Vol.25  6月16日号「シェーバー用充電器の発火事故」
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====================2006.6.16 Vol. 25===================
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│PSコラム│
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│ 報知音 │
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◇報知音を発する機能は家庭用電気製品などに数十年前から既に組み込まれて
いる。報知音は操作ボタンを押した音(操作音)、機器の動作完了を知らせ
る音(終了音)、誤操作や機器の異常を知らせる音(警告音)などに使われ
るが、NITEの職員で平成9年から報知音の調査研究に携わっているもの
がいる。最近、話を聴く機会があったので紹介する。
◇報知音の調査研究を行うことになったのは、高齢者が家庭用電気製品の報知
音を聞き取れずに火傷を負ったという製品事故が一つのきっかけだったらし
い。市販されていた家庭用電気製品の報知音を調査したところ、500~5,500
Hzの周波数が使用され、4,000Hz付近が最も多かったようだ。周波数と年齢
の関係を実際に人間で徹底的に調査し、4,000Hz以上の高い周波数は高齢者
には聞き取りにくいこと、1,000~2,000Hzの周波数であれば高齢者でも聞き
取り可能であることがわかった。また、製品の中には、報知音の機能がある
のに、音量が非常に小さいため、高齢者にとっては聞き取りが困難なものも
あったという。この結果を得るために集められた家庭用電気製品の報知音は、
炊飯器や電子レンジ、電気ポットなど、なんと家電メーカー8社の84製品
に達した。
◇スリーステップ・メソッドからみた製品のリスク低減の優先順位(1.本質
安全設計、2.保護装置による安全確保、3.消費者への情報による安全確
保)でいえば、報知音は3.に該当し、残留リスクを伝達する手段の一つで
ある。文字ではなく積極的に音で知らせる方法はかなり効果的と考えられ
る。ただ、報知音の周波数が適切でなかったり、音量が小さすぎたりしたの
では、せっかくの機能も効果をなさないことがありうる。長年の調査研究は
実を結び、平成15年にJISになって活かされた。是非、ご活用いただき
たい。
・JIS S 0013
高齢者・障害者配慮設計指針-消費生活製品の報知音
・JIS S 0014
高齢者・障害者配慮設計指針-消費生活製品の報知音
-妨害音及び聴覚の加齢変化を考慮した音圧レベル
・JIS/TR S 0001
消費生活製品の報知音等の設計指針-生活環境音データベース
◇「最近、家庭用電気製品の報知音が変わってきた。あの製品も、この製品も
対策品だ」。これは、担当者の言葉である。長年の調査研究から、報知音を
聴くだけで対策品の判別がつくようになったという。すごいとしかいいよう
がない。
(編集子)
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目次
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1.事故100選
第5回「シェーバー用充電器の発火事故」
2.事故情報
・消費生活用製品の事故情報収集状況(5月29日~6月9日受付78件)
・着火剤による事故事故
・消費生活用製品以外の事故(7件)
3.社告情報(2件)
4.NITEの製品安全情報
・事故情報収集制度における事故情報の調査結果及び収集状況について
(平成17年度第4四半期)公表
5.編集後記
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1.事故100選
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NITEや試験研究機関が事故原因究明をした事例に、その事故原因が安全
な製品を設計する上などで参考となる事例が多数存在します。これらの事例を
風化させてはならないと考え、当時の状況を事故100選としてご紹介するこ
とにしました。今回は、シェーバー用充電器で起きた発火事故です。
第5回「シェーバー用充電器の発火事故」
◇2000年5月、充電中のシェーバー用充電器から発煙、発火し、家具と壁
紙を焦がす事故が発生した。これがNITEに情報が寄せられた最初の事故
である。
◇充電器について判明した内容は以下のとおり。
発火した充電器は、旅行などに携帯できるよう作られたシェーバーの付属品
で、水の中に落としても短絡しないように、回路全体をポリプロピレン製の
ケースにいれ、その中にエポキシ樹脂のポッティング剤を充填させ、防水さ
れていた。
◇また、万が一、充電器内にある発振トランス巻線部の絶縁不良によって巻線
間が一部短絡し、過電流が流れたとしても、安全装置(フェール・セーフ)
として回路に組み込まれたヒューズ抵抗が溶断し、発振トランスからの発熱
を防止する構造であった。一見、なんら問題がない構造のように思える。
◇事故は、次のメカニズムにより、発生することが判明。
(1)充電器内にある発振トランスの巻線部に絶縁不良があったために、巻
線間が一部短絡して過電流が流れ、回路のヒューズ抵抗が溶断する。
(2)ヒューズ抵抗が溶断した際の熱により、ヒューズ抵抗周辺のポッティ
ング剤が炭化してバイパス回路を形成する。
(3)炭化してできたバイパス回路に電流が流れて過熱、発熱する。
つまり、事故が拡大被害にまで至った原因は、防水性を持たせるためにポッ
ティング剤を充填したことにあった。
◇その後、次のようなことが判明。
発売当初、この製品は国内で生産を行っており、発火事故は1件も発生して
