Vol.26  6月30日号「調理中の鍋が飛び上がった事故(前編)」
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====================2006.6.30 Vol. 26===================
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│PSコラム│
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│ 海外では │
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◇製品安全でも国際的な連携を図る必要があるとのことから、海外の関係機関
との会合や製品安全に関する国際会議への参加で、海外へ行くことが多くな
った。海外を訪問した際、安全の視点でながめてみると、あらためて気がつ
くことがある。そんな話をご紹介したい。
◇製品を安全に使うためには、間違った使い方ができないような工夫をするこ
ともひとつのアプローチである。読者のみなさんは、ドアの前に立ったとき、
押すのか引くのか一瞬迷うことはないだろうか。「押」「引」との表示があ
る場合でもなかなか気づかないことがある。もし、ドアに取っ手がなければ
どうだろう。誰もがドアを押して出るのではないだろうか。アメリカで泊ま
ったホテルのロビーでトイレから出るときの話である。安全とは直結してい
ないかもしれないが、間違った使い方をさせないという意味ではなるほどと
感心させられるものである。
◇欧米では、子どもの安全については日本以上に配慮されていると感じること
がある。消費者安全を管轄する機関のホームページには、子どもが扱う製品
についてのリコール情報や注意喚起文書が毎日のように掲載されている。例
えば、「ぬいぐるみの鼻が取れやすく、取れると誤飲した場合に窒息の可能
性がある」「おもちゃを落として壊れたとき鋭角な破片ができる」「服のジ
ッパーが外れやすく、誤飲した場合に吸引や窒息の可能性がある」などの理
由でリコールされているのだ。最近、小さな子どもの興味を引くもの(サッ
カーボールやミニチュアの自動車や動物など)に似せたライターのリコール
が多い。たしかにこれは危ないと納得させられることもしばしばである。
◇製品に限ったことではない。子どもの生活環境についてもいえる。日本でも
公園遊具の事故が立て続けに起こったことから、公園遊具の点検、構造の見
直しなどの動きがあるのはご存じだろう。それは海外も同じである。日本と
少し異なっているのは、遊具そのものではなく、遊具を設置する環境への配
慮である。ブランコや滑り台などから誤って落ちることはないか、落ちたら
どうするか。ベルギーでは、子どもが頭から落ちて大けがになることのない
よう、落ちる可能性のある範囲が、周りの土とは違う材料で埋められていた。
クッションを敷いたような柔らさではない。落ち葉を敷き詰めたような適度
な弾力があり、普通に歩けるが、踏みつけるとふわっと受け止める感じだ。
◇日本とは違う欧米の実態を目のあたりにすることで、安全の範囲がいかに広
いかを再認識した次第である。
(編集子)
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目次
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1.事故100選
第6回「調理中の鍋が飛び上がった事故(前編)」
2.事故情報
・消費生活用製品の事故情報収集状況(6月12日~6月23日受付70件)
・ペットによる事故
・消費生活用製品以外の事故(7件)
3.社告情報(3件)
4.NITEの製品安全情報
・平成18年度第2回事故動向等解析専門委員会を開催
5.編集後記
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1.事故100選
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NITEや試験研究機関が事故原因究明をした事例に、その事故原因が安全
な製品を設計する上などで参考となる事例が多数存在します。これらの事例を
風化させてはならないと考え、当時の状況を事故100選としてご紹介するこ
とにしました。今回は、調理中の鍋が突然天井まで飛び上がった事故です。
第6回 調理中の鍋が飛び上がった事故(前編)
◇「天ぷらを作ろうと鍋に6割程度の油を入れて加熱していたところ、2、3
分後、鍋が破裂し飛び上がった。鍋は天井に当たって2カ所に穴があき、あ
