製品安全

平成16年度事故情報収集制度報告書

はじめに

経済産業省所管の消費生活用製品等に関する事故情報の収集については、経済産業省から、製造・輸入事業者、地方公共団体、消費生活センター、消費者団体等に対して、事故情報を独立行政法人製品評価技術基盤機構に通知するよう協力を求めているところです。
機構は、通知された事故情報と自ら収集した事故情報のすべてについて、通知者、製造・輸入事業者等から事実関係等を聴取するほか、事故発生現場の確認や事故品の入手等に努めるとともに、必要に応じて事故の再現テスト等を実施して技術的な調査及び評価を行い、事故原因の究明と事業者の再発防止措置の評価を行っています。
これらの事故情報やその調査状況・調査結果は、機構から随時経済産業省に報告され、必要な場合には経済産業省により事業者や業界に対して行政措置が講じられることとなります。
本報告書は、平成16年度(平成16年4月~平成17年3月)に収集された事故情報の収集状況、平成16年度に調査が終了し公表された事故情報に関する調査内容、学識経験者等により構成される事故動向等解析専門委員会による事故情報調査結果の分析・評価と事故動向等について取りまとめ平成16年度版として公表するものです。
製品に起因して発生したと判断される製品事故については、本報告書の中で事故製品の銘柄、型式、製造事業者名等の情報も併せて公表しています。これは同種事故の未然・再発防止を図るために行っているものです。
また、調査の結果、製品に起因しない誤使用や不注意による事故と判明したものについてもその内容を公表しています。
これは消費者への注意喚起を行うとともに、製品の使用実態と事故の発生状況を製造・販売事業者に提供することにより、可能な限り誤使用や不注意とされる事故を技術的に防ぐ方法が開発されることを期待してのことです。
本報告書が、製品の安全な使用・保守に役立てられるとともに、事業者に対する設計、製造、供給又はアフターサービスの面での対応の促進、そして消費者に対する製品使用上の注意喚起に寄与することにより、製品事故の減少に役立てば幸いです。
平成17年11月9日
独立行政法人製品評価技術基盤機構

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1.事故情報収集制度において収集する事故情報

事故情報収集制度では経済産業省所管の消費生活用製品等(家庭用電気製品、燃焼器具、乗物、レジャー用品、乳幼児用品等をいう。)が関係して発生した事故で、(1)人的被害が生じた事故、(2)人的被害が発生する可能性の高い物損事故及び(3)人的被害が発生する可能性の高い製品の不具合に関する情報を収集している。

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2.事故情報の収集体制と事故情報収集件数

独立行政法人製品評価技術基盤機構(以下「機構」という)では、消費者をはじめ全国の消費生活センター、行政機関、製造事業者等から事故情報の通知を受けるとともに、新聞、インターネットに掲載された事故情報を全国から日々入手する体制(事故情報収集モニターの配置)を確立し、事故情報を網羅的に収集することに努めている。
平成16年度に収集された事故情報の通知者別の件数は表1のとおりであった。このうち、同一の製品事故に対して複数の通知者から通知されたもの、調査の結果、製品が事故発生に関係していないことが判明したもの、事故品が経済産業省所管製品以外の製品であるものを除いた事故情報は2,378件(平成17年5月30日現在。事故原因調査中のものを含む。)であった。
機構が収集した事故情報を、製品区分別に集計した結果は表2に示すとおりで、家庭用電気製品の事故件数が最も多く、収集件数の約43%を占め、次に燃焼器具が約28%、乗物・乗物用品が約15%の順になっている。この傾向は事業者の通知が増えた平成12年度以降、特に著しい変化は認められなかった。
表1 通知(報告)者別事故情報収集件数
事故情報通知(報告)者 件数及び割合
製造事業者等 1,084件 39.8%
自治体(消防機関含む) 111件 4.1%
消費生活センター等 105件 3.9%
国の機関 80件 2.9%
消費者 49件 1.8%
その他 49件 1.8%
小計 1,478件 54.3%
新聞情報 1,243件 45.7%
合計 2,721件 100.0%
表2 製品区分別事故情報収集件数(*)
順位 製品区分 件数及び割合
家庭用電気製品 1,024件 43.1%
燃焼器具 678件 28.5%
乗物・乗物用品 352件 14.8%
身のまわり品 104件 4.4%
家具・住宅用品 72件 3.0%
保健衛生用品 50件 2.1%
レジャー用品 48件 2.0%
台所・食卓用品 24件 1.0%
乳幼児用品 19件 0.8%
10 繊維製品 6件 0.2%
11 その他 1件 0.1%
合計 2,378件 100.0%

*:本表の件数は、表1から調査の結果、重複情報や収集対象外情報であることが判明したものを除いたもの。

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3.事故情報の調査                

(1) 事故調査状況

機構では、収集した事故情報のすべてに対して、情報通知者等の関係者から事故状況や事故に関係したと考えられる製品の詳細確認等の事故調査を行っている。
また、死亡又は重傷の人的被害や火災等の重大な被害が発生した事故で、緊急な措置が必要と考えられるもの、再発や多発する可能性が危惧されるもの、法令等の規制対象製品によるもの等、原因究明が特に必要と考えられるものについては、積極的に現場調査を実施するとともに事故品等の確保・確認を行っている。
平成16年度には、冷蔵庫の出火事故、石油給湯器の出火事故等39件の事故について現場調査を実施した。
また、ヒーター管が破裂した電気ストーブ、持ち手が異常に熱くなったヘアーアイロン、押し手棒が折れ転倒した三輪車等、190件の事故について事故品や同等品の確認を行っている。
これらの調査の結果、製品の製造事業者名、型式等が判明した場合は、事故発生の情報を当該製造事業者等に通知し、事故発生の原因、事故再発防止措置等について報告書の提出を求め、事故の未然・再発防止の観点からその内容を確認、検討を行っている。
平成16年度の事故情報における事故調査及び事故品確認の状況、製造事業者名の判明状況を表3に示す。
表3 機構における事故調査状況(現場調査、事故品確認、製造事業者名の特定)
現場調査及び事故品確認状況
(平成17年5月30日現在)
現場調査を実施したもの 39件
事故品を確保したもの 190件
事故品の製造事業者等の特定状況
(平成17年5月30日現在)
製造事業者等からの通知により判明したもの 962件
機構の事故調査により判明したもの 490件

