製品安全

Vol.34 10月20日号「噴霧器の部品が使用者の顔面に直撃した事故(前編)」

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                       http://www.jiko.nite.go.jp/

===================2006.10.20 Vol. 34==================

┌─────┐
│PSコラム│
└─────◆───────────────────────────┐
      │        誤使用トライアングル         │
       └───────────────────────────┘

◇NITEの消費生活用製品の誤使用事故防止ハンドブックに使われている
 「誤使用トライアングル」についてよく質問を受ける。非常識な使用は具体
 的には何か、故障状態の使用はどこに含まれるのかといった質問だ。トライ
 アングルは製品の使用を「正常使用」「予見可能な誤使用」「非常識な使用」
 に分類し、三角形の図で表したものである。非常識な使用については、以前
 のPSコラム(*1)でも取り上げたのでご覧いただきたい。故障状態の使用は
 非常識な使用でもなければ、正常使用でもないとすると答えは簡単だ。予見
 可能な誤使用に入ると考えるのが自然だ。従って、この場合、製品の安全性
 を事業者が確保しなければならない。

◇安全を担当する者にとって、誤使用の責任主体を整理する場合などに、この
 トライアングルは大変参考になる。NITEのトライアングルが登場する前
 にトライアングルを考案した者がいる。考案者をよく知る者からエピソード
 を聞く機会があったので紹介をしたい。

◇トライアングルの考案者は、昭和10年東京電気株式会社(現在の株式会社
 東芝)に入社、初代テレビ技師長、同社理事等を歴任した岡修一郎氏だ。1
 970年代に社団法人日本電子機械工業会(現在の電子情報技術産業協会)
 の安全委員会で初めてトライアングルの概念図が登場した。誤使用には「予
 見可能な誤使用」と「非常識な誤使用」(*2)とがあり、これらには「企業が
 確保すべき安全基準」と「使用者が注意すべき範囲」に加えて「消費者教育」
 が示されている。「予見可能な誤使用」と「非常識な誤使用」との境界は
 「常に変化している」と教えており、技術や製品の変化、住まいや使用環境
 の変化等に対応しなければならないことを促している。
 
◇トライアングルは、企業が確保すべき製品の安全性とは何か、多くの情報を
 盛り込んでいるが、シンプルにわかりやすくまとめられている。考案されて
 から30年以上経過しているが、その先進性は驚きとしかいいようがない。
 今や、家電業界だけでなく、色々な製品の安全設計を行う場合に活用されて
 いる。

◇考案者岡氏に関するエピソードはこればかりではない。今や世界のIEC規
 格、UL規格であるが、まだ国際規格として十分な評価が得られていない時
 代から、岡氏は電気用品の技術基準の検討に世界中を飛び回ったという。特
 に、米国消費者用製品安全法(CPSA)制定時、これを受けたUL規格の
 検討委員会(CPSSC)の記録に、岡氏は日本から通勤したとしてその活
 躍がたたえられたという。岡氏没後、関係者により、OKAトライアングル
 と命名され、PL法が成立前後にトライアングルが普及したという。2つの
 トライアングルは色あせることなくいつまでも使い続けられるに違いない。

 (*1)Vol.27 7月14日号参照 http://www.jiko.nite.go.jp/psm/
 (*2)消費生活用製品の誤使用事故防止ハンドブックでは「非常識な使用」。

                             (編集子)

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                目次 
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1.事故100選
    第10回「噴霧器の部品が使用者の顔面に直撃した事故」(前編)
2.事故情報 
   ・消費生活用製品の事故情報収集状況(10月2日~10月13日受付101件)
   ・電子レンジの事故
   ・事故情報収集制度対象外の事故(5件)
3.社告・リコール情報(3件)
4.NITEの製品安全情報
   ・平成17年度市場モニタリングテスト結果の公表
5.関係機関の製品安全情報
   ・ガス瞬間湯沸器による一酸化炭素中毒事故の再発防止について
    (第18報)                    経済産業省
   ・消費生活用製品安全法の一部を改正する法律案について 経済産業省
   ・ISO/IEC国際標準化セミナー      産業技術総合研究所
6.編集後記
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             1.事故100選
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 NITEや試験研究機関が事故原因究明をした事例に、その事故原因が安全
な製品を設計する上などで参考となる事例が多数存在します。これらの事例を
風化させてはならないと考え、当時の状況を事故100選としてご紹介するこ
とにしました。今回は、噴霧器の部品が使用者の顔面に直撃した事故の前編で
す。