たり一面が油で汚れた」(2001年2月)、「肉を焼こうとして弱火で鍋
を温めていたところ、鍋が飛んで換気扇に当たって跳ね返り、頭に当たって
むち打ち症になった」(2001年5月)。調理中の鍋が突然飛び上がる、
そんな事故情報がNITEに寄せられた。
◇鍋はステンレス製の輸入品で、「火からおろしても、高い保温力でとろ火に
かけたように煮込むことができる」と、保温性の高さがセールスポイント。
保温性を高めるため、側面に空気層がある二重構造になっていた。つまり、
内径の異なる内鍋と外鍋によって形成されており、内鍋と外鍋は底部で融着
(*1)、鍋上端部をフチ巻き(*2)にし、側面に空気層を設けて、空気の熱伝導
率が小さい(水の約30分の1)ことを利用し、保温性を高めようとしたの
である。同じ原理を利用したものに、住宅などに断熱性が高いガラスとして
使用されるペアガラス(複層ガラス)がある。
◇鍋が調理中に突然飛び上がる。被害者にとってかなり驚くべき事態である。
いったい何が起こったのだろうか。前出の事故はいずれも内鍋が外鍋から剥
がれて飛んでいた。天井や換気扇にまで飛び上がるほどの力が発生したのは
なぜだろうか。
(*1)融着とは、融点の低い金属でできた融着プレートを内鍋と外鍋の間に
挟み、融着プレートの融点に近い温度まで加熱し、圧力を加えて内鍋
と外鍋の底部を接着する加工をいう。
(*2)フチ巻とは内鍋上端部を外側へ折り曲げて外鍋上端部を巻き込み、端
部を閉じる加工をいう。
☆前回までの記事はこちらです→ http://www.jiko.nite.go.jp/psm/
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2.事故情報
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◆◆◇ 消費生活用製品(*)の事故情報収集状況 ◇◆◆
(6月12日~6月23日受付70件)
NITEに通知のあった事故の傾向を見るために、上記期間内で、収集件数
の多い5製品を掲載しています。なお、事故原因については現在調査中です。
製品名(事故状況と件数) [前号比(件数±)]
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1. ガスこんろ (火災等 15件) [- 5]
2. 四輪自動車 (火災等 8件) [+ 2]
3. 冷蔵庫 (火災 4件) [+ 4]
4. 照明器具 (破損 3件) [+ 3]
. ライター (火災等 3件) [± 0]
(*)消費生活用製品:一般消費者が生活において使用する製品。
◆◆◇ ペットによる事故 ◇◆◆
◇昨今はペットブームで、犬や猫を室内で飼育されるご家庭が増えていると聞
きます。NITEに通知のあるペットに関連した事故は、大きく分けると、
「ペット用品(首輪やペット用ヒーターなど)による事故」、「ペットが原
因になる事故」があります。今回はペットが原因で起こってしまった事故に
ついてご紹介します。
◇ペットが原因で起こってしまった事故は、飼い主が不在の時や気づかない時
に、ペットが、製品に尿をかけたり、飛び乗って電源を入れたり、コード類
を噛んだりなどすることで事故に至るものがあります。また、飼い主が、ペ
ットのために意図して電気ストーブや石油ストーブをつけたまま外出したり、
これらの製品をペット専用に使用したりして起こる事故もあります。
◇ペットがいるご家庭では、外出など目が届かない時は、出火の危険性のある
製品などはなるべくペットが接触できないところに置き、ペットが触れる可
能性のある場合は、つけたままにしない、電源コードをコンセントから抜く、
チャイルドロックを設定するなど、飼っているペットの習性なども考慮して、
くれぐれもご注意ください。
……事例………………………………………………………………………………
【毛や尿】
・セラミックファンヒーターの電源を入れたところ、10分後に大きな
音とともに、吹き出し口から火が出た。
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→セラミックファンヒーターに使用されている半導体発熱素子(PTC)
12個のうち、1個の耐電圧が低下し、絶縁破壊によりスパークが発
生したものである。これは、電源コードとPTC周辺からペットの毛
が検出されていること、絶縁破壊を起こしていたPTCからアンモニ
アや塩素が検出されていることから、ペットの尿などが原因と推定さ
れる。
その他に、ガス湯沸器のお湯で犬を洗っていて、抜け毛が湯沸器の空気