(2) 重大事故等の調査状況

機構では、死亡又は重傷の人的被害や火災等の拡大被害が発生した重大事故、重大事故が再発した事故、同一型式製品で同種事故が多発した事故、法令の技術基準に係わる事故等、注視する必要がある事故は、第一報のみならず、その後の調査等で得た情報についても入手次第、直ちに経済産業省と情報を共有しながら調査を進めることとしている。
平成16年度、注目して調査を行った事故は表4に示すとおりで、重大な人的被害や拡大被害が発生したために注目して調査を行ったものに、運転中に座席とともに転倒し、左手首を骨折した電動車いす(自操用、ハンドル型、四輪)の事故、下り坂でアクセルレバーを離したが停止せず転倒した電動車いすの事故、店舗内の子供広場で、技術基準に適合していなかった電子冷蔵庫から出火し、延焼する事故があった。また、事故が多発し、調査を実施したものとして、ヒーターのガラス管が破裂した電気ストーブ(ハロゲンヒーター)、発熱・発火した食器洗い機、走行中フレームヘッド部を折損した自転車等の事故があった。
表4  重大・多発・注目事故例
製品名 機構の調査概要 調査結果に基づく対応
塗料
【多発事故】
木造住宅の外壁を塗装した後、塗料を拭き取った布を入れたごみ袋を玄関に置いていたところ、ごみ袋から出火し、内壁が焦げたとの通知があった。
調査を行った結果、当該塗料は、不飽和脂肪酸を多く含む植物油を主成分としたもので酸化によって乾かすタイプの塗料である。タオルで拭き取ったために、塗料が空気に触れる表面積が大きくなり酸化が促進され、ごみ袋に入れて放置したことによって酸化する際に発生した熱が蓄熱するなどの条件が重なり、自然発火したものと推定した。
輸入・販売事業者は、自然発火に対する注意事項及び拭き取ったウエスの処分方法について、容器上蓋及び側面に表示しており、被害者の不注意とみられる事故であったことから、措置はとらなかった。
しかし、平成16年11月にも同様の自然発火したと思われる事故が発生したことから、機構では、平成17年2月18日付けの「特記ニュース」により、注意喚起を行った。
除雪機
【多発事故】
男性が自宅敷地内で、除雪作業中に小型除雪機の回転刃に挟まれ、外傷性ショックで死亡したとの通知があった。
調査を行った結果、被害者が誤って除雪機の回転刃に挟まれたものと推定した。
被害者の不注意とみられる事故であるため、措置はとらなかった。
(除雪機には、作業者の衣服に装着する非常停止スイッチを設け、操作位置から離れた場合はエンジンが停止する構造となっており、取扱説明書には「雪づまり等で操作パネルから離れる場合は、必ずクラッチを切りエンジンを停止させて、各部の回転が完全に停止してから行う。オーガ回転中はオーガ部へ絶対近づかないで下さい。」等の注意表示を記載している。)
しかし、平成16年の冬に入って除雪機の事故が多発し、機構が受けた事故情報の件数は、平成16年12月から平成17年1月の2ヶ月間ですでに10件にのぼったことから、機構では、平成17年2月18日付けの「特記ニュース」により、注意喚起を行った。
電動車いす(自操用、ハンドル型、四輪)
【重大事故】
電動車いすを運転中に座席とともに転倒し、左手首を骨折したとの通知があった。
調査を行った結果、シートを取り付けているシートサポートの支点軸部の溶接位置が、シートサポートからパイプを5mm出して、すみ肉溶接とすべきところ、シートサポートからパイプを出さずに、シートサポート面とパイプ端部が同一面で溶接されていたため、強度不足により外れたものと推定した。
事業者は平成16年6月9日付けの新聞及びホームページに社告を行い、無償で部品交換・安全点検を行っている。また、製造工程を見直し、溶接作業終了後に、溶接位置の確認作業を追加し、品質管理の強化を行っている。
電動車いす(自操用、ハンドル型、四輪)
【重大事故】
下り坂を乗車して走行中に、車両速度が速くなったのでアクセルレバーを離したが停止せず、車両とともに転倒したとの通知があった。
調査を行った結果、ピニオンボルトに緩みが発生し、その後の使用によりボルトが折損したため、ギヤが摩耗し駆動力・電磁ブレーキ力の伝達が不能になり転倒したものと推定した。
事業者は平成16年6月11日付けの新聞に社告を掲載し、無償で点検修理を行っている。なお、平成13年9月から生産委託先をし、製造工程の改善及び品質管理の強化を図っている。
製品名 機構の調査概要 調査結果に基づく対応
電子冷温蔵庫
【重大事故】
店舗内の子供広場に設置されている電子冷蔵庫が焼損し、横に置かれたお菓子の入ったダンボール箱、おもちゃの自動販売機等に延焼したもので、出火と同時に店内に設置されていたスプリンクラー設備が作動し消火したとの通知があった。
調査を行った結果、当該製品は、電気用品安全法の技術基準に適合しておらず、プリント基板の極性の異なる充電部相互間において空間距離が不足していたため、塵埃等が付着し、トラッキング現象が発生して出火したものと推定した。
事業者は平成16年4月20日付けの新聞に社告を行い、製品の回収を行っていた。 しかし、その後、事業者が民事再生手続きを経て解散したため自主回収が行われなくなったことから、機構では、平成17年9月15日付けの「特記ニュースにより」、注意喚起を行った。
電気ストーブ(ハロゲンヒーター)
【多発事故】
購入後、1週間後にヒーターのガラス管が破裂した等ほか、計16件の通知があった。
調査を行った結果、ヒーターのガラス管成型工程において、屈曲部にひずみが残留していたことやガラス管端部(シール部)のフィラメントとモリブデン箔との溶接部に不具合があり、接触不良による発熱でモリブデン箔が膨張し、シール部のガラスにストレスが加ったことが複合的に影響してガラス管に亀裂が入り、ガラス管の内部封入ガスの圧力によって破裂したものと推定した。
事業者は輸入・販売を中止するとともに、平成16年10月13日付けの新聞及びホームページに社告を行い、製品の回収、交換を行っている。
電気ストーブ(ハロゲンヒーター)
【多発事故】
ハロゲンヒーターを弱モードで使用中、上部カバー内の部品が発熱し、発煙したとの通知があった。 調査を行った結果、ヒーターランプの弱出力切換用ダイオードの個体不良により、本体上部カバー内のダイオードが発熱、発煙したものと推定した。 事業者は平成16年8月26日付け等の新聞及びホームページに社告を掲載するとともに、販売会社等に文書通知による消費者への周知を依頼し、無償点検及び代替品との交換を実施している。また、ダイオードの部品変更を行い信頼性を向上させるとともに、ダイオード近傍に温度ヒューズを取り付ける安全対策を行っている。
食器洗い機(ビルトイン型)
【多発事故】
食器洗い機の1時間のタイマーを設定し就寝したところ、ホームセキュリティが鳴動し、家人が食器洗い機から炎が上がっているのを発見し、消火したとの通知があった。 
調査を行った結果、ドアスイッチの接続端子部が緩み、接触不良を起こし、発熱、発火したものと推定した。
事業者は平成16年11月1日付けの新聞及びホームページに社告を掲載し、対象機種の無償点検・修理を行っている。
 自転車
【多発事故】
自転車で走行中、右クランクが折れて転倒し、軽傷を負ったとの通知があった。
調査を行った結果、クランクは強度のバラツキが認められたことから、強度が不足していたものと推定した。
事業者は製造を中止するとともに、平成16年8月3日付けの新聞に社告を行い、クランクの点検・無料交換修理を行っている。
自転車(折り畳み式)
【多発事故】
自転車で歩道を走行中、突然フレームが折れ、ひざを負傷したとの通知があった。
調査を行った結果、折り畳み部とメインパイプの溶接がすみ肉部の溶け込み不良により接合されていないため、フレームが破断したものと推定した。
事業者は平成16年5月28日付けの新聞及びホームページに社告を行い、製品交換を行っている。
また、生産工場を、生産管理が徹底した工場に切り換えるとともに、輸入後の受け入れ検査の強化を図っている。
製品名 機構の調査概要 調査結果に基づく対応
 自転車
【多発事故】
自転車で走行中、フレームヘッド部を折損して顔を負傷し、眼鏡を破損したとの通知があった。
 調査を行った結果、事故品のフレームは、変形しにくいため、過大な衝撃によって発生したクラックが徐々に進展していることに気付きにくく、また、取扱説明書には「転倒や衝突したときは続けて乗らずに、販売店で点検、整備してください。」と記載されていたが、見た目に異常がなくても点検を受ける主旨が判りづらく、使用を継続したことによりフレームが破断したものと推定した。
事業者は平成16年7月2日付けの新聞及びホームページに社告を掲載し、無料で点検・処置を実施した。