いなかった。生産を海外に移した後に事故が起きた。海外に移した際に、ポ
ッティング剤が、ウレタン樹脂からエポキシ樹脂に変更されていたのだ。こ
のような用途に使用するポッティング剤は、熱で容易に炭化しないものを使
用することが重要といえる。
◇最初の事故から2005年11月までに発生した事故の通知件数は、780
件(平成17年第4四半期公表分まで)。製造事業者は、事故を受けて20
00年6月から社告回収を行い、回収率を高めるために新聞や雑誌などに社
告を掲載し、繰り返し周知を行っている。発生当初はこの事故がこのように
5年以上も続くことになるとは誰も予想していなかっただろう。本件は、こ
の製品がゴルフコンペなどの賞品に使われることもあり、家庭に未使用のま
ま何年か保管されて回収対象品と気づきにくい、未使用の保管期間が長いこ
とから、事故が起こるまでに時間がかかることも特徴の一つといえる。昨年
11月で87%の回収率に達し、事故通知もかなり減少傾向にあるが、今年
に入ってからも事故が通知されている。
☆前回までの記事はこちらです→ http://www.jiko.nite.go.jp/psm/
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2.事故情報
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◆◆◇ 消費生活用製品(*)の事故情報収集状況 ◇◆◆
(5月29日~6月9日受付78件)
NITEに通知のあった事故の傾向を見るために、上記期間内で、収集件数
の多い5製品を掲載しています。なお、事故原因については現在調査中です。
製品名(事故状況と件数) [前号比(件数±)]
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1. ガスこんろ (火災 20件) [+ 5]
2. 四輪自動車 (火災等 6件) [- 2]
3. 石油ストーブ (火災 4件) [- 1]
4. 電気ポット (火災等 3件) [+ 3]
. ふろがま (火災 3件) [- 1]
. ストーブ (火災 3件) [± 0]
(*)消費生活用製品:一般消費者が生活において使用する製品。
◆◆◇ 着火剤による事故 ◇◆◆
◇今回、原因は調査中ですが、着火剤による可能性のある事故情報がありまし
た。着火剤による事故の通知は最近ありませんでしたが、これから夏にかけ
て、バーベキューなどをされることも多いと思います。事例をご紹介いたし
ます。
◇着火剤による事故は、火がついている状態につぎ足しして起こる事故や、容
器のふたをあけたまま火気のそばにおいていて、揮発したメチルアルコール
に引火する事故などがあります。注意表示を必ず読んでから使用するように
してください。
・公園でバーベキューをしていて、いったん中断した後、再開しようと、
残り火があるところにゼリー状の着火剤を使用したところ、音がした直
後に2、3メートル離れた場所にいた女性の衣服が燃え、両太股及び左
膝下にそれぞれ2度と3度の火傷を負い、他の2名が軽い火傷を負った。
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→この製品はメチルアルコールを主成分としたもので、揮発性があり引
火しやすいことから、わずかな炎であっても、着火剤に火がつく前に揮
発成分に引火し、続いて着火剤が急激に燃焼されることによって飛び散
る等の可能性がある。製品本体に燃焼中のつぎ足しを禁止する旨が表示
されているが、残り火がある状態でつぎ足したため、着火剤が急激に燃
焼し飛散したものと推定される。
・着火剤を使って木炭に火を点け、残量がある着火剤の容器のふたをしな
いで、火から約80センチメートル離れたところに置いていたところ、
15分位して突然爆発し火傷した。
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→被害者が使用後の着火剤をふたをしないで火の近くに放置していたた
め、揮発した着火剤の主成分であるメチルアルコールに引火したものと
推定される。
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◆◆◇ 消費生活用製品以外の事故でこんな事故がありました ◇◆◆
◇『潤滑油漏れでトラックが全焼事故2件』
(4/27 群馬県、5/23 静岡県)
大型トラックのエンジン部品の不具合で潤滑油が漏れて発火し、車両が全焼
した。
◇『くん煙殺虫剤で14人がのどの痛み』(5/27 大阪府)
4階建てビル1階の居酒屋で、客ら計14人がのどの痛みを訴えて病院へ運
ばれた。警察では、同ビル4階の料理店で害虫駆除のため、くん煙殺虫剤を使
用しており、この煙がダクトを通って1階に流れたとみて原因を調べている。
◇『エレベーターに挟まれ死亡』(6/3 東京都)
集合住宅で、男性がエレベーターを降りようとしたところ、突然ドアが開い
たままゴンドラが上昇し、男性はゴンドラの床とエレベーター出入り口の上部
に挟まれて死亡した。
◇『高速道路を走行中のバスから出火』(6/5 広島県)
高速道路を走行中のバスの車内後部に煙が入り込んできたので停車したとこ
ろ、エンジンと車体の一部を焼いた。
◇『走行中トラックのタイヤが脱落』(6/6 大阪府)
府道を走行中のトラックから左後輪タイヤ2本が脱落した。タイヤを避けよ
うとした後続の乗用車が急ブレーキをかけたたため、その後ろの乗用車3台が
相次いで追突し、男性4人が軽傷を負った。警察では、タイヤを車軸に固定す
るためのボルトのナットが緩んでいたとみて調べている。
◇『突然動き出したミキサー車が高所作業車に衝突し、作業員が死傷』
(6/6 愛媛県)
工事現場で、駐車中のコンクリートミキサー車が突然動き出し高所作業車に
