Vol.27  7月14日号「調理中の鍋が飛び上がった事故(後編)」
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====================2006.7.14 Vol. 27===================
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│PSコラム│
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│ 非常識な使用 │
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◇NITEが、よく受ける質問で「非常識な使用」に関するものがある。
「『非常識な使用』を防止するために製品側で対応した例について知りたい」
「『非常識な使用』についても事業者が対応しなければいけないのか」とい
ったものだ。安全な製品を考える者にとって、「非常識な使用」は頭を悩ま
せるものらしい。
◇「非常識な使用」は、誤使用事故防止ハンドブックに、「事業者だけでなく、
一般常識を持つ消費者にとっても理解・納得できる誤使用」と定義されてい
る。一般的に、誰もが誤った使い方(誤使用)だと判断する使い方である。
「非常識な使用」にはどんなものがあるか話し合った。
◇「猫を洗いレンジで乾かす」。米国のPLを知る上であまりにも有名な話だ
が、これは「非常識な使用」の分類に入るだろうということで一致した。出
てきた例は次のようなものだ。もし読者の中で、これは誤使用ではないだろ
うというものがあれば、「一般常識のあるだれもが誤使用と認識する使用方
法」という条件には合致しないこととなり、「非常識な使用」とはいえなく
なるのだが・・・どうお考えだろう。
・シンナーやガスを吸う。 ・包丁で人を刺す。
・酔払い運転をする。 ・ストーブで洗濯物を乾かす。
・耐震消火装置をもったストーブを蹴飛ばし消火する。
定義の上では簡単に思えるが、包丁で人を刺すなどの極端な例以外で実際に
誰もが納得できる「非常識な使用」の例をあげるのはなかなか難しい。
◇「非常識な使用」の範囲は、その製品が使われる環境、使用対象者、時代背
景などで大きく変わってくる。子どもが使うことを想定した製品などにおい
ては、「非常識な使用」などありえないのかもしれない。「非常識な使用」
を考えながら、極端な例しか思いつかないのは、もしかして「非常識な使用」
がそれほど存在しないのか、それとも、事故情報を知りすぎているのか。い
ずれにしても、難題である。
(編集子)
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目次
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1.事故100選
第6回「調理中の鍋が飛び上がった事故(後編)」
2.事故情報
・消費生活用製品の事故情報収集状況(6月26日~7月7日受付78件)
・小動物や虫による事故
・昨年8月に発生した事故の傾向
・消費生活用製品以外の事故(7件)
3.社告情報(4件)
4.関係機関の製品安全情報
・電気式浴室換気乾燥暖房機の電源電線接続部の点検指示について
経済産業省
・近畿地域における検査機器貸出場所の拡大について 経済産業省
5.編集後記
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1.事故100選
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NITEや試験研究機関が事故原因究明をした事例に、その事故原因が安全
な製品を設計する上などで参考となる事例が多数存在します。これらの事例を
風化させてはならないと考え、当時の状況を事故100選としてご紹介するこ
とにしました。今回は調理中の鍋が突然天井まで飛び上がった事故の後編です。
第6回 調理中の鍋が飛び上がった事故(後編)
◇内鍋が外鍋から剥がれて飛び上がっていたことから、空気層内の圧力の異常
上昇が疑われた。異常な圧力の上昇で、鍋底部の融着部が剥離して内鍋の底
が盛り上がったり、鍋が破裂して内鍋と外鍋とが分離し、内鍋が飛び上がっ
たりという現象が起こったものと想定された。しかし、なぜ圧力の異常な上
昇が起こったのか。
◇事故品の調査で、外鍋と内鍋の空気層面に、外鍋の底から約4cmの位置ま
で変色が確認され、この変色部分が空気層内に入っていた水の量(約134
ml)に相当するものと推定した。このことから、空気層内の圧力が異常上
昇したのは、なんらかの状況でフチ巻き部のすき間から空気層内に水が入り、
