Vol.29  8月11日号「お風呂で子どもが溺れた事故(後編)」
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====================2006.8.11 Vol. 29===================
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│PSコラム│
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│ 製品安全と化学物質 │
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◇化学物質と言えば何を連想されるだろうか。新聞やテレビなどの報道に使わ
れる化学物質は、大気、河川などを汚染する可能性のある排気ガス・排水な
どに含まれるものを化学物質と呼んでいる場合が多いようだ。化学物質とい
うと危険なものというイメージがある。最近、NITEの化学物質管理セン
ターの担当から、化学物質の話を聴く機会があったので紹介する。
◇化学物質は、広辞苑では「物質のうち、特に化学の研究対象となるような物
質を区別していう語」となっており、理化学事典では「物質という一般用語
の中で、とくに化学的な立場で物質を取り扱う場合の用語」となっている。
◇担当に聴くと、化学物質はあらゆる物質の構成成分を指すのだそうだ。つま
り、我々の身のまわりにある全てのものは化学物質で構成されているという
ことだ。自然界に存在する水や窒素、酸素、食塩、あるいは発泡酒・ビール
に含まれるアルコール、人体を構成しているタンパク質も全てすべて化学物
質である。とはいえ、家電製品や燃焼器具も化学物質のかたまりだと言われ
てもピンとこないかもしれない。
◇現在、化学物質は天然物、研究・開発されているものを含め判明しているだ
けで数千万種類が存在しているらしい。工業的に製造され流通しているもの
は、実に10万種類にも達するのだそうだ。また、単純に「有害な化学物質」
と「無害な化学物質」に区別することはできないらしい。
◇「化学物質のリスクコミュニケーション」という言葉がよく使われる。関係
者(市民・行政・企業など)がコミュニケーション(対話)を通じて、リスク
に関する正確な情報を共有し、適正な管理を行うことによってリスクの低減
を目指す言葉だが、同じ「化学物質」という言葉を用いても、使う人や場所
で異なり、どれが正しいとは一概には言えないからこそ、必要なものだと感
じる。この目的で「化学物質と上手に付き合うには」(*)を公開しているの
で是非ご利用いただきたい。
ところで、製品安全も「製品のリスクコミュニケーション」という言葉が
ぴったりとくるように思うのだがいかがだろうか。事故情報などは関係者で
共有してこそ、安全な製品の開発に繋がるからだ。この言葉を普及させてみ
たい。
(*)「化学物質と上手に付き合うには」
http://www.safe.nite.go.jp/management/index.html
(編集子)
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目次
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1.事故100選
第7回「お風呂で子どもが溺れた事故(後編)」
2.事故情報
・消費生活用製品の事故情報収集状況(7月22日~8月4日受付91件)
・ベビーカーの車輪がグレーチングにはまった事故
・花火による事故
・事故情報収集制度対象外の事故(6件)
3.社告情報(2件)
4.関係機関の製品安全情報
・パロマ工業株式会社製瞬間湯沸器による一酸化炭素中毒事故の
再発防止について(第5報~第9報) 経済産業省
・第2回製品安全対策に係る総点検委員会の開催について 経済産業省
5.編集後記
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1.事故100選
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NITEや試験研究機関が事故原因究明をした事例に、その事故原因が安全
な製品を設計する上などで参考となる事例が多数存在します。これらの事例を
風化させてはならないと考え、当時の状況を事故100選としてご紹介するこ
とにしました。今回は、お風呂で子どもが溺れた事故の後編です。
第7回 お風呂で子どもが溺れた事故(後編)
1992年の事故では、製造事業者が吸込口カバーを改良品に交換した。し
かし2000年に他社製品で事故が起こる。NITEは現地に赴き再現テスト
を実施した。人毛と人工毛の2種類のかつらで毛髪の吸い込みや絡まりの状況
を調査したところ、人毛、人工毛にかかわらず、ジェット噴流の運転中、吸込
口付近に毛髪があると吸い込まれること、及び、吸い込まれると吸込口カバー
に絡みつき引き抜くことが困難な場合があることが確認された。吸い込まれた
毛髪は、吸込口カバー裏面のフィルター(金網)の隙間に入り込み、ほぐさな
ければ取れない状況になっていた。
2000年11月、ジェット噴流バス製造事業者十数社は、吸込口カバーの
無償交換を行う旨の社告を共同で実施した。交換品は、多数の細かい穴の開い
た吸込口カバーで吸込口の全面を覆うという改良がなされていた。12月には
ジェット噴流バス協議会も設立された。2001年10月末に同協議会で自主
基準を制定し、同年11月以降に製造する新製品について加盟各社は自主基準
に適合させることとした。
ところが、翌2002年11月、ジェット噴流機能がついた24時間風呂で、
女児がジェット噴流の吸込口に毛髪を吸い込まれて死亡する事故が起こった。
吸込口に毛髪がからみつき、抜けなかったためにおぼれたものと推定されたの
である。当該製品の製造事業者は既に倒産しており、同協議会にも加盟してい
なかった。
一連の状況を勘案し、消費生活用製品安全法が改正され、技術基準※が定め
られることになった。ジェット噴流バスや24時間風呂等の浴槽用温水循環器
