Vol.21  4月21日号「なべの取っ手が外れた事故(前編)」
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====================2006.4.21 Vol. 21===================
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│PSコラム│
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│ リスクアセスメント │
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◇最近、リスクアセスメントという文字がよく目に付く。様々な状況で使われ
ており一般的な言葉になってきた感がある。インターネットでも、証券取引、
情報セキュリティ、化学物質、労働安全などで使われているのをみかける。
いずれの分野のリスクアセスメントにおいても、危険を特定し、その程度を
評価することが述べられている。
◇NITEにも、外部からリスクアセスメントをやってるなと感じさせる問い
合わせが多い。製品安全の分野では、製品のどの部位に危険源(ハザード)
が存在するかを特定し、そのハザードによる危険がどれくらいの大きさか、
どの程度の頻度で発生するか(リスク)を評価する作業をリスクアセスメン
トいう。
◇ところで、はじめての事業者は何から始めればよいのだろうか。まず、自社
の扱っている製品の安全情報、事故情報を収集することだ。手始めにインタ
ーネットで検索するのもいいだろう。製品名と「不具合」で検索すれば、た
ちどころに情報が集まる。ヒットした情報をもとに調査を行えば、製品のど
の部位に危険が存在し、危険がどの程度かを知ることができる。同じ危険が
自社の製品にないかをチェックし、存在するようなら対策を施す。これがリ
スクアセスメントの基本である。最近、会社にリスクアセスメント専門の担
当者を置くところも増えてきたように思う。複数人を配置してもおかしくは
ないだろう。リスクアセスメントの情報が経営のトップに伝わる仕組みがあ
ればベストである。
◇NITEの事故情報データベース、社告データベースは事故の未然、再発の
防止を目的として公開されており、リスクアセスメントにも利用できると考
えている。10年近く前の話になるが、NITEは事故情報データベースの
公開情報を変更し、製品の不具合等による事故については、メーカー名、型
式を公表することにした。当時のNITEとしては一大決心だったらしい。
事業者からもなかなか理解が得られなかったようだ。現在、NITEの事故
情報データベースは事業者の利用も多く、利用目的はリスクアセスメントだ
と想像している。この時の一大決心が使えるデータベースの1つに成長させ
たのだと思う。
(編集子)
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目次
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0.お知らせ
1.事故100選
第3回「なべの取っ手が外れた事故(前編)」
2.事故情報
・消費生活用製品の事故情報収集状況(4月3日~4月14日受付152件)
・表示や取扱説明書の不備による事故
・消費生活用製品以外の事故(2件)
3.社告情報(6件)
4.NITEの製品安全情報
・「バリアフリー2006」に出展 生活・福祉技術センター
5.関係機関の製品安全情報
・検査孔付き機器接続ガス栓の設置状況について 経済産業省
・四国地域における検査機器貸出場所の拡大について 経済産業省
6.編集後記
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0.お知らせ
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5月5日(金)に配信予定のVol.22につきましては、5月8日(月)に配
信させていただきます。
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1.事故100選
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NITEや試験研究機関が事故原因究明をした事例に、その事故原因が安全
な製品を設計する上で教訓となる事例が多数存在します。これらの事例を風化
させてはならないと考え、当時の状況を事故100選として紹介することにし
ました。今回は、使用中になべの取っ手が外れた事故をご紹介します。
第3回「なべの取っ手が外れた事故(前編)」
◇2004年6月、持っていたなべの取っ手が外れ、お湯が女性の胸から下に
かかる事故が発生した。販売店から「検査に合格している製品であり、使い
方による事故」と説明を受けて納得ができなかった被害者が消費生活センタ
ーに相談し、NITEに事故通知が寄せられた。
◇NITEは、直ちに調査を開始。事故品は2年ほど前に購入したIH用両手
鍋。本体はステンレス製で、取っ手はフェノール樹脂製。取っ手と本体は2
本のねじで固定されていた。事故品の状況を確認したところ、脱落した取っ
手は2つのねじ止め部の間で破損しており、ねじとナットは腐食、膨張して
いた。
◇NITEの調査で、事故品及び同等品について次の事実が判明した。
1.取っ手は本体にねじを残したまま脱落。取っ手側のねじ穴周辺部が破
損しており、取っ手がねじから抜けて外れたものと推定。破損部の破
断面にはクラックが確認された。
2.取っ手には、熱影響による炭化、膨れ、変色などは確認できず。
3.ねじとナットは著しく腐食し、腐食生成物(赤さび)に覆われて膨張
し、ねじ山等は原形をとどめていない状態。
4.同等品の取っ手について繰り返し強度試験を行った結果は、強度に問
題なし。
5.なべの本体とナット保持金具の材質はステンレス鋼。ねじとナットは
鋼製。
◇取っ手はどうして破損したのだろうか。読者の皆様は何を事故原因と考えら
れるだろうか。
(後編に続く)
