる。ガソリンは別の場所で保管するなど、誤給油を防ぐための対策を徹底する。
石油ストーブ等には新しい灯油を給油してください。灯油は劣化するため、昨シーズンの燃料を持ち越して使用することは異常燃焼や一酸化炭素の排出を促進させるおそれがあります。もし昨シーズンの灯油が残っていた場合は、タンクや機器本体から灯油を抜いてください。灯油の処分については、灯油を購入した販売店に相談してください。
また、誤ってガソリンや混合燃料を給油すると、たとえ少量の混入であっても火災に至るおそれがあり、大変危険です。灯油とガソリンを類似した容器で保管していたために誤ってガソリンが混入していた灯油の給油や、同じ場所で保管していたガソリンを取り違えて給油したこと等による事故が発生しています。灯油は灯油用ポリタンクなどの専用容器※2に、ガソリンは消防法に適合した金属製のガソリン携行缶に入れて保管し、別の場所で保管する、ラベル表示で区別するなど、誤給油を防ぐための対策を徹底してください。
(※2)日本ポリエチレンブロー製品工業会(JBA)推奨ラベル、危険物保安技術協会(KHK)の試験確認済証、JISマーク(JIS Z 1710 灯油用ポリエチレンかん)などが表示されているもの
【事例4】給油口ふたの閉め忘れ及び締め付け不良などによりこぼれた灯油に引火
石油ストーブを使用中、建物1棟を全焼、2棟を類焼する火災が発生しました。
⇒給油口ふたの閉め方が不十分であったため、給油後のカートリッジタンクを石油ストーブ本体へ戻す際に給油口ふたが外れて灯油がこぼれ、こぼれた灯油がストーブ天板から燃焼筒にかかって発火し周囲へ拡大したものと考えられます。
【石油ストーブ等のチェックポイント4】
○給油後は、給油口ふたをしっかりと閉め、灯油がこぼれないことを確認してから本体にセットする。
カートリッジタンクの給油口ふたの閉め方が不十分だったなどで、灯油がこぼれて引火した事例があります。給油後は、給油口ふたがしっかり閉まっていることを必ず確認してから本体にセットしてください。また、給油する際は、必ず先に消火してください。
灯油が機器本体にこぼれた際は、機器内部に浸入しているおそれがありますので、使用を 中止し、販売事業者や製造事業者に相談してください。
○安全機能で給油口ふたが閉まっていることを確認する。
PSCマークの付いた製品は、閉止音や目視又は感触などで給油口ふたが閉まっていることが確認できる機能を有しています。
石油ストーブをはじめとする石油燃焼機器は、2009年に消費生活用製品安全法の「特定製品」に指定され、2011年からはPSCマークの無い製品は販売することができなくなりました。
マークは製品ラベルなどに表示されています
【事例5】可燃物の近接
石油ファンヒーターを使用中、建物を全焼する火災が発生し、1名が軽傷を負いました。
⇒石油ファンヒーターの吹き出し口とこたつが近接した位置に設置されていたため、こたつ布団が過熱されて出火したものと考えられます。なお、被害者は視力が弱く、石油ファンヒーターとこたつ布団の間隔がよく見えていませんでした。
【石油ストーブ等のチェックポイント5】
○周囲の物や天井、壁などと十分な距離を確保する。
石油ストーブ等を使用するときは、壁や周囲の家具、衣類などから指定された距離をとりましょう。カーテンや布団など燃えやすく動くものにも注意が必要です。石油ストーブ等に可燃物が近接していたり接触したりしていると、放射熱※3による過熱や高温部への接触によって、火災になるおそれがあります。
(※3)放射熱とは、高温の物体が発する赤外放射などによって離れたところに伝わる熱。
可燃物との接触で発火
【高齢者による石油ストーブ等の事故を防ぐために】
○高齢の方も今一度、正しい使い方の確認を、御家族や周囲の方は見守りをお願いします。
高齢者の事故が特に多く発生しています。カートリッジタンクの給油口ふたがしっかり閉まっていなかったものやガソリンの誤給油などが多い背景には、例えば、加齢に伴う握力の低下で給油口ふたを閉める力が不十分になるなど身体機能の低下、ガソリンの臭いが分かりづらいなど嗅覚や視力、聴覚といった感覚機能の低下、判断力の低下などが関係していると思われます。今まで大丈夫だったからと油断せず、今一度、正しい使い方を確認してください。
また、使用者による注意だけでは限界がある場合もあります。御家族や周囲の方も、誤った使い方をされていないかチェックポイントで確認して伝える等、注意を払っていただきますようお願いします。
【注目!新作動画】
○石油ストーブ「15. 火災を防ぐ5つのチェックポイント」
https://www.youtube.com/watch?v=krrcZYVYBZQ
■NITEでは2023年10月26日に注意喚起として『シーズン初めの石油ストーブ安全大作戦~5つのポイントで火災事故を防ごう!~』をプレスリリースしました。
https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/press/2023fy/prs231026.html
■その他の情報も併せてご参照ください。
(映像資料:リンク先で動画が視聴できますので是非ご覧ください)
(1) 石油ストーブ「1.ガソリンの誤給油」
https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/poster/nenshou/02040101.html
(2) 石油ストーブ「3.ずれた燃焼筒の異常燃焼」