その水が調理時の加熱により水蒸気になったことが原因であろうと想定した。
◇これをうけて、同型の使用品と未使用品100個(有効サンプル92個)で、
事故と同様の現象が起こるのかについてテストを実施した。
1.サンプル調査でフチ巻き部のすき間の程度にばらつきのあることが判明
した。これは手作業で製造されていたことが要因と思われる。そのため、
すき間の程度を大中小に分類し、空気層内へ水を注入した場合としない場
合のそれぞれについて、煮炊き物を想定した「水張り状態」と炒め物調理
の余熱を想定した「空だき状態」で再現テストを実施。
2.内鍋が飛び上がる現象は、すき間の程度が「小」で、空気層内に水を注
入し、空だき状態で加熱した場合にのみ再現された。
3.空気層内に水が入った状態で事故現象が再現されたため、すき間の程度
「小」の場合に水が侵入するのかについて、鍋を調理に使用した後すぐに
洗い桶に浸けるという場面を想定した加熱直後の鍋と、加熱していない鍋
を、フチ巻き部が水に浸かるように水槽につけ調査を行った。調査の結果、
水の侵入は、加熱した鍋を水につけた場合に起こることが判明した。これ
は、加熱した鍋を熱い状態で水につけることで空気層が冷やされて減圧状
態になり、加熱していない鍋よりも水が侵入し易くなったものと考えられ
た。しかも、空気層に侵入した水は、容易には抜けなかった。
◇以上のことから、フチ巻き部のすき間の程度が比較的小さい鍋の場合、空気
層に水が侵入すると、排出される水蒸気量が少ないため圧力が上昇し、事故
に至る可能性があると推定された。事故は以下の条件が複合して起こったも
のと推定される。
・日常の使用で空気層に水がはいったこと。
・揚げ物、炒め物など、内容物が少ない、鍋の温度が上がりやすい
調理を行ったこと
・使用した鍋のすき間の程度が比較的少ないものであったこと
◇輸入事業者は事故後、当該製品を回収・交換し、その後の製造は、フチ巻き
部のすき間から水が入らないように改良を行ったが、この製品でも事故が起
こったため、水が入らないよう溶接した構造に改良した。
☆前回までの記事はこちらです→ http://www.jiko.nite.go.jp/psm/
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2.事故情報
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◆◆◇ 消費生活用製品(*)の事故情報収集状況 ◇◆◆
(6月26日~7月7日受付78件)
NITEに通知のあった事故の傾向を見るために、上記期間内で、収集件数
の多い5製品を掲載しています。なお、事故原因については現在調査中です。
製品名(事故状況と件数) [前号比(件数±)]
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1. ガスこんろ (火災等 10件) [- 5]
2. 直流電源装置(*1) (火災 7件) [+ 7]
3. 屋内配線 (火災 4件) [+ 3]
4. エアコン (火災 3件) [+ 1]
. 四輪自動車 (火災 3件) [- 5]
(*) 消費生活用製品:一般消費者が生活において使用する製品。
(*1) 直流電源装置は、社告回収措置が取られている製品です。
◆◆◇ 小動物や虫による事故 ◇◆◆
◇前号は「ペットによる事故」で、犬が電源コードを噛んだ事故などをご紹介
しましたが、ペット以外の小動物や虫によって、思いもよらず起こってしま
う事故もあります。事例をご紹介します。製品側で、制御基板内に虫などが
入らないような設計を施したり対応をされている場合もありますが、害虫な
どが入らないよう清潔に保つなど、ご注意ください。
【ヤモリ】
・エアコンのスイッチを入れたところ作動しなかったため、室外機を確
認したところ、熱溶解によって外郭に穴が空いていた。
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→制御基板のパターン面にヤモリの死骸が確認され、その部分が著しく
焼損していたことから、制御基板のパターン面に侵入したヤモリを介
して電気回路が形成され、異常過熱して外郭を焼損したものと推定さ
れる。
【ゴキブリ】
・システムキッチン用ガスこんろのそばにあるガス漏れ警報機が鳴った
ので駆けつけたところ、ガスの臭いがした。気が動転してレンジのガ
ス栓を操作したところ、バーナーが着火し、グリルの排気口から炎が
30cm上がった。また、こんろの下段のオーブン庫内のファン部に
炎が確認された。
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→器具制御基板内でガス電磁弁の電気回路がゴキブリにより一時的に短