(3) 製品等の調査

機構では、事故原因が不明の重大事故や多発の可能性のある事故、事業者等の事故調査結果に疑義がある事故などについては、収集した事故情報の調査の一環として、事故品、同等品等を用いたテストを実施し、事故原因の究明を行っている。
また、事故原因を究明する手法が未整備のもの、事故原因の究明やテスト結果を評価するために必要な基礎データが不足しているものについては、原因究明手法開発調査を実施し、事故原因究明に必要な手法の整備や必要なデータの取得・蓄積をして事故の原因究明を迅速に行う環境を構築することに努めている。さらに、収集した事故情報については事故動向の解析を行うとともに、その結果に応じて事故の未然・再発防止に有効な製品安全に関する調査を行っている。原因究明手法開発調査の結果及び製品安全に関する調査の結果などは、機構の事故原因究明に活用するとともに、関係機関等へ提供している。
平成16年度に実施した調査のためのテスト事例の概要を表5に、原因究明手法開発調査の概要を表6に示す。
表5   平成16年度のテスト事例
件名 事故内容とテスト目的 テスト結果の概要
中びんが破裂したまほうびん (1)お湯をまほうびんに入れて少し使った後テーブルに置いたところ、急にすごい音とともに底の方から破裂し、中びんのガラスとお湯が飛び出した。(2)机の上でまほうびんにお湯を入れていたら、突然中びんが割れて、お湯がこぼれて横に置いていたパソコンモニターに掛かり故障した。(3)お湯をまほうびんに入れたところ、突然中びんが破裂した。との3件の事故通知があった。事故の状況から熱いお湯を入れた時に熱衝撃によって中びんが割れたものと考えられることから、中びんの熱衝撃性能(中びんのひずみ、中びんの熱膨張係数と材質)の確認を行うとともに、実際の使用状態を想定した急冷試験、急熱試験を行い、まほうびんが割れた原因を調べた。
(1) 中びんのひずみ、膨張係数及び材質
事故品(中びんの破片)及び同等品中びんの口部に著しい干渉色が認められ、また、JISに規定する平均熱膨張係数及び材質はいずれも基準を満たさないものであった。
(2) 使用テスト(熱衝撃性能)
暑い雰囲気に置いたまほうびんに5±±1℃の冷水を2リットル以上を一気に注ぐ急冷試験を1試料当たり10回繰り返し実施したが、同等品5試料ともに中びんには異状はみられなかった。
さらに、寒い雰囲気に置いたまほうびんに沸騰水を2リットル以上を一気に注ぐ急熱試験を1試料当たり10回繰り返し実施したが、同等品5試料ともに中びんには異状はみられなかった。
以上のことから、
事故品及び同等品の中びんは、平均熱膨張係数が類似品やJISに比べて大きく、明らかなひずみも確認されたことから、類似品やJISとの比較においては、耐熱衝撃性に劣る品質であったと考えられた。しかし、同等品を使用した急冷・急熱試験では事故通知内容を再現できなかったことから、事故は中びんにいずれかの段階で付いたと思われるキズ等がきっかけとなり、使用中の熱衝撃で破損したものと推定した。
なお、テストの結果、不適正な品質表示が行われていたことが判明したため、経済省に情報提供し、同省から行政措置が図られた。
焼損した食器乾燥機 食器乾燥機のタイマーを1時間にセットして外出したところ、台所付近より出火し、住宅48平方メートルのうち、約9平方メートルを焼損したとの通知があった。
事故品に固着した樹脂等を除去し、事故品内部の焼損状態、溶融痕の解析等を行うとともに、同等品により事故の再現テスト、安全装置の作動性の確認等を行い、食器乾燥機が焼損した原因を調べた。
調査を行ったところ、事故品は、温度ヒューズ及び温度過昇防止装置を短絡させる改造が意図的に行われていたことが判明。
事故品と同様な改造を施した同等品において、吸気口及び通風口を閉塞させて再現テストを行ったところ、本体内部の温風カバーから発火が認められた。
以上のことから、事故原因は、底部の吸気口及び通風口にほこりが堆積する等して著しく風量が低下したため、ヒーターが異常過熱したものであり、さらにヒーター部の異常温度上昇を防止するための安全装置が機能しないように改造されていたため、出火したものと推定した。
なお、安全装置の作動性の確認結果から、当該製品の改造が行われていなければ、風量低下等により過熱した場合でも、安全装置が正常に作動し、出火等に至る可能性は低いものと推定した。
