Vol.24  6月 2日号「調理中の死亡事故(後編)」
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====================2006.6.2 Vol. 24===================
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│PSコラム│
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│ 誤使用事故防止シンポジウムを振り返って │
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◇5月26日、牛込箪笥区民ホールで誤使用事故防止シンポジウムを開催した。
PSマガジンVol.22(5月8日号)に掲載したところ、申し込みが殺到し、
約10日で300名を超えた。当日の参加者数は308名で、講演者、パネ
リスト、展示物説明者、事務局などを加えると実に350名を超えた。つく
づく、Eメール効果を思い知らされた。定員オーバーで申し込みをお受けす
ることができなかった方々には深くお詫びを申し上げたい。
◇シンポジウムでは、工業会等のご協力で誤使用防止対策が施されている製品
の展示が行われた。以前に事故が多発していた製品も、安全対策を施すこと
によって、見事にリスクの低減に成功している。思わず立ち止まってみたも
のが、天ぷら油の過熱防止装置付きガスこんろであった。天ぷら油火災は、
だれもが「消費者の責任」と考えるが、これを防止するために安全装置が取
り付けられている。現物はなかなか感慨深いものであった。
(展示物リスト)
・天ぷら火災防止のために250℃を超えると消火するガスこんろ
・手を離すと停止する除雪機
・パワーブラシの先を持ち上げると停止する掃除機
・割れても飛散しない強化ガラス製薄型テレビラック
・乳幼児による電池蓋開防止構造付きのAVリモコン
・逆装填しても過熱して液漏れをしないアルカリ乾電池
・スチームによる火傷を防止する加湿器
◇シンポジウムでクローズアップされた言葉は「ヒューマンエラー」と「予見
可能性」だろう。使い慣れた製品だからと手抜きをしたり、製品に関する知
識がなかったりすると事故を引き起こしてしまう。ヒューマンエラーが誤使
用事故を起こす原因の一つであることが、改めてご理解いただけたのではな
いかと思う。予見可能性は、PLの欠陥の定義やリスクアセスメントで使わ
れている言葉だが、予見可能性と誤使用の関係はPL実務とリスクアセスメ
ントでは微妙な違いがあるようだ。PL実務では原告と被告の主張により決
定される部分があるため、その定義に少し曖昧さがあるようにみえる。一方、
リスクアセスメントでは、事業者側が最悪の事態を想定して設定するため、
可能な限り幅広く捉えようとしていることだ。
◇シンポジウム後半は、パネラーによるパネルディスカッションと会場参加者
を対象としたフリーディスカッションが行われた。討議が進むにつれて会場
全体に不思議な一体感が広がったように思う。討議の結果がまとまるまで、
席を立つ者がほとんどいない。この一体感は、会場の誰もが、誤使用事故防
止のためには、事業者が対応することはもちろん、関係者にもそれぞれ役割
があり、取り組んでいくべきと感じたからではないだろうか。まとめの中に
あるいくつかの言葉を紹介する。
・誤使用は、それぞれの立場、場面によって多義的なものです。
・事業者は、対応すべき誤使用の範囲や対応すべき場合などについて明らか
にするとともに、積極的に対応する努力が必要であると考えます。
・消費者は取扱説明書に従った使用を心掛けなければなりません。その背景
として、幼児教育、学校教育、消費者啓発など社会のあらゆる場面で、製
品とのつきあい方や事故の恐ろしさについて情報提供をされなければなり
ません。
・国、地方公共団体、教育機関、消費者団体、研究機関、マスコミ、法曹界
そして事業者が、誤使用防止という目的のために有機的な連携を図らなけ
ればなりません。
(編集子)
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目次
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1.事故100選
第4回「調理中の死亡事故(後編)」
2.事故情報
・消費生活用製品の事故情報収集状況(5月15日~5月26日受付88件)
・消費者の配置・施工不良による事故
・昨年7月に発生した事故の傾向
・消費生活用製品以外の事故(5件)
3.社告情報(1件)
4.NITEの製品安全情報
・春日井市「2006くらしに活かす生活展」へ出展
・関係機関への講師派遣
5.編集後記
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1.事故100選
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NITEや試験研究機関が事故原因究明をした事例に、その事故原因が安全
な製品を設計する上などで参考となる事例が多数存在します。これらの事例を
風化させてはならないと考え、当時の状況を事故100選としてご紹介するこ
とにしました。
今回は、ガスこんろの不完全燃焼による一酸化炭素中毒事故の後編です。
第4回「調理中の死亡事故(後編)」
◇付け替えられていたガスこんろの五徳は「ガス代30%お得」「経済的で省
エネ抜群」等と表示され、「省エネ五徳」という名称で販売されているもの
の一つであった。省エネ効果をねらってすり鉢状の形にしている。付属の五
徳と取り替えて使用すれば、炎を逃がさず熱効率がよくなるはずであった。
◇NITEで、市販されているガスこんろに省エネ五徳を取り付けてテストを
実施したところ、次のような結果が得られた。
・ガスの種類、なべの種類、アルミ製汁受けの有無、火力(とろ火は除く)
に関係なく、省エネ五徳を使用した場合にだけ、燃焼排ガスから基準値を
大幅に超える一酸化炭素が発生。