孔を塞いで不完全燃焼を起こした事故や、尿がかかった充電器が発火した
事故があります。
【噛んだ、引っ掻いた】
・電気毛布のプラグをコンセントに差した状態で、電源を切っていたと
ころ、電気毛布付近から出火し、家屋を焼損して家人が火傷を負った。
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→室内で犬が飼われており、事故品の電源コードに犬の噛み傷とみられ
る痕があったことから、犬がコードを噛んだことによりコードが傷み、
スパークが発生して出火したものと推定される。
その他に、電気カーペットで猫が爪研ぎをしてヒーターなどがショート
した事故や、犬がエアコンの室内機と室外機の接続配線を噛んで、室内機
から発煙した事故があります。
【接触】
・集合住宅から出火し、室内など約30平方メートルを焼いた。
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→電気ストーブのコードが差し込まれた状態で置いていたところ、飼い
猫がストーブの上に飛び乗りスイッチが入り、上に吊していた衣類に
引火したものと推定される。なお、スイッチの形状は上部で押すタイ
プであった。
【飼い主の目の届かない】
・プレハブ製犬舎から出火し、約15平方メートルと母屋の一部を焼き、
飼い犬15匹が焼け死んだ。
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→犬舎内で、石油ストーブを点けたままにしていたため、犬が動き回っ
て、床に敷き詰めていた新聞紙が石油ストーブに接触し、出火したも
のと推定される。
他にも、石油ストーブの前に、子犬を座布団をかけて置いて外出し、
子犬が動いて座布団がストーブに近づき、過熱して火災になった事故が
あります。
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◆◆◇ 消費生活用製品以外の事故でこんな事故がありました ◇◆◆
◇『エレベーターの事故19件』(2002年10月~2006年6月)
エレベーターに閉じこめられた、扉が開いたまま降下、上にずれて停止、停
止階に止まらなかったなど、各地で起こっていた(不具合も含む)。
◇『ロープウエーが地上約25mで扉を開いたまま停止』(6/11 山口県)
運転中のローブウエーのゴンドラ扉が開き、地上約25mで約1分停止した。
扉は出発前に遠隔操作で閉めたが、係員は扉が完全に閉まっていないことに気
づきながら非常停止の措置をとらなかった。市では、扉を閉めた直後に誤って
扉の開くボタンに手があたるなどしたとみている。
◇『図書館のベランダから化粧板が落下』(6/14 富山県)
図書館で、2階ベランダから縦138cm、横72cm、厚さ3cmの人工
大理石製の化粧板4枚がはがれて落下し、一部が下に駐車していた乗用車の屋
根にあたり、直径約50cmの穴が開いた。
◇『銭湯のコインランドリーから出火』(6/15 東京都)
木造2階建て浴場兼住宅から出火して、約470平方メートルを全焼し、男
性がのどなどに軽い火傷を負った。警察では、併設されているコインランドリ
ー内の乾燥機から出火したとみて原因を調べている。
◇『軽飛行機が民家の壁に衝突』(6/16 大阪府)
専門学校の実習場で、整備訓練中の軽飛行機が突然動き出して隣家の壁に衝
突し、乗っていた教官と実習生の計3人が顔や足に軽いけがを負った。
◇『電動扉に挟まれ子どもが死亡』(6/19 佐賀県)
会社で子どもが電動式の高さ約1.4m、長さ10mの鉄製門扉と門柱の間
に頭などを挟まれ死亡した。警察では、門扉の横についているスイッチを操作
し、扉を開け閉めして、閉まる直前にすり抜ける遊びをしていて挟まったとみ
て調べている。
◇『洋菓子店で一酸化炭素中毒』(6/21 東京都)
洋菓子店で、8人が一酸化炭素中毒で病院に搬送され、うち一人が重症とな
った。警察では、業務用オーブンが不完全燃焼を起こし、一酸化炭素が大量に
発生したとみて調べている。
■━━事故情報の検索━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
NITEのHPでは、調査が終了した事故情報を検索できます。
http://www.jiko.nite.go.jp/php/jiko/index.html
■━━製品の事故情報をお寄せください━━━━━━━━━━━━━━━━■
NITEでは、暮らしの中で起こった製品の事故情報を集めて調査し、
その結果を公表して製品事故の未然・再発防止に役立てています。
