化学物質のリスク評価について-よりよく理解するために-7
UF(不確実係数)
リスク評価のための種々のデータには、不確実な点が多く含まれます。
例えば、“化学物質Aのヒトへの発がん性は100万人に1人の確率である” ことを、100万人のヒトをその寿命まで化学物質Aに暴露させて証明することはできません。そのため、ヒトの代わりにラットなどの動物で実験しますが、その結果からヒトに対する発がん性を推定するため不確実さが生じるのです。
そこでリスク評価では、その不確実さによりリスクが小さく見積もられることがないようにUF( 不確実係数)を設定し、より安全側に立った評価をするようにしています。。
一般的には、動物とヒトの違いである種差(×10)と、感受性の違いである個人差(×10)を考慮した100を基本の値とします。
その上、動物試験の期間、信頼性などの項目別に不確実なものがあれば、さらに係数を追加します。
係数は1、10を基本としていますが、それに限らず、不確実さの度合いにおいて設定値を変えることもあります。
現在、国際的なルールはなく、国や評価機関がそれぞれ妥当と思われる値を選択しています。 また、複数の項目を考慮する場合は係数同士を掛け合わせて使用し、これをUFs(不確実係数積)と呼んでいます。
この値が大きいほど、その有害性評価の信頼性が低いといえます。
この値が大きすぎる場合は、根拠となったデータの信頼性が低かったために本来懸念されないリスクが「あり」と判断されてしまうという可能性があるため、リスク評価結果を慎重に扱う必要があります。。
UF(不確実係数)と同じ意味で、説明係数、評価係数、修正係数、安全係数などの呼び方があります。
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NEDO事業における「初期リスク評価書」では、以下の項目についてUFs(不確実係数積)を算出しています。
UFs (不確実係数積)=(種差)×(個人差)×(LOAEL(最小毒性量)の使用)×(試験期間)×(修正係数)
各項目の不確実係数は以下のとおりです。
・種差 | 10(動物試験データに基づく場合) 1 (ヒトのデータに基づく場合) |
---|---|
・個人差 | 10 |
・LOAEL(最小毒性量) の使用 |
10(LOAEL(最小毒性量)からNOAEL(無毒性量)に換算している場合) 1 (NOAEL(無毒性量)使用時) |
・試験期間 (短期間の試験データを使用したときを考慮) |
10 (1か月の試験期間) 5 (3か月の試験期間) 2 (6か月の試験期間) 1 (6か月以上の試験期間) |
・修正係数 | 以下のように、試験及び試験データの信頼性により評価者の判断で追加する係数。追加が無ければ1を設定します。
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等・・ |
- 用語解説
- ※ GLP(Good Laboratory Practice:優良試験所基準):GLP制度は、試験施設ごとに運営管理、試験設備、試験計画、内部監査体制、信頼性保証体制、試験結果などをチェックし、試験成績の信頼性の確保を図るもので、3年ごとに確認更新が必要となっています。
詳しくはNITEのGLP(優良試験所規範)制度のページをご覧ください。
【URL】http://www.nite.go.jp/chem/kasinn/glp/glp.html
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