   第10回「噴霧器の部品が使用者の顔面に直撃した事故」(前編)

◇2003年7月、庭で噴霧器を使用中、移動しようと噴霧器を肩にかけたと
 ころ、突然ハンドル部が飛び出して使用者の顔面を直撃。使用者は顎骨を骨
 折し、前歯を折損するなどの重傷を負った。

◇噴霧器は蓄圧式で、殺虫剤や除草剤の散布用として販売されているものであ
 る。筒状のタンクにホースが付いたもので、ホース先にあるノズルから薬液
 等を噴霧する。筒状のタンクは直径17.5cm、高さ46.5cm。ホースからノズル
 先までの長さは247cm。タンクに取りつけたベルトで肩にかけられるように
 なっている。タンク上部にはポンプキャップ(ふた)があり、その上に加圧
 用のハンドル(取っ手状)が付いている。薬液はハンドルをまわしてポンプ
 キャップを開けて入れる。このハンドルが顔面を直撃したのである。

◇薬液を入れた後、ハンドルをまわしてポンプキャップを閉め、自転車の空気
 入れの要領でハンドルを20~30回上下して加圧し、ハンドルをロックし
 て噴霧する。噴霧はホースとノズルの間にあるレバーを開閉することで行う。

◇事故品の製造時期は1997年で、4年前に購入し今回2回目の使用である。
 事故品には、タンク内圧力が一定以上になると加圧しないよう圧力安全弁装
 置が装着されていていた。使用者は加圧後、圧力安全弁装置の作動を確認し
 てから使用していた。なぜ、突然ハンドル部が飛び出したのだろうか。


   ☆前回までの記事はこちらです→ http://www.jiko.nite.go.jp/psm/ 

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              2.事故情報
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  ◆◆◇ 消費生活用製品(*)の事故情報収集状況 ◇◆◆ 
        (10月2日~10月13日受付101件)

 NITEに通知のあった事故の傾向を見るために、上記期間内で、収集件数
 の多い5製品を掲載しています。なお、事故原因については現在調査中です。
                 
     製品名(事故状況と件数)        [前号比(件数±)]
   =============================================================
   1.ガスこんろ           (火災等 16件)[+ 6]
   2.四輪自動車           (火災   7件)[+ 5]
   3.ゆたんぽ(電子レンジ加熱式)(*1) (破損等  6件)[- 3]
   4.照明器具            (火災等  4件)[+ 4]
   5.電子レンジ           (火災等  3件)[+ 3]
    .冷蔵庫             (火災   3件)[+ 1]
    .自転車             (破損等  3件)[- 2]
    .エアコン            (火災   3件)[- 2]

    (*1)経済産業省が消費生活用製品安全法第83条の規定に基づき発出
      した報告徴収を受けて報告があったもの。
    (*) 消費生活用製品:一般消費者が生活において使用する製品。

  ◆◆◇ 電子レンジの事故 ◇◆◆

 NITEに通知された消費者の誤使用、不注意による電子レンジの事故は、
電子レンジの庫内が食品で汚れたまま使用したり、設置場所が不適切だったり
した場合に発生しているものがあります。事例をご紹介いたします。ご使用の
際は、取扱説明書の注意事項をよくご覧ください。

◇庫内の汚れ
  ・電子レンジで加熱調理中、庫内から火が出て、導波管カバーの一部を
   焼損した。 
  ------------------------------------------------------------------
   →庫内の導波管カバー(マイカ板)とその周辺が焦げており、カバー
   に食品カス等の付着物と炭化が確認された。このことから、使用時に
   食品カスなどがカバーを汚し、付着した汚れがマイクロウェーブで局
   部的に加熱され、炭化・スパークし、火花が庫内壁面を焦がしたもの
   と推定される。なお、取扱説明書には「食品カスがついたまま使用し
   ない、汚れた場合はふき取る」旨の注意表示が記載してあった。