https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/poster/nenshou/02040105.html
(3) 石油ストーブ「4.燃焼筒を逆にしての異常燃焼」
https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/poster/nenshou/1312.html
(4) 石油ストーブ「6.給油時、こぼれた灯油に引火」
https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/poster/nenshou/02110101.html
(5) 石油ストーブ「8.燃焼筒内部の吹き返し現象」
https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/poster/nenshou/1173.html
(6) 石油ストーブ「10.変質灯油で異常燃焼のおそれ」
https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/poster/sonota/03300101.html
(7) 石油ストーブ「11.洗濯物の落下」
https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/poster/nenshou/2020112602.html
(8) 石油ストーブ「13.清掃不足で異常燃焼」
https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/poster/nenshou/20211125.html
(注意喚起ミニポスター)
(1) 石油ストーブの火災事故を防ぐ5つのチェックポイント
https://www.nite.go.jp/data/000151768.pdf
2.製品事故収集情報
◆◆◇ 消費生活用製品の事故情報収集状況 ◇◆◆
(10月15日~11月4日 受付 86件)
NITEに通知のあった事故情報から、件数の多い製品を掲載します。 ========================================================
製品名 (事故状況と件数)
1. ガスこんろ ( 軽傷等 6件 )
1. 照明器具 ( 火災等 6件 )
3. 電動アシスト自転車 ( 重傷等 5件 )
3. バッテリーパック(リチウムイオン、電動アシスト自転車用)( 拡大被害等 5件 )
3.洗面化粧台 ( 破損等 5件 )
洗面化粧台はキャビネットが落下したという4件の同種事故を含みます。
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◇最新事故情報(これまでの受付情報もご確認いただけます)
https://www.nite.go.jp/jiko/jikojohou/information/index.html
■事故情報の提供をお願いいたします。
事故の再発防止のため、有効に活用させていただきます。
https://www.nite.go.jp/jiko/jikojohou/shushu/index.html
3.リコール情報
- 株式会社大創産業(法人番号:7240001022681)
「ゼムクリップ」 2023/06/26 (HP)
【詳細】https://www.daiso-sangyo.co.jp/wp-content/uploads/2023/06/22652a12acb22870a33d7cb1de8b709d.pdf
4.その他の製品安全情報
◆◆◇日本版「製品安全誓約について考える」シンポジウムのご案内 ◇◆◆
地方創生SDGs官民連携プラットフォーム「安全とSDGs分科会」
11月は、経済産業省が呼びかける「製品安全総点検月間」です。
今回の『安全とSDGs分科会』シンポジウムでは、今年6月末から始まった、日本版「製品安全誓約」を取り上げます。
日本版『製品安全誓約』は、『リコール製品や安全ではない製品』がもたらす、『生命・身体に及ぼすリスクから消費者をこれまで以上に保護する』ことを目的として、消費者庁、総務省消防庁、経済産業省及び国土交通省といった消費者向け製品の関係省庁とオンラインマーケットプレイスの運営事業者との協働により策定されたものです。
現在、この誓約には、主要なオンラインマーケットプレイス運営事業者7社が署名し、各社において、①リコール製品や安全基準等を定める法令に違反した製品の出品を削除する取組、②消費者からリコール製品や安全基準等を定める法令に違反した製品の出品が通知された場合の取組、③さらに、こうした取組を実施するための内部管理体制の構築・維持などが行われています。
今回のシンポジウムでは、消費者庁消費者安全課及びオンラインマーケットプレイス協議会(JOMC)にも御協力いただき、日本版『製品安全誓約』の概要ご説明、各社における取組事例のご紹介と共に、その後のディスカッションでは、オンラインマーケットでの製品安全確保における課題や消費者・事業者(製造・輸入・流通・販売)への影響等について考えます。
【開催日】 2023年11月24日(金) 14時~16時
【会 場】 オンライン開催(Zoomによるリアルタイム配信:見逃し配信あり)
【参加費】 無料
【内 容】●講演①:日本版「製品安全誓約」とは?