☆前回までの記事はこちらです→ http://www.jiko.nite.go.jp/psm/
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2.事故情報
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◆◆◇ 消費生活用製品(*)の事故情報収集状況 ◇◆◆
(4月3日~4月14日受付152件)
NITEに通知のあった事故の傾向を見るために、上記期間内で、収集件数
の多い5製品を掲載しています。なお、事故原因については現在調査中です。
製品名(事故状況と件数) [前号比(件数±)]
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1. いす (破損 31件) [+30]
2. ガスこんろ (火災 17件) [+ 7]
3. テーブル(ガラス製) (破損 12件) [+12]
4. 四輪自動車 (火災 11件) [+ 7]
5. ふろがま (火災 8件) [+ 3]
. 石油ストーブ (火災 8件) [- 4]
(*)消費生活用製品:一般消費者が生活において使用する製品。
◆◆◇ 表示や取扱説明書の不備による事故 ◇◆◆
NITEに平成15年度、平成16年度に通知されて調査が終了し公表して
いる事故情報(平成17年度第3四半期報告分まで)で、表示や取扱説明書の
不備による事故は22件でした。内訳は平成15年度6件、平成16年度16
件です。事例をご紹介します。
◇事故事例
・卓上用まほうびんの取っ手を持ち上げたところ、底ぶたがはずれて中び
んが抜け落ち、熱湯が大腿部にかかり火傷をした。
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→まほうびんは、中びんやパッキン等の交換ができるように底ぶたが外れ
る構造であった。しかし、製品に日本語の取扱説明書が添付されていな
かったので、被害者は使用上の注意事項等を知らずに、底ぶたが緩んだ
ままの状態で使用を続け、底ぶたが外れて中びんが抜け落ちたものと推
定される。なお、底ぶたに緩みが生じた時点については不明である。
・強化ガラス製のボウル(セットで購入したものの一つ)にきゅうりと塩
を入れていたところ、突然音とともにボウルが破裂した。破片は2メー
トル四方に飛び散り、調理中の食品の中にも落ちた。
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→被害者が使用していたセット品の他のボウルに多数の傷が認められたこ
とから、事故品にも傷があり、破壊しやすい状態にあったものと推定さ
れる。なお、製品に家庭用品品質表示法に基づく表示がなく、被害者が
「急激な衝撃を与えることや傷が付く取扱いは避けること、破損した場
合は破片が細片となり飛散する」等の注意事項を知らずに使用し、破損
したものと推定される。
・自転車で走行中、フレームヘッド部が破損して転倒し、鎖骨を骨折した。
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→事故品のフレームは変形しにくいものなので、過大な衝撃によって発生
したクラックが徐々に進展していることに気付きにくいものであった。
また、取扱説明書には「転倒や衝突したときは続けて乗らずに、販売店
で点検、整備してください。」と記載されていたが、見た目に異常がな
くても点検を受ける主旨が判りづらい記載であった。そのため、使用を
継続し、フレームが破断したものと推定される。
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◆◆◇ 消費生活用製品以外の事故でこんな事故がありました ◇◆◆
◇『うなぎを焼いていた自動魚焼き機から出火』(3/26 茨城県)
木造2階建て店舗から出火し、約200平方メートルを焼いた。消防では、
串に刺したうなぎを回転させながら焼くガス用の自動魚焼き機が火元とみて調
べている。
◇『ダチョウ牧場から出火』(4/11 兵庫県)
ダチョウ牧場付近から出火して、鉄骨プレハブ平屋の事務所とコンテナ2棟
の計約100平方メートルが焼け、ダチョウの卵約100個とヒナ1羽が焼け
た。警察では、コンテナの中で電熱器を使って卵を人工ふ化させていたとのこ
とから、出火原因を調べている。
■━━事故情報の検索━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
NITEのHPでは、調査が終了した事故情報を検索できます。
http://www.jiko.nite.go.jp/php/jiko/index.html
■━━製品の事故情報をお寄せください━━━━━━━━━━━━━━━━■
NITEでは、暮らしの中で起こった製品の事故情報を集めて調査し、
その結果を公表して製品事故の未然・再発防止に役立てています。
【事故情報収集制度概要】 http://www.jiko.nite.go.jp/index2.html
【通知様式】 http://www.jiko.nite.go.jp/index10.html(Word版・PDF版)
【送付先】 mailto:jiko@nite.go.jp Fax 06-6946-7280
【問い合わせ先】 mailto:jiko@nite.go.jp
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3.社告情報
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◇平成17年12月1日 エム・アンド・エム株式会社 「幼児用自転車」
補助車輪の一部に強度が不足して金具が変形する可能性があることが判明し
た。(無償で部品交換(補助車輪))
◇平成18年3月22日 東京都葛飾福祉工場/大川工業株式会社
「避難はしご」
生産ロットの一部において部品の前後取り付け違いの可能性があることが判
明した。(無償で製品交換)
【詳細】 http://www.nite.go.jp/jiko/shakoku_index/20060322.html