床の一部が変色した充電スティック型クリーナー 充電式スティック型クリーナーを充電中、充電器底面が発熱し、床の一部が変色したとの通知があった。同等品は各温度ヒューズ(トランスの1次巻線表面及びトランス2次側基板上)が正常に機能していたため、各温度ヒューズを短絡した状態で電池の劣化を想定した再現テストを行い、充電式スティック型クリーナーの温度が上昇した原因を調べた。 電池の劣化を想定した再現テスト(事故品電池を用いた場合及び電子負荷を用いた場合)では、トランス底面の温度が最高188℃まで上昇しており、事故品と同様に充電器底面が溶融し、木台の変色が確認された。
一方、事故品の充電器底面の溶融状態、充電器内部のトランスの変色状態及び巻線の絶縁物の付着量から、事故品の充電器は電池の劣化過程で長時間高温状態となっていたものと推定され、さらにトランスのばらつき(トランス1次巻線の線径の誤差、巻線の絶縁被覆の厚さの均一性等)によって、1次巻線の断線位置及び断線に至るまでの時間が異なり、1次巻線の温度が異常に上昇することが考えられ、発煙・発火に至る可能性があることが判明した。
表6   平成16年度の原因究明手法開発調査
テーマ 調査の目的 調査の内容と結果
自転車の破損事故原因究明に係る有限要素法による構造解析手法の開発 平成16年度は、事故事例の多い折りたたみ自転車の3次元CADモデルを作成し、応力集中が推定される継ぎ手を中心に、有限要素法を用いてフレームの応用解析を行い、解析条件とフレーム各部の応用分布データを取得・整理し、事故発生時のフレーム強度に関する評価手法として確立する。平成15年度に実施した継ぎ手を溶接した自転車フレームについて有限要素法による構造解析と併せて、強度に関する事故原因の究明手法に有効な有限要素法による解析技術として確立することを目的に調査した。 折りたたみ自転車について、モデリング、静解析及び線形動解析による応力分布データ取得、解析結果の評価に加え、線形動解析の結果得られた応力値を用いた疲労解析を実施し、有限要素法による原因究明手法の開発を行った。本調査により、有限要素法解析手法((1)3Dモデル作成、(2)静解析、(3)動解析、(4)疲労解析)は、原因究明手法として活用することが可能((4)は一部条件付き。)であることが判明した。

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4.事故情報調査結果の分析と事故動向

(1) 事故情報調査結果の分析

事故情報の調査結果は、機構において、後述する「事故原因技術解析ワーキンググループ」で技術的観点からの解析、評価を行った上で、「事故動向等解析専門委員会」において検討し、最終調査結果としてとりまとめている。

1 事故動向等解析専門委員会

機構では、事故調査の結果を公正、中立な立場で検討を行うために学識経験者、消費者代表等で構成する「事故動向等解析専門委員会」を設置している。
当委員会では、事故原因や再発防止措置等の調査結果、別途必要に応じて当委員会のもとに設置する事故原因技術解析ワーキンググループによる技術的な解析、評価結果等の妥当性等について総合的評価を行うとともに、事故の動向解析を行っている。

2 事故原因技術解析ワーキンググループ

機構では、電気、機械、化学・生体障害の技術分野ごとに学識経験者や有識者等の第三者から構成する事故原因技術解析ワーキンググループを設置し、それぞれの技術分野に該当する製品事故について技術的な解析、評価を行っている。
また、誤使用によって発生した事故についても事故原因技術解析ワーキンググループが設置され、使用方法や製品のあり方についての解析、評価を行っている。
事故原因技術解析ワーキンググループとその作業内容を表7に示す。
表7  事故原因技術解析ワーキンググループ
グループ名 ワーキンググループの作業内容等
電気技術解析ワーキンググループ  カラーテレビ、エアコン、冷蔵庫、配線器具等の電気製品による発煙・発火事故等の解析、製造事業者の調査結果や再発防止措置の評価を行っている。
また、機構が行うテストへの助言、テスト結果の評価等を行っている。
機械技術解析ワーキンググループ  自転車等の破損による事故、石油ストーブ、ふろがま等による火災事故等の解析、製造事業者の調査結果や再発防止措置の評価を行っている。
また、機構が行うテストへの助言、テスト結果の評価等を行っている。
化学・生体障害技術解析ワーキンググループ  簡易ガスライター等の身の回り品による事故、ゴム手袋、ブラウス等に含まれる化学物質による皮膚障害(アレルギー)等の解析、製造事業者の調査結果や再発防止措置の評価を行っている。
また、機構が行うテストへの助言、テスト結果の評価等を行っている。
製品誤使用技術解析ワーキンググループ 調査の結果、「誤使用や不注意による事故」について、事故に至った使用方法の解析、製品の現状とあり方を検討している。
また、機構が行っている調査への助言等を行っている。