(消費者庁消費者安全課)
●講演②:オンラインマーケットプレイス各社の取組紹介
(アマゾンジャパン合同会社、eBay Japan 合同会社、
auコマース&ライフ株式会社、LINEヤフー株式会社、楽天グループ株式会社)
●パネルディスカッション:インターネット取引における製品の安全確保について
(auコマース&ライフ株式会社、楽天グループ株式会社、公益社団法人 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会、モデレータ:電気安全環境研究所)
【申 込】以下のリンク先から参加登録をお願いします。
https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_teXJEfG1Tz-mkA-ScVWfLQ
ご登録後、ウェビナー参加に関する確認メールが届きます。
【主 催】地方創生SDGs官民連携プラットフォーム『安全とSDGs分科会』
【協 力】公益社団法人 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会(NACS)
一般社団法人 日本エシカル推進協議会(JEI)
一般社団法人 日本サステナブルラベル協会(JSL)
一般社団法人 PL対策推進協議会(APL)
一般財団法人 電気安全環境研究所(JET)
【お問合せ】地方創生SDGs官民連携プラットフォーム『安全とSDGs分科会』
(事務局)一般財団法人電気安全環境研究所 電気製品安全センター(担当:桑原)
電話:03-3466-5162 Mail:semi07@jet.or.jp
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◆◆◇ 「SAFE-Lite」のご案内 ◇◆◆
NITEは、より安全・安心な社会になることを目指して、製品安全に関する情報を発信してまいりました。NITEのウェブサイトでは、事故情報データベース、リコール情報や誤使用に関する注意喚起などを発信しています。その中で、製品事故情報をどなたでも簡単にウェブ検索できるシステムとして、「SAFE-Lite」というサービスをご提供しております。
「SAFE-Lite」は、サービス開始以来、多くの方にご活用いただいています。スマートフォンの小さな画面とタッチ操作に配慮したシンプルな操作性で、6万件にも及ぶ製品事故情報を専門用語(例えば「異音」)でなく普段お使いの言葉(例えば「ガラガラ」)で検索できます。
「SAFE-Lite」で製品事故を検索すると、同じ現象の事故だけではなく、よく似た事故情報も表示されます。これにより、様々な視点から事故となる危険性やその場合の被害状況などが「見える化」され、事故の未然防止につながります。
【SAFE-Lite】
https://safe-lite.nite.go.jp/
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◆◆◇ 消費生活用製品の重大製品事故に係る公表について ◇◆◆
消費者庁
消費者庁は、消費生活用製品安全法第35条第1項の規定に基づき報告のあった重大製品事故について、以下のとおり公表しています。
10/27 15件
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms202_231027_01.pdf
10/31 12件
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms202_231031_01.pdf
11/2 14件
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms202_231102_01.pdf
11/7 5件
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms202_231107_01.pdf
11/10 15件
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms202_231110_01.pdf
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◆◆◇ Instagram アカウント開設のお知らせ ◇◆◆
NITEでは、公式アカウントを開設しております。
インスタグラムでも、シーズンに合わせて、皆様の生活の安全を守るためにどんどん発信していきますので、フォローやいいねをお待ちしております!
Instagramアカウント→@nite_japan
編集後記
石油ストーブ等の事故は取扱説明書や本体表示に記載された使用上の注意を正しく守っていれば防げた事故は少なくありません。長年石油ストーブ等を愛用されている方も今まで大丈夫だったからと油断せず、使い始めのこの季節こそ、使用前のチェックポイントを確認し、正しい使い方を身に付けて事故を防ぎましょう。(ゆ)
お問い合わせ
- 独立行政法人製品評価技術基盤機構 製品安全センター 製品安全広報課
-
TEL:06-6612-2066
FAX:06-6612-1617
住所:〒559-0034 大阪市住之江区南港北1-22-16 地図