◇平成18年3月24日 住商テキスタイル株式会社 「乳幼児用衣料品」
一部商品において、ごく稀にドットボタン部分に関し不具合(ドットボタン
の取り付け不良により金属部分が突起しているため、ボタンの着脱時等に場合
によっては手指等に受傷する可能性がある)のあるものが混在していることが
判明した。(製品回収)
【詳細】 http://www.nite.go.jp/jiko/shakoku_index/20060324a.html
◇平成18年3月29日 株式会社リーボックジャパン
「アクセサリー(ブレスレット)」
一部シューズに景品として同梱していたブレスレットを誤飲し死亡する事故
が米国で発生した。本ブレスレットに有毒の鉛が含まれている可能性がある。
(景品回収)
【詳細】 http://www.nite.go.jp/jiko/shakoku_index/20060329a.html
◇平成18年4月10日 株式会社ケンウッド 「カーステレオ用スピーカー」
一部車種への取り付けに必要な取付金具が、振動や取り付け状況によって破
損し、それにより製品が落下防止用ワイヤーごと固定部から外れ、最悪の場合、
人身あるいは物的事故につながる可能性があることが判明した。
(無償で部品交換(取付金具))
【詳細】 http://www.nite.go.jp/jiko/shakoku_index/20060410.html
◇平成18年4月20日 コンバースフットウェア株式会社 「子供用靴」
ファスナー部分のストッパー部品の欠陥により、歩行中にファスナーが最下
部まで落ちてしまい、場合によっては転んでしまう恐れがあることが判明した。
(製品回収)
【詳細】 http://www.nite.go.jp/jiko/shakoku_index/20060420a.html
■━━━NITE社告情報のページ━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
【過去半年間の社告】 http://www.jiko.nite.go.jp/index4.html
【社告の検索】 http://www.jiko.nite.go.jp/php/shakoku/search/index.php
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4.NITEの製品安全情報
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◆◆◇ 『バリアフリー2006』に出展 ◆◆◇
生活・福祉技術センター
NITEでは、大阪で開催されているバリアフリー2006に出展していま
す。高齢者を中心に、身体寸法などの基礎的な特性値や、身体の最大発揮力、
関節可動域、操作力などの身体特性をデータベース化した「人間特性データベ
ース」、ISOに提案している「歩行補助用具先ゴム摩擦試験方法」などを紹
介しています。
【会 期】4月20日(木)-22日(土)10:00~17:00
【会 場】インテックス大阪5号館(大阪市住之江区)
〈参 考〉
人間特性データベース http://www.tech.nite.go.jp/human/
バリアフリー2006 http://www.itp.gr.jp/bf/
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5.関係機関の製品安全情報
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◆◆◇ 検査孔付き機器接続ガス栓の設置状況について ◆◆◇
(液化石油ガス関係) 経済産業省
東京ガス株式会社が点検を実施している検査孔(都市ガス用は「空気抜き孔」
という。)付き機器接続ガス栓について、原子力安全・保安院は3月1日、全
国の都市ガス事業者等及び液化石油ガス事業者等に対し、同タイプのガス栓の
設置状況の調査等を行うよう指示しました。本件指示に基づく液化石油ガス事
業者からの調査等の報告について、社団法人日本エルピーガス連合会から3月
31日付けでとりまとめた結果の報告がありましたので公表いたします。
【詳細】 http://www.meti.go.jp/press/20060407002/20060407002.html
◆◆◇ 四国地域における検査機器貸出場所の拡大について ◆◆◇
(電気用品安全法の経過措置一部終了に伴う対策の実施)
経済産業省
電気用品安全法の経過措置の一部終了に伴う対策の一環として、現在、全国
で絶縁耐力検査機器の無料貸出を開始し、順次貸出場所を拡大しているところ
ですが、四国地域においては、現在、既に検査機器の貸出しを行っている四国
経済産業局に加えて、4県公設試験研究機関(徳島県立工業技術センター、香
川県産業技術センター、愛媛県工業技術センター、高知県工業技術センター)
及び新居浜市工業試験所の5箇所で新たに検査機器の無料貸出しを開始するこ
ととなりました。この5箇所については、検査機器の貸出申込みを平成18年
4月21日(金)から受け付けます。
【詳細】 http://www.meti.go.jp/press/20060420004/20060420004.html
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6.編集後記
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3月から始まった連載「事故100選」。1万件以上の公表データからあた
りをつけて選定しているので、とても難しく苦労しています。NITEの事故
情報収集制度は昭和49年から運営されていますが、昔のテストレポートなど
を見ていると、黄ばんだ紙に手書きだったりして、時代を感じます。そんな時
代背景も伝えられたらと思っています。
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【編集・発行】 独立行政法人製品評価技術基盤機構
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