【事故情報収集制度概要】 http://www.jiko.nite.go.jp/index2.html
【通知様式】 http://www.jiko.nite.go.jp/index10.html(Word版・PDF版)
【送付先】 mailto:jiko@nite.go.jp Fax 06-6946-7280
【問い合わせ先】 mailto:jiko@nite.go.jp
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3.社告情報
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◇平成18年3月29日 日本電気硝子株式会社 「太陽熱温水器」
長期使用や厳冬期の凍結等によりガラス管が破損し、極めてまれに破損した
ガラスが屋根から落下する可能性があることが判明した。 (安全対策の実施)
【詳細】 http://www.nite.go.jp/jiko/shakoku_index/20060329b.html
◇平成18年6月16日 旭テクノグラス株式会社/
株式会社岩城ハウスウェア 「耐熱ガラスポット」
誤って「電子レンジ用」と本体ガラス部に印刷・表示されたものが混入した
ことが判明した。該当製品を電子レンジで使用すると、金属バンド部からの放
電、樹脂製取っ手部の発熱・変質が発生することがあり、使用者に火傷等を生
じさせる可能性がある。(無償で製品交換)
【詳細】 http://www.nite.go.jp/jiko/shakoku_index/20060616.html
◇平成18年6月22日 株式会社ダッドウェイ 「子守帯」
極めてまれに生地が破れやすい製品のあることが判明した。(無償で点検)
【詳細】 http://www.nite.go.jp/jiko/shakoku_index/20060622.html
■━━━NITE社告情報のページ━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
【過去半年間の社告】 http://www.jiko.nite.go.jp/index4.html
【社告の検索】 http://www.jiko.nite.go.jp/php/shakoku/search/index.php
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4.NITEの製品安全情報
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◆◆◇ 平成18年度第2回事故動向等解析専門委員会を開催 ◇◆◆
NITEでは、事故情報の調査結果を事故動向等解析専門委員会(*)(通常年
4回開催)の審議を経て公表しています。今年度2回目の同委員会を、去る6
月20日に開催し、709件の案件が審議されました。審議を受け、事故原因
の究明作業が終わった案件については、NITEの事故情報収集制度四半期報
告書等でその結果が公表されます。
(*)事故動向等解析専門委員会は、学識者、消費者団体代表等10名の委員で
構成されています。
◇委員会でのひと言
「ペットを飼う人が増えて、消費生活センターにもペットに関する相談が増え
ている。ペットがいることを配慮した安全対策も必要ではないか。」
今回の審議案件に、電源コードを飼い犬が噛んだことによってショートし、
出火したと推定される事故がありました。NITEで公表している事故情報で、
ペットに関連した事故事例を今号「2.事故情報」でご紹介いたしました。
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5.編集後記
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今号はペットの事故をご紹介しました。我が家にも猫がいますので、身にし
みる事故です。猫は少しでも高いところに乗るのが好きなので、上部にボタン
のあるタイプの石油ファンヒーターは電源コードを抜いて出かけています。先
日は収納しようとたたんで置いてあった電気カーペットで爪とぎをしていまし
た(油断もスキもない・・・)。きっと、みなさんもご家庭のペットの性格?
をよくご存じだと思いますので、注意してあげてください。
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【編集・発行】 独立行政法人製品評価技術基盤機構
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