(2) 平成16年度の事故調査結果

1 事故情報収集件数及び事故原因

平成16年度中に調査が終了した事故原因別の事故件数を受付た年度ごとに表8、表9及び表10に示す。
平成16年度中に事故原因等の調査が終了し、事故動向等解析専門委員会の審議を終えたものは2,112件であった。その内訳は平成14年度収集分99件、平成15年度収集分823件、平成16年度収集分1,190件であった。
表8   事故原因別の事故件数  (平成14年度分)
事故原因区分 件数(件)
製品に起因する事故 32
A: 専ら設計上、製造上又は表示等に問題があったと考えられるもの 28
B: 製品自体に問題があり、使い方も事故発生に影響したと考えられるもの
C: 製造後、長期間経過したり、長期間の使用により性能が劣化したと考えられるもの
製品に起因しない事故 36
D: 業者による工事、修理又は輸送中の取り扱い等に問題があったと考えられるもの
E: 専ら誤使用や不注意な使い方によると考えられるもの 34
F: その他製品に起因しないと考えられるもの
事故原因が判明しないもの 31
G: 原因不明のもの 31
合計 99

(注意)上記の表は平成14年度に受け付けた事故情報1,728件のうち、16年度に調査が終了した99件に関する中間統計である。

表9   事故原因別の事故件数  (平成15年度分)
事故原因区分 件数(件)
製品に起因する事故 200
A: 専ら設計上、製造上又は表示等に問題があったと考えられるもの 178
B: 製品自体に問題があり、使い方も事故発生に影響したと考えられるもの 11
C: 製造後、長期間経過したり、長期間の使用により性能が劣化したと考えられるもの 11
製品に起因しない事故 427
D: 業者による工事、修理又は輸送中の取り扱い等に問題があったと考えられるもの 32
E: 専ら誤使用や不注意な使い方によると考えられるもの 365
F: その他製品に起因しないと考えられるもの 30
製品に起因しない事故 196
  G: 原因不明のもの 196
合計 823

(注意)上記の表は平成15年度に受け付けた事故情報1,610件のうち、16年度に調査が終了した823件に関する中間統計である。

表10   事故原因別の事故件数  (平成16年度分)
事故原因区分 件数(件)
製品に起因する事故 611
A: 専ら設計上、製造上又は表示等に問題があったと考えられるもの 566
B: 製品自体に問題があり、使い方も事故発生に影響したと考えられるもの  21
C: 製造後、長期間経過したり、長期間の使用により性能が劣化したと考えられるもの 24
製品に起因しない事故 328
D: 業者による工事、修理又は輸送中の取り扱い等に問題があったと考えられるもの 29
E: 専ら誤使用や不注意な使い方によると考えられるもの 279
F: その他製品に起因しないと考えられるもの 20
事故原因が判明しないもの 251
  G: 原因不明のもの 251
合計 1,190

(注意)上記の表は平成16年度に受け付けた事故情報2,378件(表2参照)のうち、16年度に調査が終了した1,190件に関する中間統計である。

平成16年度の調査が終了した事故1,190件のうち、事故原因が判明したものは939件であり、「製品に起因する事故」と判断されたものが611件、「製品に起因しない事故」と判断されるものが328件であった。
「製品に起因する事故」で、製品の設計、製造又は表示に問題があると判断される事故が566件発生しており、これらが「製品に起因する事故」の約93%を占め、残りは、製品自体に問題があり、使い方も事故発生に影響したと考えられるもの、製品の長期使用による劣化によって発生したと考えられるものであった。
「製品に起因しない事故」では、消費者の「誤使用や不注意による事故」が、279件発生しており、これらが「製品に起因しない事故」の約85%を占めた。残りの約15%は、設置事業者や修理事業者の工事、修理に問題があったことから発生したものや落雷、突風等の自然現象の影響により発生したもの等であった。
事故の再発防止措置は、火災等で製品の製造事業者が特定できずに対応が不可能であったものを除き、再発防止措置が必要と考えられるすべての事故について措置がとられている。

2 製品区分別の事故収集件数と事故原因

平成16年度に収集された事故情報について、製品区分ごとに事故原因を表11に示す。収集件数が最も多かった「(1)家庭用電気製品」の事故原因をみると、「製品に起因する事故」は443件であり、一方、「誤使用や不注意による事故」と考えられるものは35件で「製品に起因する事故」に比べると約8%程度である。
収集件数が次に多い「(2)燃焼器具」は、「製品に起因する事故」が17件で、これに比べ「誤使用や不注意による事故」はその約10倍に相当する178件であった。
その他の製品区分((3)~(10))を一括して見ると「誤使用や不注意による事故」は66件であり、一方、「製品に起因する事故」と考えられるものは151件で「製品に起因する事故」に比べると約44%程度である。
事故原因の調査結果から、消費生活用製品に係る事故を未然に防止するためには、家庭用電気製品については安全性を高めるための製品改良が有効である一方、燃焼器具やその他製品区分((3)~(10))については使用上の注意喚起や消費者教育を行い誤使用や不注意による事故を防止することが有効であるといえる。
表11 製品区分別事故原因(調査が終了し、事故原因が確定したもの。)
  事故原因区分
製品区分
製品に起因する事故  製品に起因しない事故 原因不明のもの 合計
小計 小計 G 
(1)家庭用電気製品 401 20 22 443 18 35 13 66 75 584
(2)燃焼器具    15 17 178 187 26 230
(3)乗物・乗物用品 79 79 30 35 124 238
(4)身のまわり品  43 43 14 14 16 73
(5)レジャー用品 11 12 10 23
(6)家具・住宅用品 11
(7)乳幼児用品   11
(8)台所・食卓用品
(9)保健衛生用品 
(10)繊維製品   
合計 566  21  24  611  29  279  20  328  251  1,190 