が、同法の特別特定製品に指定されたのである。
※技術基準では以下が規定されている(概略)。
(1)6つの試験条件を満たした上、運転中に試験用毛髪を吸入口に吸い込
ませ、引き離す試験を30回実施し、いずれも20ニュートン以下で
引き離すことができなければならないこと。
(2)届出事業者の氏名又は名称及び国内登録検査機関又は外国登録検査機
関の氏名又は名称が容易に消えない方法により示されていること。
(3)吸入口に毛髪が吸い込まれるおそれがあるので注意すること、吸入口
のカバー等がゆるんだ状態又は外れた状態で運転しないこと、運転中
に浴槽内に潜らないこと、子供が入浴する際には十分注意することそ
の他安全に使用する上で必要となる使用上の注意事項の表示が、容易
に消えない方法により適切に付されていること。
〈参考〉「浴槽用温水循環器の規制について」
http://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/shouan/index.htm
☆前回までの記事はこちらです→ http://www.jiko.nite.go.jp/psm/
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2.事故情報
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◆◆◇ 消費生活用製品(*)の事故情報収集状況 ◇◆◆
(7月22日~8月4日受付91件)
NITEに通知のあった事故の傾向を見るために、上記期間内で、収集件数
の多い5製品を掲載しています。なお、事故原因については現在調査中です。
製品名(事故状況と件数) [前号比(件数±)]
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1. ガスこんろ (火災等 13件) [+ 8]
2. エアコン (火災等 7件) [+ 5]
3. 照明器具(蛍光灯)(*1)(破損 5件) [+ 5]
. いす(樹脂製) (*2)(破損 5件) [+ 4]
5. 扇風機 (火災等 4件) [+ 3]
. 四輪自動車 (火災 4件) [- 2]
(*) 消費生活用製品:一般消費者が生活において使用する製品。
(*1)(*2):社告回収、交換等の措置がとられている製品です。
◆◆◇ ベビーカーの車輪がグレーチングにはまった事故 ◇◆◆
◇まだ調査が終了していませんが、母親がベビーカーを押していたところ、グ
レーチングに車輪がはまり、乗っていた子どもといっしょに転倒して、負傷
する事故情報が、NITEに寄せられました。
◇グレーチングは、道路などの排水溝(側溝)にかける格子状の金属蓋です。
事故が起きたグレーチングの格子の内幅26mm、ベビーカーの車輪幅は16
mmでした。このことから車輪の一部がグレーチングにはまり、急にバランス
が崩れたために転倒し、事故に至ったものと推定されます。
◇最近は、このような事故を考慮した幅広の車輪のベビーカーも販売されてい
ます。また、ベビーカーや歩行補助車の車輪、女性の履いているハイヒール
がはまることなどを防止した、ユニバーサルデザインのグレーチングも開発
されています。しかし、現状では、グレーチングは様々な格子寸法のものが
使用されており、ベビーカーなど製品による対応だけでは難しい問題です。
グレーチングを通るときは、ご注意いただきますようお願いいたします。
◆◆◇ 花火による事故 ◇◆◆
花火の季節になりました。今回は、花火の事故事例をご紹介します。花火
の事故は、ちょっとした誤使用が大きな事故になる場合もあります。使用方
法や、注意事項をよく読んでから使用するよう、ご注意ください。
・木造平屋建ての作業場に火のついた花火が飛び込んで作業場内にあっ
た段ボールに引火し、壁などを焼いた。
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→事故品は外筒を地面に置いて点火し、点火後は外筒より離れて鑑賞す
る8連式の打ち上げ花火である。しかし、使用者が外筒を手で持って使
用したため、1発目の打ち上げに驚いた使用者が外筒を地面に落として
しまい、残りの発射分の内筒が横に飛んで倉庫内で爆発し、段ボールな
どに燃え移ったものと推定される。
・木造平屋住宅から出火し、全焼した。
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→近所の高校生が、縦に2つ重ねて箱に入っていた花火を、1つの花火
と思いこみ、箱に入れたまま上の花火の導火線を引っ張り出して火をつ
けた。そのため、不安定な状態で打ち上げられて花火が真上に上がらず、
近所の家の軒先に飛び、露出していた藁葺き部分に花火の火が燃え移り
火災に至ったものと推定される。
・木造住宅から出火して、男性1人が死亡した。
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→男性たちが、可燃物の多い室内で花火をしていたため、火災に至った
と推定している。
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◆◆◇ 事故情報収集制度対象外の事故 ◇◆◆
◇『滑り台で幼児が足の小指を切る』(6/11 青森県)
公園の滑り台で、子供が左足の小指を切り、全治1か月のけがを負った。市
では、滑り台の手すりに両足を乗せて遊んでいたところ、手すりの腐食ででき
た穴に、小指を引っかけたとみている。
◇『高速道路でトラックが炎上』(7/14 福岡県)
高速道路で、走行中のトラックの後部付近から煙が上がり、全焼した。
◇『高速道路でトレーラーの左後輪が炎上』(7/18 奈良県)
高速道路の側道で、走行中の大型トレーラーの左後輪が突然炎上し、タイヤ
2本と積み荷の一部を焼いた。
◇『エレベーターの事故3件』(7/27 東京都、7/29 京都府)
ビルの同じエレベーターで閉じこめられる事故が同日に2件発生(東京都)、