・2時間で室内の空気が入れ替わるように設定したサンプルルーム(6畳)
での再現テストでは、約2時間後に部屋の一酸化炭素濃度が約1,400~
1600ppmとなった(一酸化炭素濃度1500ppmでは30分~1時間の吸入で生命
に危険のおそれがある)。
これらから一酸化炭素中毒は省エネ五徳の使用によるものであると推定され
た。しかし、なぜ高濃度の一酸化炭素が発生したのか。原因は省エネ五徳の
形状にあった。すり鉢状の形状であったため、ガスこんろの燃焼に必要な二
次空気の供給が妨げられ、不完全燃焼を起こしたのである。省エネ効果をね
らって設計した形状が、皮肉にも空気を遮断した。しかもその省エネ効果に
ついては、熱効率のテストをしたところ省エネ効果が認められるほど熱効率
に有意差はなかった。むしろ不完全燃焼のために熱効率が低下すると推定さ
れた。
◇北海道でも同様の事故(1名が一酸化炭素中毒で死亡)が平成9年6月に発
生していたことが判明。同じメーカーではないが形状はほぼ同じものであっ
た。他にも数種の類似製品が販売されていたことから、NITEは、省エネ
五徳として販売されている6製品(すり鉢状以外の形状もある)について試
買テストを実施した。その結果からも、省エネ効果をうたった五徳はその構
造からガスこんろへの二次空気の供給を妨げて不完全燃焼を起こし、高濃度
の一酸化炭素を発生させる製品であることが判った。
◇NITEの調査結果を受けて、経済産業省では、平成10年3月に『いわゆ
る「省エネ五徳」による一酸化炭素中毒事故に係る注意喚起について』を報
道発表、NITEは事故情報特記ニュースを発行し、当該製品の使用中止を
呼びかけた。
・事故情報特記ニュース No.19
『いわゆる「省エネ五徳」による一酸化炭素中毒事故に係る注意喚起について』
http://www.jiko.nite.go.jp/news/019trive.htm
《参考》
◇後に省エネリングという名称で、五徳の下にセットして使用する、省エネ効
果をうたった製品が市場に出回ったが、これも使用条件によっては、身体に
危険なレベルの一酸化炭素が発生することが判ったため、事故情報特記ニュ
ースで、使用の中止を呼びかけている。
・事故情報特記ニュース『いわゆるガスこんろ用「省エネリング」について』
No.37 http://www.jiko.nite.go.jp/news/news37.htm
No.42 http://www.jiko.nite.go.jp/news/042/news42.htm
☆前回までの記事はこちらです→ http://www.jiko.nite.go.jp/psm/
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2.事故情報
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◆◆◇ 消費生活用製品(*)の事故情報収集状況 ◇◆◆
(5月15日~5月26日受付88件)
NITEに通知のあった事故の傾向を見るために、上記期間内で、収集件数
の多い5製品を掲載しています。なお、事故原因については現在調査中です。
製品名(事故状況と件数) [前号比(件数±)]
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1. ガスこんろ (火災 15件) [- 2]
2. 四輪自動車 (火災等 8件) [- 2]
3. 石油ストーブ (火災 5件) [± 0]
. 配線器具(延長コード)(火災 5件) [+ 4]
5. ふろがま (火災 4件) [+ 2]
(*)消費生活用製品:一般消費者が生活において使用する製品。
◆◆◇ 消費者の設置・施工不良による事故 ◇◆◆
今回は、消費者が設置や施工して起きた事故を、ご紹介いたします。NIT
Eに平成16年度、平成17年度に通知されて調査が終了し公表している事故
情報(平成17年度第3四半期報告分まで)で、消費者の設置・施工不良によ
る事故は25件あります。
◇ガスこんろの設置による事故
・木造住宅から出火して全焼し、隣接の民家や倉庫にも延焼した。
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→ガスこんろと壁との間隔が狭く、ガスこんろを設置していた付近の壁
が最も焼損していることなどから、長期間のガスこんろの使用で、壁内
部の木材が炭化し、当日のガスこんろからの熱で低温発火し、火災に至
ったと推定される。
ガスこんろを設置する場合、壁面にタイルやステンレスが貼られてい
ても、裏側の下地が木材の場合、長期間のガスこんろからの熱で炭化し、
100℃前後の温度でも発火(低温発火)することがあります。壁と1
5cm以上の間隔を取るか、壁に防熱板を付けるようにしてください。
◇延長コードの設置による事故
・木造住宅が全焼し、隣接する倉庫内の資材が燃えた。
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→被害者が住宅に隣接して自分で建てた物置の天井裏に、延長コードを
ステープル留めしていた。その箇所に断線と溶融痕が確認されたことか
ら、コードの被膜がステープル留めで損傷し、芯線が短絡、出火に至っ
たものと推定される。
◇自動車の部品交換による事故
・走行中の乗用車から発煙し、停車後に燃え上がって全焼した。
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→被害者が車種に適合しないオイルフィルターに交換したため、振動に
よりオイルフィルターがゆるみ、オイル漏れを起こして排気系統にかか
ったため、出火したと推定される。
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◆◆◇ 昨年7月に発生した事故の傾向 ◇◆◆
平成17年7月発生の事故は、130件中49件(約38%)が『家庭用電
気製品』の事故でした。その次に『燃焼器具』48件(約37%)、『乗物・
乗物用品』12件(約9%)でした。品名別では、ガスこんろが32件と多く
報告されています。