絡したため、電磁弁に電気が流れ、電磁弁が「開」になりガスが放出
し、被害者の点火操作により引火したものと推定される。
【蜘蛛】
・ふろがまの追い炊きタイマーが故障し、リモコンワイヤー等を焼損し
た。
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→ふろバーナー内に蜘蛛の巣が張っていたため、ガスの流れが妨げられ、
バーナー管の空気吸い込み口から炎が溢れ、バーナーケース内のリモ
コンワイヤー及び配線被覆の一部が焼損したものと推定される。
【ネズミ】
・テレビの電源を入れてしばらくしたところ、テレビから煙と炎が出た。
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→テレビの回路には異常は認められず、キャビネットの天面部と底板部
にネズミの糞と体毛が確認され、電源コードの被覆に噛み痕が認めら
れたことから、ネズミが電源コードをかじって被覆がはがれ、糞・尿
等の介在により、コード異極間でトラッキング現象が発生し、バック
カバーに着火、延焼したものと推定される。
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◆◆◇ 昨年8月に発生した事故の傾向 ◇◆◆
NITEが収集した平成17年8月発生の事故情報は、155件中58件
(約37%)が『家庭用電気製品』の事故でした。その次に『燃焼器具』48
件(約31%)、『乗物・乗物用品』25件(約16%)でした。品名別では、
ガスこんろが36件と多く収集されています。中に、石油ストーブによる事故
が1件ありました。真夏にストーブ?と思われるかもしれませんが、雨などで
洗濯物が乾きにくいときに、暖房器具を乾燥目的に使用するケースがあるよう
です。この事故は、石油ストーブの上に干していた洗濯物がストーブに落下し
たため着火し、火災に至ったものでした。昨年の6月~7月に発生した、石油
ストーブなどで洗濯物を乾かしていて火災に至った事故は5件収集されていま
す。今回(6月26日~7月7日)収集した事故情報の中にも、まだ調査中ですが、
同様のケースと思われる事故が2件ありました。
◆◆◇ 消費生活用製品以外の事故でこんな事故がありました ◇◆◆
◇『エレベーターの事故14件』(2001年5月~2006年7月)
エレベーターに閉じこめられた、上下にずれて停止したなど、各地で起こっ
ていた。
◇『工場3棟全焼』(6/8 福井県)
工場から出火して、木造2階建ての工場3棟、計約1200平方メートルを
全焼し、隣家2棟も半焼した。警察では、ボイラー付近から炎が上がっていた
とのことから出火原因を調べている。
◇『送風ダクトが落下』(6/12 島根県)
健康増進施設の天井につり下げてあった送風ダクトの取り付け金具が壊れ、
ダクトが約10m下のプールサイドに落下した。市では、運転時の振動による
金具の金属疲労が落下の原因とみている。
◇『回転遊具倒れ児童4人が軽傷』(6/24 石川県)
児童公園で、回転式遊具の鉄製軸が突然根元部分から折れ、遊具に乗って遊
んでいた小学生6人が投げ出されて、うち4人が頭や左足を打つなどの軽傷を
負った。警察では、軸の根元が腐食し回転中に折れたとみている。
◇『スキー場のリフトが落下し、2名が重軽傷』(6/25 群馬県)
スキー場で、リフトを支える鉄パイプが折れ、リフト1基が落下し、乗客1
人が腰の骨を折る重傷を負い、1人が軽傷を負った。
◇『パラグライダーが操縦不能で墜落』(7/2 愛知県)
海岸上空をモーターパラグライダーで飛行していた男性が、操縦不能になり、
沖合方向に飛ばされて海上で発見されたが、死亡した。
◇『男児がエスカレーターで頭を挟まれ重体』(7/4 福岡県)
商業施設の1階から2階へ上るエスカレーターの手すりから身を乗り出して
遊んでいた男児が、1階の天井と手すりの間に頭などを挟まれ、重体になった。
■━━事故情報の検索━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
NITEのHPでは、調査が終了した事故情報を検索できます。
http://www.jiko.nite.go.jp/php/jiko/index.html
■━━製品の事故情報をお寄せください━━━━━━━━━━━━━━━━■
NITEでは、暮らしの中で起こった製品の事故情報を集めて調査し、
その結果を公表して製品事故の未然・再発防止に役立てています。
【事故情報収集制度概要】 http://www.jiko.nite.go.jp/index2.html
【通知様式】 http://www.jiko.nite.go.jp/index10.html(Word版・PDF版)