ホテルのエレベーターで客10人が閉じこめられる事故1件発生(京都府)。
◇『遊園地の舟形遊具に挟まれ骨折』(7/29 兵庫県)
遊園地で、男性が前後に揺れる仕組みの舟形の遊具と乗車ホームとの間に左
足を挟まれ骨折した。警察では、男性が動き出した直後に怖くなり、座席前に
下がっていた安全バーをすり抜け、飛び降りようとしたことが原因とみて調べ
ている。
◇『流水プールで小学生が吸水口に吸い込まれ死亡』(7/31 埼玉県)
流水プールで、女児がプールの側面にある吸水口から配管に吸い込まれ死亡
した。警察では、吸水口に取り付けてあった格子状のアルミ製の柵が1枚外れ
ており、頭から吸い込まれたとみて調べている。
■━━事故情報の検索━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
NITEのHPでは、調査が終了した事故情報を検索できます。
http://www.jiko.nite.go.jp/php/jiko/index.html
■━━製品の事故情報をお寄せください━━━━━━━━━━━━━━━━■
NITEでは、暮らしの中で起こった製品の事故情報を集めて調査し、
その結果を公表して製品事故の未然・再発防止に役立てています。
【事故情報収集制度概要】 http://www.jiko.nite.go.jp/index2.html
【通知様式】 http://www.jiko.nite.go.jp/index10.html(Word版・PDF版)
【送付先】 mailto:jiko@nite.go.jp Fax 06-6946-7280
【問い合わせ先】 mailto:jiko@nite.go.jp
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3.社告情報
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◇平成18年7月15日 パロマ工業株式会社 「ガス給湯器」
正常な状態の製品では使用中に排気ガスを屋外に排出するための排気が正常
に行われない場合に自動的に製品の燃焼を停止する安全装置が働くが、何らか
の理由で安全装置が働いた場合にも無理に運転しようとして、改造が行われた
ために、一酸化炭素中毒による死亡事故が起きている。(無償で点検)
【詳細】 http://www.nite.go.jp/jiko/shakoku_index/20060715b.html
◇平成18年7月19日 パロマ工業株式会社/株式会社パロマ
「ガス給湯器(再社告)」
安全装置が正常に作動せず事故にいたる可能性があることが判明した。
(平成18年7月15日に行った社告の再社告)(無償で点検及び修理・回収)
【詳細】 http://www.nite.go.jp/jiko/shakoku_index/20060719a.html
■━━━NITE社告情報のページ━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
【過去半年間の社告】 http://www.jiko.nite.go.jp/index4.html
【社告の検索】 http://www.jiko.nite.go.jp/php/shakoku/search/index.php
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4.関係機関の製品安全情報
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◆◆◇ パロマ工業株式会社製瞬間湯沸器による一酸化炭素 ◇◆◆
中毒事故の再発防止について(第5報~第9報)
経済産業省は、パロマ工業株式会社製の半密閉式瞬間湯沸器による一酸化炭
素中毒事故の再発防止策について、7月28日(金)、8月1日(火)、4日(金)、
8日(火)、10日(木)に、点検作業の進捗状況などを公表しました。
【詳細】
http://www.meti.go.jp/press/20060728001/20060728001.html(第5報)
http://www.meti.go.jp/press/20060801003/20060801003.html(第6報)
http://www.meti.go.jp/press/20060804004/20060804004.html(第7報)
http://www.meti.go.jp/press/20060808004/20060808004.html(第8報)
http://www.meti.go.jp/press/20060810001/20060810001.html(第9報)
◆◆◇ 第2回製品安全対策に係る総点検委員会の開催について ◇◆◆
経済産業省では、7月28日に、大臣官房長を委員長とする局長級の「製品
安全対策に係る総点検委員会」の第2回委員会を開催いたしました。
【詳細】 http://www.meti.go.jp/topic/data/e60731aj.html
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5.編集後記
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今号でご紹介したグレーチングを通っていた時の事故。皆さまもヒヤッとし
た経験はありませんか? 以前、雨あがりに自転車で走っているとき、対向車
がきてあわてて自転車を脇に寄せたら、道路の側溝のグレーチングでスリップ
しそうになって、ヒヤっとしたことがあります。以来、避けて通るようにして
いますが、スリップをしないように配慮したグレーチングも製造されているよ
うなので、もしかしたらもうスリップをしないのかもしれないですね。
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【編集・発行】 独立行政法人製品評価技術基盤機構
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