(注意)上記の表は平成16年度に受け付けた事故情報2,378件(表2参照)のうち、16年度に調査が終了した1,190件に関する中間統計である。

(事故原因区分)
  • A:専ら設計上、製造上又は表示等に問題があったと考えられるもの。
  • B:製品自体に問題があり、使い方も事故発生に影響したと考えられもの。
  • C:製造後長期間経過したり、長期間の使用により製品が劣化したもの。
  • D:業者による工事、修理又は輸送中の取り扱い等に問題があったと考えられるもの。
  • E:専ら誤使用や不注意な使い方によると考えられるもの。
  • F:その他製品に起因しないと考えられるもの。
  • G:原因不明のもの。

3 被害状況

事故原因別被害状況を表12に示す。
「製品に起因する事故」で、人的被害(死亡、重傷及び軽傷)が発生したものは56件で死亡事故はなかった。物的被害(拡大被害及び製品破損)が発生したのものは546件であった。
「製品に起因しない事故」で、人的被害(死亡、重傷及び軽傷)が発生したものは128件、物的被害(拡大被害及び製品破損)が発生したものは197件であった。
 「製品に起因する事故」で人的被害が発生したもののうち、重傷事故は、電動車いすの運転中に座席とともに転倒して左手首を骨折した事故、電動車いすで下り坂を走行中に駆動力・ブレーキ力の伝達が不能になり転倒し骨折した事故、自転車で走行中にフレームヘッド部分が破損して転倒して負傷した事故(2件)等である。
「誤使用や不注意による事故」で人的被害が発生した事故のうち、死亡事故(21件)、重傷事故(14件)の例をみると、店舗でパラソルの支柱をねじで台座に固定せずに使用していたために強風でパラソルが台座から抜け発生した死亡事故、閉め切ったビニールハウス内で照明用に発電機を使用したために発生した死亡事故、炭火でバーベキューをしていたところ、側に置いていたガスボンベが破裂し発生した重傷事故等である。
表12  事故原因別被害状況(調査が終了し、事故原因が確定したもの。)
  事故原因区分
 被害状況 
製品に起因する事故 製品に起因しない事故  原因不明のもの 合計
小計 小計 G 
死亡 21 26 15 41
重傷 14 15 21 41
軽傷 50 51 83 87 51 189
拡大被害 96 20 16 132 16 141 164 61 357
製品破損 406 414 17 33 100 547
被害無し 15
合計    566 21 24 611 29 279 20 328 251 1,190

(注意)上記の表は平成16年度に受け付けた事故情報2,378件(表2参照)のうち、16年度に調査が終了した1,190件に関する中間統計である。

(事故原因区分)
  • A:専ら設計上、製造上又は表示等に問題があったと考えられるもの。
  • B:製品自体に問題があり、使い方も事故発生に影響したと考えられもの。
  • C:製造後長期間経過したり、長期間の使用により製品が劣化したもの。
  • D:業者による工事、修理又は輸送中の取り扱い等に問題があったと考えられるもの。
  • E:専ら誤使用や不注意な使い方によると考えられるもの。
  • F:その他製品に起因しないと考えられるもの。
  • G:原因不明のもの。

4 再発防止措置

平成16年度中に調査が終了した事故原因別の事故件数のうち「製品に起因する事故」(ABC区分)の件数、再発防止措置件数を表13に示す。
 
表13   製品に起因する事故(ABC区分)の件数、再発防止措置件数等の状況
受付年度 16年度に調査が終了した件数 製品に起因する事故
(ABC区分)
再発防止措置件数 個別措置のみ又は措置無し 
平成14年度 99 32 26
平成15年度 823 200 188 110
平成16年度 1,190 611 594 463
合計 2,112 843 808 580

(注意)上記の表は平成16年度に受け付けた事故情報2,378件(表2参照)のうち、16年度に調査が終了した1,190件に関する中間統計である。

「製品に起因する事故」843件のうち、約96%の808件の事故に対して製造事業者等により再発防止措置が講じられていることが確認された。
残りの約4%は、火災等で製品の製造事業者等が特定できず対応が不可能であったもの、経年劣化で発生した事故で、市場や家庭における当該製品の残存も少なく同種の事故情報が収集されていないことから措置がとられていないもの等であり、事故の再発防止措置が必要と考えられるすべての事故について措置がとられている。
再発防止措置が講じられた事故のうち644件は、延べ75社の製造事業者等により新聞、ホームページ等に社告等が掲載され、製品の回収・交換等が実施されている。
その他の事故は、単品不良と考えられる事故、表示や使用方法の問題で発生した事故等であることから、事業者は販売店においてポスター掲示による告知や、事業者のホームページ等で消費者に注意喚起を行ったり、製造工程の改善、品質管理の徹底・強化、取扱説明書や表示の改善等の再発防止措置をとっている。

(3) 平成16年度の事故動向

1 事故情報収集件数の推移

最近の3年間に機構が収集した事故情報件数(重複情報や収集対象外の情報を除いたもの)の推移は、平成14年度が1,728件、平成15年度が1,610件、平成16年度が2,378件(平成17年5月30日現在。調査中を含む。)であった。

2 事故原因の推移(附属資料 表3参照)

機構が収集し、調査が完了した事故情報の中で「製品に起因する事故」の占める割合は、平成14年度は約35%、平成15年度は約29%、平成16年度は約51%であった。
同様に「製品に起因しない事故」が占める割合は、平成14年度は約40%、平成15年度は約48%、平成16年度は約28%となっており、更にこれらのうち「誤使用や不注意による事故」は、平成14年度は約35%、平成15年度は約41%、平成16年度は約23%であった。