【送付先】 mailto:jiko@nite.go.jp Fax 06-6946-7280
【問い合わせ先】 mailto:jiko@nite.go.jp
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3.社告情報
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◇平成18年4月6日 プラザスタイル株式会社(販売)、
カメイ・プロアクト株式会社(輸入) 「水筒」
キャップ部分の不具合により中身が漏れる恐れのあるものが混入していたこ
とが判明した。(製品回収)
【詳細】 http://www.nite.go.jp/jiko/shakoku_index/20060406.html
◇平成18年5月10日 株式会社赤ちゃん本舗 「スカート」
ファスナーの一部から突起が出ているという不具合のある商品が混入してい
ることが判明した。(製品回収(不具合品のみ))
【詳細】 http://www.nite.go.jp/jiko/shakoku_index/20060510b.html
◇平成18年6月20日 日立アプライアンス株式会社
「電気生ごみ処理機(再社告)」
処理槽からの液漏れにより、ごく稀にヒータが劣化した場合、発煙発火する
可能性のある事が判明した。(平成16年11月4日に行った社告の再社告)
(無償で修理交換)
【詳細】 http://www.nite.go.jp/jiko/shakoku_index/20060620.html
◇平成18年6月27日 株式会社デノンコンシューマーマーケティング
「AVラック」
使用している強化ガラスの一部に不具合があり、まれに自然破壊する恐れが
あることが判明した。(無償で部品交換(強化ガラス))
【詳細】 http://www.nite.go.jp/jiko/shakoku_index/20060627.html
■━━━NITE社告情報のページ━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
【過去半年間の社告】 http://www.jiko.nite.go.jp/index4.html
【社告の検索】 http://www.jiko.nite.go.jp/php/shakoku/search/index.php
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4.関係機関の製品安全情報
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◆◆◇ 電気式浴室換気乾燥暖房機の ◇◆◆
電源電線接続部の点検要請について
経済産業省では、電気式浴室換気乾燥暖房機の一部で、電源電線の接続工事
が不適切に行われていたと推定される焼損事故について、特定の機器の使用者
に対して、点検の依頼をすることと点検が終了するまでは使用を控えていただ
くことの注意喚起をするとともに、施工業者等に対して早急に点検と必要な改
修を行うよう要請しました。また、機器のメーカーに対して相談窓口を設置す
るよう協力要請を行いました。
【詳細】 http://www.meti.go.jp/press/20060630003/20060630003.html
◆◆◇ 近畿地域における検査機器貸出場所の拡大について ◇◆◆
(電気用品安全法の経過措置の一部終了に伴う対策の実施)
経済産業省では、近畿地域における絶縁耐力検査機器の無料貸出の拠点を、
現在、既に検査機器の貸出しを行っている財団法人電気安全環境研究所及び財
団法人北陸電気保安協会福井支部に加えて、和歌山県工業技術センター、及び
財団法人関西電気保安協会6支部(大阪南支部、京都支部、奈良支部、滋賀支
部、和歌山支部、姫路支部)に拡大しました。
【詳細】 http://www.meti.go.jp/press/20060704003/20060704003.html
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5.編集後記
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今回事故100選でご紹介した鍋が飛び上がる事故の再現テスト、実験室か
ら「パーン」と音が響いていたのを思い出します。当時、実験室には変形した
鍋などが並んでいました。担当者によると、ガスこんろの五徳が外れて、天板
が凹むくらいの衝撃があったそうです。
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