(4)食器に関連する法規制等
1.食品衛生法
わが国における食器の安全性は、食品衛生法により規格基準が設けられ、その安全性が確保(保証)されています。食品衛生法第15条には、「営業上使用する器具及び容器包装は、清潔で衛生的でなければならない。」と定められています。また、第16条では、「有毒な、若しくは有害な物質が含まれ、若しくは付着して人の健康を損なうおそれがある器具若しくは容器包装又は食品若しくは添加物に接触してこれらに有害な影響を与えることにより人の健康を損なうおそれがある器具若しくは容器包装は、これを販売し、販売に供するために製造し、若しくは輸入し、又は営業上使用してはならない。」と記述されています。したがって、有害な物質が溶出して人の健康を損なうおそれのあるような食器具は、製造、販売、使用ができないことになっています。
食品衛生法では厚生労働大臣が食器具について規格基準を設けることができることとなっています。その規格基準が「食品、添加物等の規格基準」(昭和34年12月28日厚生省告示第370号)「第3:器具及び容器包装」(最終改正平成14年8月2日厚生労働省告示第267号)です。これによると、食品に直接接触するプラスチックは、種類にかかわらず適合しなければならない「一般規格」と、そのプラスチックの特性を考慮した類別の「個別規格」の規格基準に合格しなければなりません。上記の最終改正では、油脂又は脂肪性食品を含む食品に接触する器具又は容器包装にフタル酸ビス(2-エチルヘシル)を原材料として用いたポリ塩化ビニルを主成分とする合成樹脂を用いてはならないこととなっています。また、食品容器等からの化学物質の溶出規制は、昭和41年から始まりその後順次材質別の規制が告示されています。
例:食品衛生法に基づき定められたポリカーボネート製品の「食品、添加物等の規格基準」
材質試験
試験項目 | 規格 |
---|---|
カドミウム | 100ppm以下 |
鉛 | 100ppm以下 |
ビスフェノールA(注1) | 500ppm以下 |
ジフェニルカーボネート | 500ppm以下 |
アミン類(注2) | 1ppm以下 |
溶出試験
試験項目 | 規格 | 試験溶液(注3) | 浸出条件 |
---|---|---|---|
重金属(鉛として) | 1ppm以下 | 4%酢酸 | 60℃30分間(100℃以上で使用のものは95℃30分 |
過マンガン酸カリウム消費量 | 10ppm以下 | 水 | |
蒸発残留物 | 30ppm以下 | 水 | |
4%酢酸 | |||
4%酢酸 | 60℃30分間 | ||
n-へプタン | 25℃1時間 | ||
ビスフェノールA(注1) | 2.5ppm以下 | 水 | 60℃30分間(100℃以上で使用のものは95℃30分間) |
4%酢酸 | |||
20%エタノール | 60℃30分間 | ||
n-へプタン | 5℃1時間 |
- (注1)フェノール及びp-tert-ブチルフェノールを含む。
- (注2)トリエチルアニン及びトリブチルアミン。
- (注3)蒸発残留物及びビスフェノールAの溶出試験の試験溶液は
- (1)油脂及び脂肪性食品;n-ヘプタン、
- (2)酒類;20%エタノール。
- (1)、(2)以外でpH5を超えるものは水、pH5以下のものは4%酢酸。
2.家庭用品品質表示法
一般家庭で使用されている食器その他、台所用の器具など、ほとんどのものは家庭用品品質表示法の対象になっています。プラスチック製品(水筒、ゴミ容器、洗い桶、皿、コップ、弁当箱、まな板、製氷用器具など食事用・食卓用又は台所用器具)については、対象品目に適した表示事項が定められています。これら表示事項は製品の見やすい個所に刻印などで表示されています。表示事項としては、原料樹脂名、耐熱温度(耐冷温度)、容量、取扱上の注意、表示者、会社名、住所などです。
3.業界の自主基準
業界ではプラスチック製品の安全性を高めるために、プラスチックの種類別に衛生協議会をつくり、安全確保のための研究を行うとともに、自主基準・規格を定めています。
この自主基準・規格の主な点は、次のとおりです。
- (1)プラスチックの原材料および添加剤について、各国で安全に使用できるものとして認可されている物質を選んでポジティブリストを作り、
- (2)それらの物質の品質や使用量に制限を加えると同時に、
- (3)それ以外の物質は使ってはならない。
- (4)また、最終製品について国の基準と同等の材質、溶出試験法を定めていることです。
食品用容器包装、器具に使用されているプラスチックの添加剤は、包装や器具から食品中に溶け出し、人が摂取すると推定される量が、その添加剤の許容量を超えない、いわば「安全性上問題がない」という判断基準にもとづいて、ポジティブリスト(業界が使用を認定している化学物質リスト)に記載されています。自主基準・規格を定めている主な工業組合、協議会は、以下のとおりです。
1)日本プラスチック日用品工業組合
日用品・器具(飲食器及び割烹具、ただし塗物製品は除く)の自主衛生規格基準を設けて、規格基準を満たした製品には、下記のマークを添付しています。また、プラスチック製電子レンジ用容器に対する自主規格は、品質に関する企画と上記の衛生検査と合わせています。また、誤用を避け、安全性を高めるために使用上注意を要する事項の表示を義務づけています。
2)ポリオレフィン等衛生協議会
食品の包装・容器器具に使用するポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、メタクリル樹脂、ポリメチルペンテン、ポリブテン-1、ブタジエン樹脂、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリアクリロニトル、ふっ素樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリメタクリルスチレン、ポリアリルサルホン、ポリアリレート、ヒドロキシ安息香酸ポリエステル、ポリエーテルイミド、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエステルカーボネート、エチレン・テトラシクロドデセンコポリマー及びポリ乳酸の樹脂について、上記のような自主基準を定めています。協議会は、会員からの自主基準への適合についての確認申請に対して、適合確認を行い規格に合致している場合は、確認証明書を交付しています。
3)塩化ビニリデン衛生協議会
食品容器・包装用製品に使用するポリ塩化ビニリデンについて、上記のような自主基準を定めています。協議会は、会員からの自主基準への適合についての確認申請に対して、適合確認を行い規格に合致している場合は、確認証明書を交付しています。
4)塩ビ食品衛生協議会
食品容器・包装・器具並びにその他製品に使用するポリ塩化ビニルについて、上記のような自主基準を定めています。協議会は、会員からの自主基準に適合についての確認申請に対して、適合確認を行い規格に合致している場合は、確認証明書を交付しています。
5)ポリカーボネート樹脂技術研究会
食品容器・包装・器具並びにその他製品に使用するポリカーボネート樹脂材料(ペレット)について、自主的に基準を設けています。その中で、食品用途向けポリカーボネート樹脂材料(ペレット)中のビスフェノールAの含有量を”250ppm”以下とするとしています。また、使用原材料、添加物等についてはポリオレフィン等衛生協議会の各種規格・基準に基づいて運用するとしています。
6)生分解性プラスチック研究会
食品容器・包装・器具並びにその他製品に使用する生分解性プラスチックについて、上記のような自主基準と生分解性プラスチック(グリーンプラ)のシンボルマークを定めています。研究会は、会員からのシンボルマーク使用申請に対して、審査を行い識別表示基準に合致している場合は、使用許可証を交付しています。
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