3 最近3年間における製品別の事故動向

平成14年度から平成16年度までの最近の3年間について事故情報の収集件数が多かった上位10品目(以下「ワースト10」という。)を表14に、各年度の上位10品目の件数の推移を図に示す。
平成14年度から平成16年度のワースト10(表14)をみると、「直流電源装置」(シェーバーに使われる充電器等)による事故情報の収集件数が最多であるが、これは特定の事業者の製品に発煙・発火の事故が多発したもので、過去に6回の社告を行い、現在も回収中のものである。本製品は平成12年度の1件目の事故通知から3年を経過し、平成14年度(256件)、平成15年度(164件)、平成16年度(65件)と平成15年度から収集件数が減少傾向に転じた。
「電気ストーブ」の事故情報の収集件数は、3年度ともワースト5に入っており、平成14年度から15年度においては、5位(100~51件)であったが、平成16年度は特定の事業者の製品の部品に不良による畳等が焦げる事故通知が多く寄せられたことから同製品の事故収集件数が増大し1位(357件)になった。
平成16年度の事故事例の多くは、製品の部品の不良による事故であり、その他に「石油ストーブ」の事故事例と同様にかわかしていた洗濯物がストーブ上に落下して火災になったもの又は就寝中に寝返り等により布団等が接触して火災になったと考えられる「誤使用や不注意による事故」が多く含まれる。
「ガスこんろ」の事故情報の収集件数は、3年度ともワースト3に入っており、平成14年度は3位(131件)、平成15年度は2位(153件)、平成16年度は2位(249件)と増加傾向にある。
「ガスこんろ」の事故は、天ぷら油の入った鍋をかけたまま忘れて放置したり、火のついたこんろのグリルで魚を焼いていることを忘れて放置する等、不注意による火災事故が大半を占めている。
「石油ストーブ」の事故情報の収集件数は、3年度ともワースト3に入っており、平成14年度は2位(174件)、平成15年度~平成16年度は2位(126件、163件)であり、事故情報の収集件数が多い代表的な製品となっている。
「石油ストーブ」の事故は、火災のような重大事故となる場合が多い。機構の調査では、石油ストーブで乾かしていた洗濯物がストーブ上に落下して火災になったもの又はカートリッジタンクのふたの締め付けが不十分で、灯油が漏れて火災になったと考えられるものが多く、事故原因のほとんどは使用者の誤使用、不注意に区分されている。
「四輪自動車」の事故情報の収集件数は、平成14年度は4位(131件)、平成15年度は4位(89件)、平成16年度は5位(136件)と毎年多く収集される。その多くは車両火災であり、焼損が著しく原因不明となる場合が多いが、オイル漏れ、ガソリン漏れ、電気配線の短絡や修理作業後の可燃物の置き忘れ等、整備や修理不良によるものが散見される。
「簡易ガスライター」の事故情報の収集件数は、平成14年度から16年度においては、5位~9位(約40~50件)の範囲で変動しており、事故事例のほとんどは、点火時に大きな炎が出て額等に火傷を負ったもの、使用後にライターをポケットに入れたところ衣服が燃えだして火傷を負ったものである。
表14 年度別事故上位10品目
平成14年度
(事故情報件数1,728件)
平成15年度
(事故情報件数1,610件)
平成16年度
 (事故情報件数2,378件)
順位 品名 件数 割合% 品名 件数 割合% 品名 件数 割合%
1 直流電源装置 256 14.8 直流電源装置 163 10.1 電気ストーブ 357 15.0
2 石油ストーブ 174 10.1 ガスこんろ 153 9.5 ガスこんろ 249 10.5
3 ガスこんろ 131 7.6 石油ストーブ 126 7.8 石油ストーブ 163 6.9
4 四輪自動車 131 7.6 四輪自動車 89 5.5 自転車 153 6.4
5 電気ストーブ 100 5.8 電気ストーブ 51 3.2 四輪自動車 136 5.7
小計   792 45.9   582 36.1   1,058 44.5
6 掃除機 42 2.4 簡易ガスライター 48 3.0 エアコン 74 3.1
7 エアコン 41 2.3 自転車 36 2.2 直流電源装置 65 2.7
8 簡易ガスライター 41 2.3 玩具 34 2.1 カラーテレビ 43 1.8
9 屋内配線 33 1.9 屋内配線 29 1.8 簡易ガスライター 39 1.6
10 カラーテレビ 30 1.7 配線器具(延長コード) 29 1.8 配線器具(延長コード) 37 1.6
小計   187 10.8   176 10.9   258 10.8
合計   979 56.7   758 47.0   1,316 55.3
(※)平成14年度から、ガスこんろのガス種(LPガス、都市ガス等)の区別をしないこととした。 
図 年度別事故上位品目の件数の推移
「製品に起因する事故」が多かった上位5品目(以下「ワースト5」という。)を表15に、また「誤使用や不注意による事故」のワースト5を表16に示す。
「製品に起因する事故」ワースト5(表15)をみると、最近の3年間では電気ストーブが3年続けてワースト5に入っており、特に平成16年度は多発している。また、電気シェーバー充電用の「直流電源装置」の事故(設計不良による発煙・発火)が多発したため、他の製品より目立った結果となっており、同製品の事故の公表件数は延べ731件(平成17年5月30日現在)となった。その他の製品では、自転車、靴、簡易ガスライター、玩具を除けば、家電製品がワースト5の多くを占めている。
表15  年度別「製品に起因する事故」の上位5品目
平成14年度
(調査終了:1,686件)
平成15年度
(調査終了:1,545件)
平成16年度
(調査終了:1,190件)
順位 品名 件数 割合% 品名 件数 割合% 品名 件数 割合%
1 直流電源装置  255 15.1 直流電源装置 160 10.3 電気ストーブ 282 23.6
2 電気ストーブ 46 2.7 玩具 32 2.1 自転車 59 5.0
3 掃除機 41 2.4 自転車 18 1.2 直流電源装置 57 4.8
4 電気あんか 26 1.6 電気ストーブ 17 1.1 26 2.2
5 簡易ガスライター 14 0.8 簡易ガスライター 15 1.0 食器洗い機 21 1.8
5   電気こんろ 15 1.0
合計   382 22.6   257 16.7   445 37.4
「誤使用や不注意による事故」のワースト5(表16)をみると、最近の3年間では石油ストーブ、ガスこんろがワースト5の1位、2位を占めている。これら以外では、電気ストーブ、四輪自動車がワースト5に入っている。
機構は、これらの情報について機構のホームページや事故情報収集結果報告書等で消費者や製造事業者等に情報提供して注意を促しているところである。
製造事業者等としても、「誤使用や不注意による事故」を少なくするため、石油ストーブの取扱説明書等で消費者に警告や注意を促したり、ガスこんろに消し忘れや過熱による火災事故を防止する装置を取り付ける等の対応を行っているところであるが、「誤使用や不注意による事故」が依然と発生していることから、4.(2)2でも述べたように燃焼器具の事故を防止するには消費者に対してより一層の注意喚起や消費者教育が重要かつ有効といえる。
表16  年度別「誤使用や不注意による事故」の上位5品目
  平成14年度
(調査終了:1.686件)
平成15年度
(調査終了:1,545件)
平成16年度
(調査終了:1190件)
順位 品名 件数 割合% 品名 件数 割合% 品名 件数 割合%
1 石油ストーブ 142 8.4 ガスこんろ 130 8.4 ガスこんろ  120 10.1
2 ガスこんろ 113 6.7 石油ストーブ 104 6.7 石油ストーブ 19 1.6
3 電気ストーブ 43 2.6 電気ストーブ 25 1.6 四輪自動車 13 1.1
4 四輪自動車 34 2.0 配線器具(延長コード)  19 1.2 自転車 12 1.0
5 まきふろがま 18 1.1 四輪自動車 18 1.2 石油ふろがま 10 0.8
合計   350 20.8   296 19.1   174 14.6