衝突、作業車で作業中の男性2人が8m下の地面に振り落とされ、1人が死亡、
1人が意識不明の重体となった。
◇『シャッターに挟まれ男児が重傷』(6/7 新潟県)
小学校で、男児が突然降りてきた防火シャッターと床の間に首の辺りを挟ま
れ、意識不明の重体となった。
■━━事故情報の検索━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
NITEのHPでは、調査が終了した事故情報を検索できます。
http://www.jiko.nite.go.jp/php/jiko/index.html
■━━製品の事故情報をお寄せください━━━━━━━━━━━━━━━━■
NITEでは、暮らしの中で起こった製品の事故情報を集めて調査し、
その結果を公表して製品事故の未然・再発防止に役立てています。
【事故情報収集制度概要】 http://www.jiko.nite.go.jp/index2.html
【通知様式】 http://www.jiko.nite.go.jp/index10.html(Word版・PDF版)
【送付先】 mailto:jiko@nite.go.jp Fax 06-6946-7280
【問い合わせ先】 mailto:jiko@nite.go.jp
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3.社告情報
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◇平成18年6月1日 コストコホールセールジャパン株式会社「電気製品等」
(電気製品)
輸入販売に際し、電気用品安全法の定める電気用品の安全性に関する技術基
準を満たしているかどうかの検査が行われていなかったことが判明した。
(携帯用レーザー応用装置)
消費生活用製品安全法の基準で定められたクラスを上回る出力(クラス3A)
の製品が輸入販売されたことが判明した。万が一、誤用やいたずらにより、レ
ーザー光が直接目に入った場合、網膜に障害を起こす危険性がある。
(製品自主回収(返金又は製品交換))
【詳細】 http://www.nite.go.jp/jiko/shakoku_index/20060601.html
◇平成18年6月2日 株式会社富士通ゼネラル 「電気冷蔵庫(再社告)」
庫内に食品汁等をこぼした場合、電装部に流れ込むことがあり、ごくまれに
「発煙」や「発火」等が発生する可能性があることが判明した。
(平成17年9月2日に行った社告の再社告)(無償で点検・修理)
【詳細】 http://www.nite.go.jp/jiko/shakoku_index/20060602.html
■━━━NITE社告情報のページ━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
【過去半年間の社告】 http://www.jiko.nite.go.jp/index4.html
【社告の検索】 http://www.jiko.nite.go.jp/php/shakoku/search/index.php
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4.NITEの製品安全情報
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◆◆◇ 【NITEホームページ】 ◇◆◆
事故情報収集制度における事故情報の調査結果及び
収集状況について(平成17年度第4四半期)公表
平成17年度第4四半期(平成18年1月~3月)において、NITEが事
故情報に関し、調査、確認、評価を行った上で、専門家により構成される事故
動向等解析専門委員会による審議を経た結果及びNITEが収集した事故情報
の収集状況について取りまとめ、公表しました。
◇事故情報調査結果
平成17年度第4四半期中に事故原因等の調査が終了し、事故動向等解
析専門委員会の審議を終えたものは399件でした。そのうち、製品に起
因する事故は81件です。
◇事故情報収集状況
平成17年度第4四半期中に収集した製品事故の情報は1017件(重
複を除く)でした。そのうち、「燃焼器具」の収集件数が最も多く、次い
で「家庭用電気製品」「乗物・乗物用品」の順に収集件数が多くなってい
ます。また、被害状況で、人的被害の発生した事故情報は428件で、そ
の内訳は死亡事故147件、重傷事故75件、軽傷事故206件です。人
的被害のない、火災等の拡大被害が発生した事故情報は480件でした。
【詳細】 http://www.jiko.nite.go.jp/index9.html
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5.編集後記
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昨年の生活・福祉技術センターの成果発表会で、音の周波数をどこまで聞き
取れるか体験できるコーナーを、ポスターセッションの一角に設けていたこと
を思い出しました。周波数の横に聞き取りにくくなる年齢が書いてありました
ので、来場いただいていた方が試されて、ご自分の年齢と比べて一喜一憂され
ていました。男性よりも女性の方が高い音を聞き取りやすいそうです。ちなみ
に、私も体験したところ、サンプルの中で一番高い音まで聞こえました。
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【編集・発行】 独立行政法人製品評価技術基盤機構
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独立行政法人製品評価技術基盤機構 製品安全センター
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