  ・電子レンジのオーブン機能で調理中に作動が途中で止まることがあり、
   調理に時間がかかっていた。異常と思いながらもその後にレンジ機能
   で使用していたところ、焦げ臭いにおいがしたので確認すると、電子
   レンジが燃えていたため、粉末消火器と水をかけて消火した。 
  ------------------------------------------------------------------
   →数年前から食品が温まらないことがあったが使用を続けていたので、
   事故以前からマイクロスイッチに不具合が発生していたとみられた。
   それに加え、庫内の汚れが著しいことから、食品カスや調理時に発生
   する蒸気、油、埃等がマイクロスイッチの接点部の接点劣化を加速さ
   せ、接点部の抵抗が増大し、発煙・発火したものと推定される。

◇設置状況
  ・きな臭いにおいが充満していたので調べたところ、電子レンジの電源
   が勝手に入り、外郭が熱くなっていたのであわてて電源プラグを抜い
   た。
  -----------------------------------------------------------------
   →電子レンジの自動トースター運転をスタートさせるタクトスイッチ
   の内部接点部分が腐食し、その接点材料が飛散し、不安定になったも
   ので、腐食の原因は、電子レンジの直下に置かれた炊飯器と電気ポッ
   トの蒸気が電子レンジの電装部に入り込み、多湿環境であったと推定
   される。なお、取扱説明書には「蒸気や水のかかるところに置かない」
   旨の注意表示を記載してあった。   

・・・‥‥…………………………………………………………………‥‥・・・

◆◆◇ 事故情報収集制度対象外の事故(10月2日~10月13日収集) ◇◆◆
       
◇居酒屋で無煙ロースターから出火(9/23 大阪府)
 居酒屋の客席付近から出火し、焼き肉の煙を吸い込む無煙ロースター1台が
焼け、客の男女6人が煙を吸って病院に運ばれた。警察では、焼き肉の火がロ
ースターの排気管内に付着していた油脂に引火したとみて調べている。

◇エレベーター内に閉じこめ2件(9/27 東京都 10/10 兵庫県)
 集合住宅でエレベーターのドアが開かず、住民ら3人が閉じ込められた(東
京都)。5階建て雑居ビルで、エレベーターが目的階を通り過ぎ、上の階との
間で停止し、女性と子供が閉じ込められた(兵庫県)。

◇エレベーターから発煙(10/3 愛知県)
 百貨店地下2階の工事中で稼動していない業務用エレベータードア付近から
煙が出た。警察では、地下1階と2階の間にたまったほこりがくすぶったとみ
て出火原因を調べている。

◇脱穀機の下敷きで死亡(10/4 佐賀県)
 男性が自走式脱穀機を押して棚田の間のあぜ道を上がる途中、バランスを崩
して水田に転落、脱穀機の下敷きになり死亡した。

◇農薬散布機の下敷きで死亡(10/9 北海道)
 牧草地で、男性が手押し式農薬散布機の下敷きになり、死亡した。警察では、
畑に向かう途中で転倒した男性に散布機が乗り上げたとみて原因を調べている。

■━━事故情報の検索━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
 
  NITEのHPでは、調査が終了した事故情報を検索できます。
  http://www.jiko.nite.go.jp/php/jiko/index.html

■━━製品の事故情報をお寄せください━━━━━━━━━━━━━━━━■

  NITEでは、暮らしの中で起こった製品の事故情報を集めて調査し、
 その結果を公表して製品事故の未然・再発防止に役立てています。
 
 【事故情報収集制度概要】 http://www.jiko.nite.go.jp/index2.html
 【通知様式】 http://www.jiko.nite.go.jp/index10.html(Word版・PDF版)
 【送付先】 mailto:jiko@nite.go.jp Fax 06-6946-7280
 【問い合わせ先】 mailto:jiko@nite.go.jp

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            3.社告・リコール情報
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◇平成18年8月30日 松下電工株式会社 「洗面化粧台」
 鏡扉は、上下2ヶ所の固定金具でキャビネット(収納戸棚)に取り付けられ
ており、この固定金具が磨耗することにより鏡扉がガタつき、ごくまれにキャ
ビネットから外れ、手前に倒れ掛かってくるおそれがある。
(注意喚起 ※この情報は製品欠陥等により製品回収や無償点検を行う社告
情報ではないが、情報を広く周知し未然防止を図るため提供する。 )
【詳細】 http://www.nite.go.jp/jiko/shakoku_index/20060830b.html