◆◆◇ 消費生活用製品以外の事故でこんな事故がありました ◇◆◆
◇『走行中の自動車運搬車から出火』(5/11 佐賀県)
高速道路で自動車運搬車が燃えた。警察では、走行中に運転席の後ろ付近
から炎が上がったとのことから出火原因を調べている。
◇『高速道路に軽油を漏らして走行』(5/13 兵庫県)
高速道路で、大型トラックが燃料タンクに穴があいて燃料漏れを起こしたま
ま走行し、後続の車2台がスリップして側壁やガードレールに衝突、1人が軽
いけがを負った。
◇『作業場を全焼』(5/14 茨城県)
木造平屋の工務店の作業場から出火し、約130平方メートルを全焼した。
警察では、作業場には建築資材や木材加工用の電気器具などがあったことから
原因を調べている
◇『ゴルフ練習場で鉄柱が突風で倒れる』(5/20 埼玉県)
ゴルフ練習場で、防護ネットを支える高さ約60メートルの鉄柱12本が突
風で倒れ、車6台と隣接する工場の屋根を破損した。
◇『県営公園の入場門が突風で倒れる』(5/20 兵庫県)
県営公園でアルミ製の入場門が倒れ、男性が下敷きになって顔や肩などにけ
がをした。警察では、入場門は突風にあおられ倒れたとみている。
■━━事故情報の検索━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
NITEのHPでは、調査が終了した事故情報を検索できます。
http://www.jiko.nite.go.jp/php/jiko/index.html
■━━製品の事故情報をお寄せください━━━━━━━━━━━━━━━━■
NITEでは、暮らしの中で起こった製品の事故情報を集めて調査し、
その結果を公表して製品事故の未然・再発防止に役立てています。
【事故情報収集制度概要】 http://www.jiko.nite.go.jp/index2.html
【通知様式】 http://www.jiko.nite.go.jp/index10.html(Word版・PDF版)
【送付先】 mailto:jiko@nite.go.jp Fax 06-6946-7280
【問い合わせ先】 mailto:jiko@nite.go.jp
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3.社告情報
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◇ 平成18年5月17日 株式会社ニトリ
「照明器具(天井つり下げ型)(再社告)」
一部パーツの不具合により、落下等の事故が生じる可能性がある。
(製品交換または回収)
【詳細】 http://www.nite.go.jp/jiko/shakoku_index/20060517.html
■━━━NITE社告情報のページ━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
【過去半年間の社告】 http://www.jiko.nite.go.jp/index4.html
【社告の検索】 http://www.jiko.nite.go.jp/php/shakoku/search/index.php
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4.NITEの製品安全情報
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◆◆◇ 春日井市「2006くらしに活かす生活展」へ出展 ◇◆◆
NITEでは、春日井市と春日井市消費生活展実行委員会共催「2006く
らしに活かす生活展」で、カセットこんろの誤使用事故や、てんぷら油火災、
植物油を主成分とした塗料の自然発火事故などをパネル展示してご紹介します。
【期間】 平成18年6月9日(金)~10日(土)
【場所】 春日井市役所1F市民ホール及び市庁舎周辺
(愛知県春日井市鳥居松町)
【詳細】 http://www.city.kasugai.lg.jp/
◆◆◇ 関係機関への講師派遣 ◇◆◆
~ 製品安全に関わる講座へ講師を派遣しています ~
NITEでは、消防学校、消費生活センター、工業会等関係機関で開催され
る製品安全に関わる研修や講座に、職員を講師として派遣しています。
【今後の講師派遣予定】
6/ 8 南砺市民大学(対象:消費者)9/14も同講座あり
6/ 8 長崎県消防長会(対象:火災原因調査に携わる職員)
6/23 浜松市消防本部(対象:消防職員)
7/11 栃木県消費生活センター(対象:消費者)
講師派遣のご要望等お問い合わせは、
製品安全企画課(06-6942-1113)PSマガジン担当まで
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5.編集後記
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誤使用事故防止シンポジウムにお越しいただいた皆さま、ありがとうござい
ました。PSマガジンの読者の方に会場でお会いできたらいいな、と思ってい
ましたが、さすがにPSマガジン担当と名札に書くこともできず、また、会場
では下手なのになぜか写真係になり、あっという間に時間が過ぎていました。
また、このような機会がありましたら、ぜひご参加いただきますようお願いい
たします。
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【編集・発行】 独立行政法人製品評価技術基盤機構
生活・福祉技術センター 製品安全企画課
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独立行政法人製品評価技術基盤機構 製品安全センター
製品安全広報課
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TEL:06-6612-2066
FAX:06-6612-1617
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