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5.事故情報収集結果の公表

(1) 事故情報収集結果報告書

機構では、収集した事故情報について、必要な調査及び分析等を行い、事故動向等解析専門委員会の審議を経た後に、四半期ごとに「事故情報収集制度における事故情報の調査結果及び収集状況について」を、更に年度報告書として「事故情報収集制度報告書」を発行し、消費者、製造事業者、行政機関等に対して情報提供を行っている。
また、機構のホームページ(http://www.jiko.nite.go.jp)にも収集した事故情報、個別事故原因及び再発防止措置等の情報を掲載して広く情報提供を行っている。

(2) 事故情報特記ニュース

事故情報の調査の結果、事故の未然・再発防止のため消費者や関係機関等に対して情報提供を速やかに行う必要があると判断した案件については、随時「事故情報特記ニュース」(特記ニュース)を発行して情報提供を行っている。
機構では、特記ニュースを機構のホームページに掲載して消費者等に情報提供するとともに、消費生活センター、地方自治体、消防・警察機関、関係業界団体等の約1,200機関に配布している。
今年度は、「輸入ガス衣類乾燥機」、「電気こんろ」等について特記ニュースを作成して情報提供を行った。
なお、平成16年度に発行した特記ニュースの概要は次のとおりである。
事故情報「特記ニュース」トピックス
No.62 輸入ガス衣類乾燥機に係る出火事故について
経済産業省に平成16年10月12日付けで情報提供された、製造元が同じ輸入ガス衣類乾燥機に係る出火事故6件について、機構の事故情報として受付け後、直ちに、経済産業省、東京消防庁、(財)日本ガス機器検査協会と連携し、原因究明、対応策の検討に取り組んできたが、平成16年11月、事故の再現テストが(財)日本ガス機器検査協会において行われ、事故原因がほぼ判明したので、事故の未然・再発防止のため、事故原因等について情報提供するとともに、注意喚起を行った。
No.63 電気こんろに係る事故について
ワンルームマンションなどに据え付けられている電気こんろに関係する火災事故が多発している。これらの事故の多くは、普段使用していない電気こんろの上に可燃物等が置かれている状態で、知らぬ間に電気こんろのスイッチが入ってしまうことにより発生する。
この種の事故の対策として、平成2年に電気用品安全法技術基準が改正され、電気こんろのスイッチは不用意な操作ができない構造とするように改められた。また、技術基準改正以前に製造された製品については、同じく平成2年から、電気こんろの製造事業者においては自主的にホームページやパンフレットによって、住宅管理業者等に対して火災事故等の危険性について注意喚起を促し、スイッチ操作部を不用意な操作ができない構造のものと有償で交換する改修を行ってきた。
しかしながら、未改修の電気こんろに関係する事故通知が平成16年4月~12月においてもすでに15件、機構に報告されていたことから、社団法人日本電機工業会[家電部]及びキッチンバス工業会では、平成16年6月、新たに注意喚起のパンフレットを作成し、賃貸不動産管理業協会員3000社への配布を行った。また、9月には全国賃貸住宅新聞に注意喚起の告知を行い、無償による改修を開始した。
こうした状況を踏まえ、機構としても事故の未然・再発防止のため、事故の発生状況について情報提供するとともに、注意喚起を行った。
No.64 塗料を含浸したウエスからの自然発火事故について
平成16年11月にヒマワリ油を主成分とした木用塗料を使用し作業を行った後、拭き取ったウエスから自然発火したと思われる火災事故が2件発生し、その情報が機構に寄せられた。これらの天然植物油を主成分とした塗料は、昨今のシックハウス症候群等を配慮した消費者の自然志向等から販売数量は増加の傾向にあるとの情報もある。この成分は、植物油等に含まれているものと同様のものでそれ自体は危険なものでないが、ウエスや布に染み込んだ状態で空気に接触した際に発する酸化熱からゴミ袋等の中で自然発火したものと思われる。こうした状況を踏まえ、機構としても事故の未然・再発防止のため、事故の発生状況について情報提供するとともに、注意喚起を行った。
No.65 除雪機の事故について
平成16年の冬に入って除雪機の事故が多発し、機構が受け付けた事故情報の件数は、平成16年12月から平成17年1月の2ヶ月間ですでに10件にのぼった。
機構では除雪機の事故の再発を防止するため、平成13年12月10日付けの「特記ニュース」(No.46)で注意喚起を行ったが、平成16年12月から平成17年1月の2ヵ月間で10件の事故が報告されていることや、製造事業者からこのような事故を防止するための製品が供給されていることなどを踏まえ、事故の発生状況について情報提供するとともに、改めて注意喚起を行った。

(別添:平成16年度社告回収等一覧

(附属資料:表1~5 平成16年度事故情報収集結果の統計

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