◇平成18年6月7日 スキューバプロ・アジア株式会社
 「スキューバダイビング用レギュレータ」
 製造過程において、指定していた材質以外の使用が認められ、時間の経過と
ともにボディ部の収縮劣化が早まり、カバーとダイヤフラムが脱落し使用不可
能になるおそれがある。 (無償で製品交換)
【詳細】 http://www.nite.go.jp/jiko/shakoku_index/20060607.html

◇平成16年10月25日 スキューバプロ・アジア株式会社
 「スキューバダイビング用アナログゲージ」
 残圧計高圧ホースの両端に設置された締め付け金具の、締め付け圧力の不具
合によりエア漏れが発生するおそれがある。
(無償で点検及び部品交換(残圧計高圧ホース))

■━━━NITE社告・リコール情報のページ━━━━━━━━━━━━━■

 【過去半年間の社告】 http://www.jiko.nite.go.jp/index4.html
 【社告の検索】 http://www.jiko.nite.go.jp/php/shakoku/search/index.php

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           4.NITEの製品安全情報
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  ◆◆◇ 平成17年度市場モニタリングテスト結果の公表 ◇◆◆

 NITEでは、市場から製品を買い上げ、製品の安全性及び品質を把握する
ための市場モニタリングテストを実施しています。
 平成17年度市場モニタリングテスト結果として「卓上スタンド用けい光灯
器具」、「バケツ」、「電気掃除機」及び「エアゾール製品(スプレー製品)」
を公表しました。

【詳細】 http://www.tech.nite.go.jp/monitor/index.html

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           5.関係機関の製品安全情報
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    ◆◆◇  ガス瞬間湯沸器による一酸化炭素中毒事故  ◇◆◆
    の再発防止について(第18報)

 経済産業省は、8月28日(月)に発出した緊急命令に基づき、10月6日
(金)、パロマ工業株式会社から9月末時点での対象機器の点検・回収の状況
報告を受け、点検・回収の状況をとりまとめ、公表いたしました。

【詳細】 http://www.meti.go.jp/press/20061006006/20061006006.html

 ◇◆◆ 消費生活用製品安全法の一部を改正する法律案について ◆◆◇
 
 経済産業省は、事故報告を製造事業者等に義務づけるため、現行法の改正案
である「消費生活用製品安全法の一部を改正する法律案」を平成18年10月
13日閣議決定し、第165回臨時国会に提出することを公表しました。

【詳細】 http://www.meti.go.jp/press/20061013001/20061013001.html

     ◇◆◆ ISO/IEC国際標準化セミナー  ◆◆◇

 独立行政法人産業技術総合研究所 産学官連携推進部門 工業標準部では、平
成18年度ISO/IEC国際標準化セミナーを開催します。今年度は、医療や
労働安全等の分野で必要としている、我が国の児童から高齢者の人体特性に係
る調査・研究に焦点を合わせた国際標準化セミナーのプログラムを組まれてい
ます。
  【日 時】平成18年11月15日(水)13:00~17:25
  【場 所】産業技術総合研究所 臨海副都心センター(東京都江東区)
  【参加費】無料
  【詳 細】申込方法等詳細は以下のアドレスを参照(締切10月31日)
 http://unit.aist.go.jp/collab-pro/indus-stan/seminar/18fyseminar.htm

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              6.編集後記
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 18日に東京で開催しました生活・福祉技術センター成果発表会にスタッフ
で参加しました。お越しいただきました方、ありがとうございます。受付や写
真撮影とうろうろしていました。帰りは、そのまま品川駅から新幹線で大阪に。
PSマガジン配信のため留守番中ですが、本日大阪会場で開催しております。

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        【編集・発行】 独立行政法人製品評価技術基盤機構
                生活・福祉技術センター 製品安全企画課

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独立行政法人製品評価技術基盤機構 製品安全センター  製品安全広報課
TEL:06-6612-2066  FAX:06-6612-1617
住所:〒559-0034 大阪市住之江区南港北1-22-16 地図